EP7 ファイルNo.4 ゴルメッシャ
才能が使えず大人数に囲まれ絶体絶命の状況に追いやられたゴルメッシャ。突撃部隊隊長としての意地が今、逆転の一手の手繰り寄せる!
【ウィンドバースド】
この才能はどこか1点を中心に竜巻を発生させることが出来る。攻防一体、攻撃範囲が広いことに加え武器に纏えるため扱いやすいとメリットが多い。実際ゴルメッシャは槍に竜巻を纏わせながら突撃して敵からの攻撃を防ぎながら蹂躙するという破天荒な戦い方で今日まで戦ってきた。しかし、弱点はもちろんある。使用者が発生させた竜巻はコントロールが難しいため発生後自らの意思で消すのはかなりの集中力がいるのに加え、使用者自身が竜巻に当たってもダメージを受ける。そのため1回炎が竜巻に引火すれば、火災旋風となり使用者の体を燃やし尽くしてしまう。そのため使用者は炎が相手の時は才能を使わずに戦わないといけない。
「くそっ!よりにもよってここか!」
ゴルメッシャもそのことはよく知っているし過去に痛い目を見た事もある。
(こいつだけなら才能を使わず勝てるが…)
ゴルメッシャは執拗に周囲を見た。
(取り巻きが多すぎる!才能を使わずに捌くのには限界があるぞ!)
ゴルメッシャは竜巻を消して槍を振り回した。
「やはり消すしかないか!相性が悪いもんな!」
フレイブは笑みを浮かべ火球を発射した。
「竜巻が消えたぞ!いけー!」
フレイブの配下らしい男が近くにいた構成員に号令をかけた。
「くっ!しゃらくせぇ!」
馬に乗っているゴルメッシャでも火球が飛んで来る中、敵の攻撃を回避しながら離脱は困難を極めた。
「さすがに無理だろ!この状態じゃ!」
フレイブが勝ち誇った顔をして火球を放つ。 それもそうだ。ゴルメッシャとフレイブは30m離れていてその間を数十人の構成員がゴルメッシャを襲い掛かっている。ゴルメッシャは逃げることもフレイブを直接倒すことも、更には頼みの綱である才能を使うことさえ出来ない。
「がっ!?」
フレイブの火球が1つゴルメッシャの胴体に当たった。その衝撃は馬から落ちそうになるほどのものだった。
(ここで落ちるのはもっとだめだ!)
ゴルメッシャはなんとか堪えたが依然ピンチは変わらなかった。
(どうするゴルメッシャ!ここで負けたら誰がお嬢様を支える!)
ゴルメッシャは自分を奮い立たせる。
王国歴561年
俺が15歳の時にエルナと出会った。
エルナは諸侯の跡取りとなるお方で7歳ながらもその佇まいは本物だった。騎士の家系だった俺はエルナの日々の護衛と遊び相手をすることになった。
「お嬢様。私はゴルメッシャと申します」
「ゴルメッシャね、よろしく」
エルナはニコッと無邪気な笑いを見せながら
「あと私のことは敬語を使わなくて良いわよ」
エルナがゴルメッシャを見ながら言った。
「いえ、それは出来ません」
これがエルナとの出会いだった。
それからエルナが外へ出る時は大体ついていった。山奥まで動物を見たり、王都にまで行って買い物を楽しんだり、エルナの才能が分かった時なんかは真っ先に俺に見せてくれた。
(このままお嬢様に仕えられたらな…)
幼い頃の俺はそう考えていた。
王国歴566年8月
俺達は隣の諸侯に侵略された。既にの他の町は全て焼き払われここが落ちるのは時間の問題だと思ったエルナの両親は逃げるすることを決めた。しかし町を脱出する際に敵の指揮官であるベルマレーラの軍勢に見つかりエルナの両親と離れてしまい俺とエルナの2人でイルワラミ山脈まで来た。
「…私はもうあなたの主君ではない。だけど私は全て取り戻すわ!だからゴルメッシャ、ついてきなさい!」
一見しっかりしていたその姿はどこか強がっているように見えた。
(俺が全て受け止めなければ…)
主君と従者ではどこか距離があってエルナは俺に全て思いを吐き出してくれないと思った。
(これからは従者としてではなく友としてお嬢様を支える)
これが俺に出来る唯一の事だった。
それから俺達は各地を放浪していたというナゴンとシェパレに出会い傭兵団【シルバーフラスコ】を結成した。そして今に至る。
「ははは!傭兵団もたいしたことないな!これなら【ユニンデン】なんか余裕ではないか?」
フレイブは興奮気味に配下の男に訊く。
「そうですね、所詮戦いは数と相性ですからね」
配下の男もへりくだるように答える。
(これはどうしようもねぇ!)
ゴルメッシャがフレイブを倒すのを諦め、退路を探していると
「ん?」
ゴルメッシャは自分目掛けて敵をかわしながら来る男を見た。手には刀の刀身だけをのような武器を握り、敵には目もくれずゴルメッシャの方だけへ向かっていた。
「ゴルメッシャ!」
「ナゴンか!」
声の主はナゴンだった。
「どうやって来た!?」
ゴルメッシャが驚きながらナゴンに訊いた。
「僕は情報屋ですから“あし”は速いんですよ!」
ナゴンはドヤ顔で言った。
「そんなことより…出来た!これを!」
ナゴンがどこからともなく槍を生成すると
「これは!?」
ゴルメッシャが受け取る。
「“神力”で作った槍です!これを投げてあいつをやって下さい!投げるなら才能を使っても大丈夫でしょ!」
「初めて見たがさすがだな…後は任せろ!」
ゴルメッシャは槍に竜巻を纏わせて構える。
その目はフレイブただ1人を見ていた。
「いくぞ…」
1拍置いてゴルメッシャは槍を投げる。
「旋風突貫槍!」
投げた槍は竜巻を纏い、ぐんぐん伸びてフレイブ目掛けて飛んでいった。
「嘘だろ!はや………」
フレイブが言い終わる前にゴルメッシャの槍がフレイブの心臓に突き刺さった。
「ゴルメッシャ!やっぱりあなたは最高だ!」
ナゴンがまるで子供のように叫ぶと。
「当たり前だろ!俺はシルバーフラスコの突撃部隊隊長だからな!」
この時のゴルメッシャの顔はどこか歴戦の騎士を彷彿とさせた。
これが後に王国を震撼させ、【風の又三郎】という異名がつくゴルメッシャの代表的な武勇伝となる。
旋風突貫槍はいつかやってみたかったからやれて良かった。ゴルメッシャのファイルNoが4の理由はいつか本編で話します。