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第10話 見えない星

 年上の女子大生とDL大樹に乗った事はジオラマの世界を創作する上でかなり参考になりそうだ。

 だが、やはり自分の求める物とは何かが足りない。

 その足りない物が何かを探る。

 その足りない何かが分かれば、それがジオラマの世界を作る決め手になると思った。


 今日の学校も低レベルな授業に欠伸が出そうになる。

 たかが分光器如きで「ねぇ凄かったねぇあの実験!」とかいう頭のイかれたような男子を無視する。こんな連中、相手をするだけ時間の無駄だ。


 学校が終わって、バイトへ行き稼いで来たら、バイト終わりに、自転車で町はずれの小高い山の上から町を見に行く。

 夕方、バイトが終わって山の上に行けば、暮れてゆく町の灯りが少しずつ点いて行く様子が見えるだろう。

 標高200m強の小高い山を自転車で「ゼェゼェ」言いながら登り切った時、ちょうど西の空に太陽が沈み、北関東に聳える山々が黒々としたシルエットを浮かべ、西の空は茜色。東の空は紺色、そして徐々に黒々と暗くなっていく。


(一番星見つけた。)


 西の空に、一番星を見付けた。金星だ。そして、その近くには、細い三日月が浮かんでいた。


 季節は春から初夏へ移り変わっていく夜空。

 西の空には、沈みゆくふたご座の一等星ポルックスと二等星カストル。こいぬ座のプロキオンと言った冬の星。

 南天には、おおぐま座の柄杓星を起点に、からす座までの春の大曲線を構成する、うしかい座の一等星アークトゥルスや、おとめ座の一等星スピカと言った、春の星が見える。東の空に目をやれば、「銀河鉄道の夜」に登場した、はくちょう座の一等星デネブやわし座一等星アルタイル、そして、こと座の一等星ベガ等、夏の星が見えるのだが、やはり町の中であることに変わりはなく、見えるのはせいぜい2等星までが限度。


 このところ、この町から見える星の数が減っている気がする。


 自分の視力が落ちたのかとも思ったが、視力検査では落ちているという結果は出ない。では、どういう理由で見える星が少なくなっているのか?

 それは、この町に限った話ではないが、最近、北関東の町は再開発される町が増え、この町も線路の反対側にある別の山では宅地造成工事が始まった。そして、それが、町灯りを増やして夜空の星を隠してしまったのだ。

 時折、アニメ等で町の中の街灯だらけの公園やマンション、家のベランダから満天の星や酷いと天の川を見上げているシーンがあるが、有り得ない。


「ピッ!」と、街の灯りの中からガラスの笛のような汽笛の音が聞こえた。


 町灯りの中、線路の上を一筋の灯りが動いている。

 紅いディーゼル機関車DD51‐895が牽引する訓練列車のようだ。


 DD51の後には、12系客車が4両。

 訓練列車だが、12系客車の室内灯が灯っている。


 少し離れた場所から見ている列車は、星の中を走るようにも見え、そして、列車は鉄橋を渡っていく。そして、鉄橋の先には僅かに赤い西の夜空に浮かぶ月が見え、線路は夜空へ向かって伸びている。その線路を走るDD51の姿はまさに、銀河鉄道のようだった。

 自分はそれをスマホで撮影した。


(これだ。洋館の町を発車し、星の世界へ行く、紅いディーゼル機関車の列車。)


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