第29話 イベント最終日
いよいよ、さよなら運転の最終日だ。
だが、やはり、ジオラマの方やお店のイベントに引っ張り回され、気が付いたら、DD51の最後の列車が洋館の町の駅にやって来て、気が付いたらDD51の最後の列車を洋館の町の駅で見送って、そのまま、イベント終了。
今日の、というより、最後のトリを務めたのは、EF64‐1001とDD51‐842のコンビ。
昨日の、カンナとアヤの車と同じナンバーだった。
「最後なのに、まるで、実感が湧かないです。イベントでドタバタしていたと言うのもありますが。」
ジオラマを片付けながら、しおりさんに言う。
今日は、変な連中も来なかったので、平和にイベントも終わったし、ジオラマも無事に完成して好評だったし、イベントも大盛況だったのだが、やはり、最後のDD51の姿をしっかりと見られなかったため、どこか不完全燃焼だ。
こうもあっけない物なのだろうか。
件の、カンナとアヤはイベントが終わって、まもなく閉店という時間になってやって来た。
アヤは死んだような顔をし、カンナも抜け殻になっていた。
「元気付けにラーメン、食べに行こ。」
と、しおりさんは言い、閉店後、アニオタの店主が切り盛りするラーメン屋に行く。自分は、しおりさんの車に乗せて貰い、アヤとカンナはそれぞれの車で行き、チャッチャ系ラーメンを食べる。
「まっまぁ、DD51はJR西日本でまだ走りますからきっと。それに、都会の駅の機関区のDD51も、廃車にならず、東武に譲渡されるかもしれませんから。」
と、自分は引きつった笑いを浮かべる。
「そう、ね。東武が買ってほしいなぁ。」
と、アヤ。
「EF64はどうなることか知らないけど、EF64は長岡の釜が来ることもあるからまだマシだ。だが、DD51は、本当に―。残念だ。」
カンナも声を落とす。
「ところで、二人は最後のDD51は見られた?」
アヤが聞くが、自分は暗い顔を浮かべ、しおりさんが「あまり見られなかった」と、何があったのかを話す。
「あぁ、そう、だったんだ。」
アヤは嫌味を言ってしまったと言う顔だ。
「-。ジオラマ、でなく、走らせられないでしょうか?」
突拍子もなく、いきなり自分は言った。
「えっ?」
「自分達で、DD51と客車3両程度の団体列車を走らせられないかと思ったのです。」
カンナが考える。しかし、アヤとしおりさんはパパっと何かを調べる。そして、互いの顔を見て頷いた。
「やろう!私達で、最後の紅いディーゼル機関車の銀河鉄道を、ジオラマではなく、現実世界の洋館の町で!」
しおりさんが言う。
「どうやって―。」
「決まってるでしょう!貸し切り列車よ!」
「そんな、無茶な!」
「やれるよ。バイト代総突っ込みして―。」
しおりさんに続いてカンナも、
「俺達も、金出すぞ。」
と言う。アヤは次いで、どこかに連絡をする。
「私達のレースのチームのスポンサーのロシアの資産家が資金を少し持ってくれるって!詳しい内容、企画書、その他諸々作って、送ってって!」
いきなり、一気に話が進んで訳が分からない。
まるで、町の中の星空だ。だが、その明るい星空の中の一等星のように、僅かに一つ見える事。
それは、本当に最後のDD51さよなら列車を、自分達で走らせようという事。それも、ジオラマの世界ではなく、現実の世界で。