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第18話 それは本当に君の世界?

「見たくない」


 と、しおりさんは一蹴した。


「そう、ですよね。自分のエゴで作った銀河鉄道なんて。」


 自分は肩を落とした。

 やはり、しおりさんも本心では銀河鉄道なら蒸気機関車だと思っていたのだろう。


「そういうことで、設計し直しを―」

「リオナ。」


 しおりさんが「待て」と言う。

 紅茶を口に運んだしおりさんは、吐息を「ふう」と吐く。


「それって、本当に、リオナの世界?」

「一応は―。」

「違う!」


 かなり強い口調で、また一蹴される。


「あのさ、考えてみ?リオナは、「紅いディーゼル機関車の列車が走る銀河鉄道」ってコンセプトで作るのでしょう?」

「ええ。そうしたいのですが―。」

「電気機関車も来るから電化路線は分かる。」

「というか、電気機関車も居る以上、そうしないとおかしいことになるので。」

「で、蒸気機関車を推す連中はこう言った。「蒸気機関車なのだから要らない」と。それで、架線柱の代わりに三角標や天気輪の柱?あのさ、それ本当に、リオナが創りたい銀河鉄道で、リオナの世界なの?」

「えっと、まぁ、一応は―。」

「一応!?違うでしょう!それは、リオナの世界ではなく、横槍入れるバカな第三者に占拠された、リオナの世界って言うのよ!」


 普段から、自分の姉のような存在であるしおりさんだが、その姉にかなり激しく叱責される。


「ねぇ、頭冷やして考えてみて?リオナの世界があって、リオナが創りたい物があって、それを作りたいのでしょう?そして、それを作って欲しいから店長は、機関車のさよなら運転イベントのジオラマを、リオナに作って欲しいって言ったのよ?それを何?第三者の横槍で、第三者に占拠された、リオナの世界を作って、それを見せるの?そもそも、紅いディーゼル機関車や電気機関車が引退するさよならイベントのジオラマなのに、なんで蒸気機関車が必要なの?」

「-。」

「私は見たくない。第三者に占拠された、リオナの世界なんて。」


 しかし、うるさい事を言ってくる奴等に対する対策をどうすればいいのだろうか?

 自分はまた考える。


「トンネル。」


 と、しおりさん。


「始発の北十字と南十字は、ジオラマの中心駅が兼任するのでしょう?それで、ジオラマのこっち側にトンネルと橋を作って、コールサックとするのでしょう?その、反対側にもトンネルを増築するってのどう?元からあるトンネルとは別に、地下から出て来るトンネルを作る。増築したトンネルと地下トンネルは繋がっているけど見ることが出来ない。なぜなら、空の穴の中だから。その空の穴の中のトンネル区間に、連中が言っている物があるって事にしてしまえばいいのでは?」

「ああ、なるほど。しかし、この駅から空の穴へ向かう分岐線が必要となりますね。それに、空の穴となると、空に向かって登って行くか、或いは穴の中へ下ることになります。そうなると、連続する急勾配―。」


 そこまで言った時、自分の脳裏には碓氷峠鉄道文化むらが過った。

 そして、碓氷峠鉄道文化むらはかつて、横川運転区。

 ここで、碓氷峠に挑む列車は全て、補助機関車EF63を連結していた。


「-。メインの駅に転車台を入れるのは有りかも。」


 と、頷く。


「なんで?」

「空の穴に向かって登って行くという事を表現しようと考えました。しかし、その空の穴となりますと、空へ登って行かなければならないでしょう。メインの駅の機関区は空の穴、要するにコールサックに向かって登る連続急勾配区間に挑む列車の補助機関車の機関区でもあると言う設定です。しかし、そうなると膨大なスペースが必要になりますが、転車台と扇形庫なら、スペースを節約できます。それから、この区間に乗り入れる列車もありますが、この区間のみを走る列車が、連中が言う列車であるという事にしようとも思いました。まぁ、蒸気機関車が登れるわけ無いですが―。」

「案外いいかもねそれ!」


 と、しおりさんは頷いた。


「そうした物、そうして、リオナが創った世界が見たい。変な奴から文句言われようと、私は文句言わないよ。」


 と、しおりさんは言ってくれた。



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