第19話 補助機関車の選定
しかし、ジオラマの設計と設定を変更することになるのは変わりない。
おかげで、ジオラマの制作に遅れが生じ始めていた。
当初、洋館の町の建物も出来る限り再現しようとしたのだが、一からストラクチャーやアクセサリーを作る時間的余裕が無くなり始め、市販品の物や自分の家のジオラマを使用することになりそうだ。更に補助機関車も加わるとなれば、予算案の修正も必要になってしまった。
急ピッチでまずは、補助機関車や市販品のストラクチャー等を買うための予算を組み、それを元に模型屋へ行く。
模型屋の爺さんにも、ジオラマを作っている話は通っているし、ジオラマに必要な物資は、この模型屋を通して入手している。
「この場所から見えない、急勾配区間ではない場所で、蒸気機関車が走っている設定か。そして―。やれやれ。リオナの学校の奴等はどいつもこいつもろくでもねぇな。テメェの価値観を勝手に押し付けて、それを否定するのは許さない。まるで、大日本帝国やヒトラー率いるナチスだ。」
などとぶつくさ言いながら、補助機関車を選定しつつ、自分としおりさんとで考えた修正案を見る。
「中途半端な勾配でコールサックだと、何も知らねえ奴は登れるとか言い出すな。コールサックの向こう側から北十字と南十字を兼任するメインの駅に入って来る場合は平坦で、ここは蒸気機関車が牽引出来るが、この先は連続勾配で蒸気機関車は走れず、ELとDLという設定にして、対策する必要がある。そうなると、DD51は重連にするのが安全だろう。DLは良いとして、ELが問題になって来るな。もし、EF64も重連にするならば、ロクゴ(EF65)が居ると、厄介な話になる。ロクゴは平坦線用のELだ。」
「-。」
爺さんの意見もまた、自分の世界を構築する上で大切だ。
「そうすると、ELは、EF64やEF16と言った、勾配線用のELを置いた方が良いという話になって来ますね。後はセノハチのEF59。」
「時代設定から見て、最新鋭機にEF64の0番台と言う話になると思うが、目の前に良い例があるだろう?EF64の1000番台が清水トンネル区間に入って来るまで、その時代の旧型電気が走っていただろう。」
「ええ。」
「問題は無い。」
「-。」
「一番大切なのは、リオナが何を大切にしたいかだ。」
しおりさんに言われた事を、また言われてしまった。
「自分は、DD51が牽引する列車をメインにしたいです。」
「なら、それをメインにするのだよ。まぁ、そのために、補助機関車を置かねばならないという弊害が生まれてしまったが、いい補助機関車が居る。」
何を引っ張り出すのだろうか?
セノハチのEF67だろうか?或いは、先代のEF59だろうか?
時代設定からして、EF59の方が良いのだが―。
引っ張り出してきたのは青い直流電気機関車と、ロッド式の電気機関車だった。
セノハチで現在活躍しているEF210‐300ではない。
「EF63とED42だ。さっきも言ったが、中途半端な登り勾配でコールサックだと、何も知らねえ奴は登れるとか言い出す。セノハチもかなりの急勾配だが―。」
「これは、碓氷峠の?」
「最大勾配66.7‰の急勾配区間。これを挟んでしまえば、蒸気機関車なんか出る幕ではない。何せ、碓氷峠は国鉄初の電化区間だしな。」
「では、EF63をお願いします。それから、ストラクチャーに関しては資料を基に、後日またお願いします。」
予算ギリギリだ。
「分かった。」
「それから、目くらましに蒸気機関車を2両。D51と、イギリス製グリーンブリーズ号を駅に置いておきます。」
「分かった。グリーンブリーズ号に関しては、KATOのチビロコで誤魔化せるから、これを貸与しよう。」
「よろしくお願いします。」
と言って、爺さんの店を出た。




