第2話 銀河鉄道の列車
自分でも自分でも分かっている。そんな創作の世界を科学の世界で見ようなど夢物語も良いところだと。そして、夢物語ばかりだからか、学校では周りと話が合わない事も多く苦労もした。それでも、一応、友達と呼べる人も居たので孤独感に襲われる事もなかった。しかし、春頃から様子が変になり、誰かに声をかけてもまるで反応せず、総スカンを受けているかのようになった。
春休みの間、自分はバイトに明け暮れつつ、時折、創作の世界の世界観を見ようと、列車に乗りに出かけた。中でも、秩父鉄道のSLが車両基地内で脱線事故を起こして、当分の間、電気機関車で運転すると知った際には鉄砲玉のような勢いで、秩父鉄道に行き、電気機関車の引っ張る客車列車に乗ったのだが、春休みが開けて早々に職員室に呼び出されて事情聴取され、秩父鉄道に行ったその日、自分が秩父鉄道から遠く離れた山口県のSLやまぐち号の車内で、他の旅客に対して迷惑行為をしたと言う根も葉もない噂話が出回っていると知ったのだ。
迷惑行為と言ってもいろいろある。なので、自分がSLやまぐち号の車内で具体的に何をしたのかを尋ねてみたが、「迷惑行為は迷惑行為」と言う回答。そして、秩父鉄道の電気機関車の引っ張る客車列車は埼玉県だけを走っていて、SLやまぐち号が走る山口県までは行かないし、そもそも秩父鉄道では山口県まで行けない。
また、SLやまぐち号はJR西日本の観光列車の一つで、何かあれば、たちまち話題になるのだが、SLやまぐち号を運行するJR西日本に確認したところ、その日にSLやまぐち号で何かトラブルがあったと言う情報は無かった。
そうした裏付けをした上で、自分は噂話が流れた翌日、秩父鉄道の電気機関車の引っ張る客車列車に乗った際の切符と日付入りの乗車証明書、写真を持って学校に行き、先生たちに見せて無関与だと言ったのだが、「銀河鉄道の夜が好きならSL(蒸気機関車)に乗っているはずだ。嘘をついて、否定するのは良くないぞ。」と、結局は分かって貰えず、「銀河鉄道の夜が好きなら、SLに乗るはずだ」と、訳の分からない言い掛かりも手伝って、ずっと冷たい目線が飛んでくるのだ。
秩父鉄道の電気機関車の列車に求めたのは、『銀河鉄道の夜』の世界に近付くことであり、実際に創作の世界に近付けたと感じた鉄道旅だった。
それなのに、訳の分からないイチャモンのせいで全て台無しだ。
「銀河鉄道の夜が好きなら、SLに乗る」となぜ決めつけるのだろうか。
そもそも、『銀河鉄道の夜』の列車は、蒸気機関車(SL)では無い。
蒸気機関車が牽引しているのは『銀河鉄道999』であり、『銀河鉄道の夜』の列車では無い。