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第9話 DL大樹

 時間を見て、下今市駅の4番線ホームにDL大樹が入線するのを見計らう。


 でも、直ぐに4番線ホームには行かず、隣の2番線に行く。

 敢えて離れたホームから入線を見て、創作の世界のイメージを作るためだ。


 また、DL大樹の編成は2番線の向かいの1番線と下今市駅駅舎の合間の側線に待機しており、2番線ホームにいれば、留置線から4番線ホームに入換、入線してくる様子を見ることが出来るのだ。


 DL大樹は機関車こそ、DE10ディーゼル機関車で、自分にとって大本命のDD51ではないが、今日の機関車はJR北海道で活躍していたDD51を模した「北斗星」色を身に纏う1109号機で、客車もブルートレインと同じ色の14系と12系の混結編成で、青函トンネルを通る夜行急行「はまなす」を思わせる姿の列車だ。


 側線から転線して4番線ホームに入線する列車を2番線から撮影しながら、そうした光景を見て更に、ジオラマの世界観を森羅万象構築していく。

 4番線ホームに行き、列車に乗る。

 乗るのはボックスシートの2号車で、内装がかなり改造され、展望デッキとうるさいメロディーホーン付きの12系客車だが、実際に女子大生と一緒に乗ると、銀河鉄道999の鉄郎とメーテルになった気分になる。


「私は、食堂車って物に興味があるなぁ。」


 と、女子大生は言う。


「食堂車ですか。うーむ。」


 自分は窓を開けながら、難しい顔をする。

 現在、食堂車を連結している列車は北関東一帯には無い。

 南関東には、E261系「サフィール踊り子」があるが、これはカフェテリアであり更に予約推奨で気軽に利用できる物ではない。豪華クルーズトレインの「TRAIN SUITE四季島」も同様だ。

 その他、富士急行線の「富士山ビュー特急」。しなの鉄道の「ろくもん」等もあるが、これらも気軽に利用できる食堂車ではない。

 そんな話をする。


「もし乗れたら乗りたい。」


 と、女子大生は言う。


「自分も、乗りたいです。」

「まぁ、気分だけでも。」


 女子大生は言いながら、駅の売店で買ったお菓子とジュースをボックスシートのテーブルに広げると、駅員がホームでハンドベルを「カランカラン」と鳴らし、「ジリリリ」とベルが鳴って、ドアが閉まる。

「ピィーッ!」とDE10の汽笛が鳴り列車は発車する。直後にうるさいメロディーホーン。

(これさえ無けりゃ。)と思うが、逆に考えればこれを抜きにした物をジオラマの世界に走らせればよい。


 大谷川を渡って列車は鬼怒川沿いに走る。


 鬼怒川を天の川にすれば、その様は天の川に沿って走る銀河鉄道にも見える。


 SL観光アテンダントさんの観光案内やおもてなしを聞きながら、女子大生とおしゃべりをしながら、或いは、展望デッキに行ってみたり、手を振っている沿線の人達にお手振りをしたり、意外とドタバタ忙しい列車だ。しかし、星座早見盤を横目に銀河鉄道の夜を読んでみると、銀河鉄道の夜の列車もかなり忙しい。


 白鳥座を過ぎたと思えばすぐにわし座。そして、さそり座と、一見するとゆとりがあるように見えるが、星座と星座の合間がかなり狭く、一箇所一箇所ゆっくり回っているように見えて、実際にはかなりのハイペースで次から次へとめぐっているのだ。


 鬼怒川を渡る橋を通過する時、展望デッキに居た自分は前を見ると登り勾配に挑むDE10の姿が見えた。それが、どこか、かつて乗ったDD51が牽引する寝台特急「出雲」を思い出させた。


 機関車こそDD51ではないが、この列車はそんな列車を思い出させてくれる。


(お姉さんには、感謝しないと。今日のこの列車だけで、森羅万象、頭の中にジオラマの世界を構築できた。)


 と、隣でカメラを構えている年上の女子大生を横目で見ながら思い、ボックスシートに戻ってまたワイワイとおしゃべりをしていると、鬼怒川温泉駅に着いた。


「じゃぁ、温泉入り行こうか!」

「はい!実は、鬼怒川温泉に入るの初めてです!」


 などと言いながら改札を抜ける様は、白鳥の停車場で途中下車してプリオシン海岸に行くジョバンニとカムパネルラのようだ。

 最も、自分は理尾鳴リオナと言う名前なので、ジョバンニやカムパネルラとは似ても似つかない名前なのだが。

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