EP2 ファイルNo.2エルナ
教会で暮らす孤児であるセアに来訪者が訪れる。来訪者によってセアの運命は動き始める。
王国歴 570年 12月
「セア!おまえに客だ!」
神父はそう言って昼飯を食べているセアを呼んだ。
「ん?俺に客?人違いなんじゃないか?」
セアは心当たりがなさそうに呟きながら神父のところへ向かう。セアは4年前に故郷の街から追われてからは親とも音信不通なことから自分を訪ねる人なんて1人もいないと思っていた。
「あ~まさかな?」
セアは歩きながら1つだけで心当たりを思い出した。それは昨日、ここら一帯を支配している【レイスフォルド】の幹部らしき男が恐喝していたところをセアが吹っ飛ばしたことだ。あのあと男はアジトに運ばれてから出て来ないそうだ。
(まさか仕返しにきたか)
セアがそんなことを考えていると
「あら、意外と普通の人なのね」
教会の入り口に立っていたのは黄緑色の長い髪をたなびかせた同い年ぐらいの美少女だった。
服装はさながら研究者のように白衣を着ているが、その姿はお嬢様を想起させる。
「はじめましてかな?私の名前はエルナ」
「あっ?えっ?」
(だれだ?こんなやつあったことあるか?)
セアも少年さすがに予想外だったからか、動揺を隠せない。
「私は傭兵団【シルバーフラスコ】の団長なの」
そんなセアをほっといて話続けるエルナは何かセアを値踏みするような目をしている。
「知ってる?」
「いえ知らないです」
エルナは自信満々に聞くと食い気味にセアは否定した。
「えっ!?嘘!?知らない?私達まだまだなのかな~?」
予想外の答えだったのかエルナは動揺しているように見える。そうこうしてると
「セア…おまえさんはいったいどこでこんなかわいい娘を見つけたんだ?ナンパか?」
後ろ見ていた神父がとてもニヤニヤしながらセアに聞いた?
「いやっ、マジで知らないんだよなー」
セアが少し慌てながら否定すると
「じゃあ嬢ちゃんは何が目的かな?」
神父は普通に気になるのかエルナに聞いた。
「あぁ…そうだった!大事なことを忘れるところだった!」
エルナは興奮気味にセアに言った。
「私はあなたを【シルバーフラスコ】にスカウトするために来たのよ!」
「なんで?」
エルナに若干被せながらセアは真顔で聞いた。
「俺みたいな孤児よりもちゃんと学校に通ってるやつや諸侯の連中の訓練を受けてるやつ方がいいだろ」
セアは言っていることはいたって正論である。各自治領にはしっかりと学校があるのに加え、学校に通ってなくても【才能】が良ければ諸侯にスカウトされる。
(そっちの方がいいと思うんだがな~)
「いえ、あなたは十分強いわよ」
「なぜそう思うんだ?」
セア理解出来ないような反応をする。
エルナはまたも自信満々に言う
「だって昨日あなたがあの男をを倒すのを遠くから見てたから」
「あ…」
(バレてんのかよ!)
セアは頭を抱えた。昨日広場でやったことは目立つのはしょうがないと思っていた。
(よりにもよって武装勢力かよ!)
セアはこのことが【レイスフォルド】をはじめとする武装勢力に知られるといずれ教会にまで飛び火するかもと危惧していた。
「大丈夫よ私は言ったりしないわ」
(よかった…)
エルナを言葉に安心したのも束の間
「というわけで神父さん、この人借りてくね」
『え?』
セアと神父の口から同時に素っ頓狂な声をあげた。
「そういえばあなたの名前を聞いてなかったわね」
街中を歩いている途中、エルナはそんなことを聞いてきた。
「セアだよ」
セアは淡々と答える。
(うーん…どうなんだろ?)
エルナは何やらトロッコ問題のごとく悩んでいる。
「どうした?」
(何をそんなに悩んでいるんだ?)
