第11話 星空特急
メインで走る列車は決まった。
そして、ジオラマのイメージも大体浮かんだところで、いよいよ自分は、ジオラマの設計図と予算案をまとめた書類をまとめ始めた。
だが、今度はジオラマの世界観が曖昧になってしまった。
それでも、第1段階としてこのような形で作ろうと思うという事を報告するため、今日は放課後、駅前のパン屋に行く。
キッ!と、自転車を駅前のパン屋の駐輪場に止め、店内に入る。
自動ドアの入口から店内に入る。
バイトの年上の女子大生は、今日は学校が午前終わりで午後から閉店までずっとシフトに入っているそうだ。
主にレジ打ちとパンの陳列、カフェの食器の洗い物をしている女子大生。
平日の夕暮れ。
客は自分の他に、自分よりも前に来ていたおばちゃん達だけ。
閉店が近い時間。女子大生は店長のおばちゃんに「行ってきな」と言われ、自分の会計が終わると、自分と向かい合って座って来た。
名前は「しおり」という女子大生は微笑みながら「どんな感じ?」と自分が持ってきた第1段階の報告書を読む。DL大樹に乗ってからは、お互い名前で呼び合うようになった。それだけ関係が深まったという事なのだろうか。
「一応、列車と予算案は決まりましたが、肝心なジオラマの世界観がどのような世界観となるかをまとめるのに苦戦しております。「紅いディーゼル機関車の列車が走る銀河鉄道」と言うコンセプトでありますが、銀河鉄道の世界と言うのがどのような物か―。」
言いながら、先日、山から撮ったDD51の写真を見せる。
少し離れた場所から見ている列車が、星の中を走るようにも見え、列車は鉄橋を渡っていくと、鉄橋の先には僅かに赤い西の夜空に浮かぶ月が見え、線路は夜空へ向かって伸びている。その線路を走るDD51の姿はまさに、銀河鉄道のようだったのだが。
「銀河鉄道の夜の銀河鉄道にするか、銀河鉄道999のようにするかで迷っているのが現状です。そして、前者と後者では列車も異なるでしょう。後者では、C62蒸気機関車による特急「つばめ」「はと」や20系客車による寝台特急「あさかぜ」や「ゆうづる」等になり、DD51の出る幕がありません。」
「それは私や店長が決める事ではない。リオナがDD51の列車が走る銀河鉄道が良いというのなら、それを作ればいい。」
「そうしたいのですが―。」
今度は星座早見盤を引っ張り出す。
「宮沢賢治の銀河鉄道の夜で描かれているのは、白鳥座から南十字星の区間で、その先はコールサックに消えています。」
「要するに、その先が分からないから、むやみやたらに変な物作れない。」
しおりさんは呆れたように言う。
「十字の駅を起点駅と終着駅を兼ねた物にするのが妥当であると考えております。しかし、十字の駅は二つ。北十字と南十字です。南十字の先、コールサックはトンネルになっていると考えており、南十字の駅の先にトンネルを作り、トンネル出口に北十字という形を考えております。そして、北十字の先に鉄橋です。」
「出来ているじゃん。なら、そのような形で、リオナの銀河鉄道を表現すればいい。」
しおりさんは微笑んだ。
だが、自分の表現したい銀河鉄道というのはどういう物なのか、それがまだ曖昧なのだ。要するに、南十字から北十字はトンネルで飛び越えて行けるが、北十字から南十字へ行く区間をどうやって表現すればいいのかが分からないのだ。