セアがエルナの顔を覗き込むと。
「君が年上だったらどうしようか悩んでるんだ」
エルナは真顔で答えた。
「しょうもねぇ!」
あれだけ悩んでたのがそんなしょうもないものなのかとセアは少し落胆した。
「結局何歳なのさ?」
エルナはそんなことお構いなしに聞いてくる。
「…17」
セアが少し不貞腐れて答えると
「お~!私が18だから…年下だ~!よかった~」
エルナは子供みたいにはしゃぐ。
(というか今自分の年齢忘れてなかったか?)
呆れるセアには気付かずエルナは続ける。
「いや~よかった~うちは年上ばっかりだからさ、いくら団長とはいえ疲れるんだよね~」
「きみには変に気を遣うことないからありがたいよ~」
「なあ」
セアは先ほどから疑問に思っていたことをエルナに聞いてみた。
「何であんたは俺が入る前提なんだ?別に俺が入ると決まったわけではないだろ?」
「あなたは見た感じ名を上げたいんでしょ?うちに入れば名を上げる機会は多いから」
エルナはさも当然と言わんばかりに言った。セアは目を見開いていた。
「あれ~図星かな?」
エルナはからかうように言った。
「まあ君はうちに来るよ、絶対に」
エルナの眼光が鋭く光ったような気がした。
そうこうしているとセアとエルナは人気の少ない路地まで来ていた。
「なぁ、ここまで来て何をするつもりなんだよ?」
(本当に大丈夫なのか?)
エルナに疑いの眼差しを向けていると背後から
「おいおい本当に来やがったぜ!」
「仇討ちすりゃあ俺らは一気に昇進だ!」
(くそっ!やっぱりか!)
セアは後ろを振り向くと10数人の男が自分を狙っていることに気付く。全員【レイスフォルド】の構成員だと気付く。
「さすがに多くねぇか?1人相手にこれは?」
セアは苦笑いしながら呟いた。いくら幹部を倒したセアでも人数が多いのに加え、広場の時とは違い武器がないから分が悪い。すると
「よし、ちゃんと連れてきたしこれでいいね?」
今までだんまりしていたエルナが口を開いた。
「ああ!助かったぞ!」
集団のリーダー格の男がゲスな笑みを浮かべながら答える。
「まぁ私も【レイスフォルド】に借りを作れるのはありがたいと思っていたからね」
エルナは淡々と言う。その目は男と違い冷たい。
「ところで…」
エルナは立て続けに
「これで契約は終わりよね?」
男に確認を取るように聞いた。
「ああ、おまえはもういいぞ」
男は用済みのものを捨てる時のように答えた。
「そう…」
エルナは息を吐くとセアの方に向かい
「今から見せてあげるわ、これからのあなたの王の姿を」
「え?」
セアは瞠目した。エルナは最初から自分にこれを見せるために連れてきたことを直感で理解した。
「おいおい!あんたじゃ天地がひっくり返りでもしないと俺たちには勝てねぇよ!」
男はそう叫ぶと部下たちと一斉に突撃してきた。
「危ないから私から離れてね~」
エルナは子供もあやすように言った。
次の瞬間エルナの足元の敷石が銀色に染まり、その範囲が広まっていった。拡張していく範囲内に男たちが入った瞬間、男の体は銀になってそのまま銅像ならぬ銀像になった。
「さっき天地がひっくり返りでもしないと勝てないと言ったけど」
「【才能】があれば天地はひっくり返ることもあるのよ」
エルナは男たちにそう言い放った。
「マジか…」
セアはただ唖然としながらも銀色に染まった街に佇むエルナを見て美しいと感じた。
「これで入ってくれる気になった?」
エルナはセアの方へ振り向いて聞いた。
セアは既にその美しい姿に魅せられていた。
(もう答えは決まっている)
「これからよろしくお願いします」
セアは目の前の少女にそう答えた。
「あと私のことはエルナ団長と呼びなさい、セア」
エルナは無邪気にセアに笑いかけた。
「わかりました、エルナ団長」
セアも優しい笑みを浮かべながらそう答えた。
エルナは後に【AGM】と呼ばれセアと同様時代の転換点の中を駆け巡る運命にある。
キャラクター紹介
セア
年齢 17歳 身長 171cm
好きなもの 逆境、何も付けないで食べるパン
才能 ??? 目標 有名になりたい