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EP1 ファイルNo.1セア

王国歴566年7月


「はぁはぁ」

一体どれだけ森の中を走っただろうか。

「早く逃げないと」

セアはもう鎧のように重い体に鞭を打ち走り続ける。

「敵方の者は1人残さず捕らえよ」

後ろからそんな声が聞こえる。

「くそっ」

もう少し走るスピードを上げようとしたとき自分の胴体が地面に接していることに気付く。体を起き上がらせようともしても体を起こせない。

「なんでこんなことに」

こんなに苦しかったらいっそのこと…

「おぉ、やっと見つけた~」

頭上から男の人の声が聞こえる。

「助けてあげようか?」

そう言うと俺の口の中に何かの液体を注いだ。疲れていたからか味は分からなかったし、飲んだらすぐに眠くなってしまいすぐに眠ってしまった。

「ーーーーーーーーー」

眠る直前何か男の人が言ったように聞こえたがよく聞こえなかった。


王国歴570年12月


「夢か…」

セアはそう言って体を起こす。17歳になった今でも未だに4年前のことが夢として出てくる。

「セア!今日はやることが多いから早く食べに来なさい!」

一階からそんな声が聞こえたため急いで支度をして一階に降りることにした。

神父(おじ)さんよぉ、最近人使いが荒くないか~?」

セアは先ほど自分を呼んだ神父にそうぼやくと用意されていた朝食に目を向けた。なんか見栄えが悪い気がした。

「あとよ~」

「うるさい!わしが拾ってなかったら今頃死んでたんだから黙って聞いておれ!」

実際事実だから言い返せない。4年前教会の前で寝ていたセアを保護して今まで育ててきたのはこの神父だからだ。この大陸は1つの国の元統治されているはずだが、100ぐらい前の内乱で王国は権威を失ってしまった。そのため今の王国では自治領が星の数ほどある。大陸の中央辺りに位置している王都の治安はそこまで悪くないものの、諸侯や傭兵団、犯罪組織といった武装勢力が自治領内で台頭し王都から少しでも離れると弱肉強食の無法地帯と化している。そのため戦災孤児なんて大陸を見渡せば数えきれないほどいる。そんな中神父はもうずいぶんな年なのに多くの子供を1人で育てているためここら一帯では彼を慕う人は多い。実際セアも行く当てがなかったからなんやかんや感謝している。

「わぁたよ、今日の当番はなんだっけか?」

この教会では当番が決まっている。当番は毎日変わるため覚えるのが大変だし苦手な当番だと普通に苦労する。朝食の出来が悪いのもそのためだろう。それだけ教会に子供がことだが面倒なルールなことだ。

「この張り紙を町中に貼ってきてくれ」

そう言ってセアに100近くの張り紙を渡した。

「ああ…ってこれは…」

セアはこの張り紙がここら一帯を支配している犯罪組織【レイスフォルド】の構成員の手配書であることに気付いた。

「これを貼るってことは【レイスフォルド】を裏切るってことだろ!?」

「最近ここら一帯の縄張り争いが激化していてな、わしらは【ユニンデン】に付こうってことだ」

神父は苦笑いをしながらそう言った。【ユニンデン】はこの自治領では唯一の諸侯直属の傭兵団である。

「でも【ユニンデン】に勝算はあるんかよ?」

セアは疑いの目を向けた。別にこういった縄張り争いはよく起こるためセアも縄張り争いについては理解している。しかし【レイスフォルド】はここ最近負けなしの組織のため本当に勝てるのか不安だった。

「今ここで【レイスフォルド】を裏切ったらこの街も諸侯に保護してもらえるかもしれん、だったらここはリスクがあっても裏切ってリターンをとるべきだろ!」

神父は目を見開いてそう言った。神父はギャンブラーだったことをセアは思い出した。

「まぁあんたがそこまで言うならしょうがねぇな、俺が1番足が速いし行ってくるよ」

セアはそう言って教会を出て急ぎ目で貼る場所を探しに行った。

それから4時間ぐらいでセアは大方貼り終え広場で休憩していた。

「はぁ~疲れた~」

セアは大きなため息を吐いて先ほど買ったリンゴを頬張った。この街の規模は王国内でも中規模に値するので街中に張り紙を貼るのはかなりしんどい。

「それにしてもなんか向こうが騒がしいな」

セアは広場の自分とは反対側の方で何やら人だかりができているのを見かける。もう今日の仕事はないセアは野次馬にでもなってやろうとその人だかりの方へ行ってみると

「俺様は【レイスフォルド】の幹部だぞ!早く武器を寄越せ!」

そう言いながら【レイスフォルド】の幹部を名乗る男は路上で武器を販売していた商人をキョウカツしていた。

「【レイスフォルド】は路上での商売は禁止って言ったよな~!?」

「い、いえ、ほ、ほんとうに知りませんでした!」

商人は怯えながら反論すると

「知らなかったでは許されないんだよ!おまえはうちでのルールを破ったんだよ!」

男の口調が強くなる。

「【レイスフォルド】ではルールを破ったやつには何をしてしてもいいって決まりがあるんだ!さっさと寄越せ!」

そう言った瞬間男は右手に氷を纏った。

「俺様はなぁお前らと違って実用的な【才能】を持ってんだよ!」

この世界では全員が創造神と呼ばれる神から【才能】がもらうことができるが大体が戦闘向きではなかったり、【才能】もらう儀式を行えていない人であり氷や雷、炎といった目立つことに加え戦闘向きの能力は持っているだけでも絶大な権力となる。諸侯のほとんどがそういった【才能】を持っているのが何よりの証明となる。

「じゃあな来世に期待しな」

そう言いながら男は氷を纏った右手で商人の頭めがけて殴ろうとしたとき

「ちょっと待った~!!」

セアが大声で叫び男を止めた。

「あ?」

男は呆れた目でセアを見た。

「なんだ?ただのガキじゃねぇか!俺様に歯向かうつもりか!?」

男は怒気をはらんだ声で叫んだ。

「おまえみたいな【才能】のないガキでは俺様を止められねぇぞ!先におまえからやってやる」

男は右手に纏っている氷を大きくしてトゲを生やした。

「俺様のフルスロットルでおまえを殺す」

「…」

セアは黙ったままだった。しかし何故か笑みを浮かべていた。

「そこの方!どうかこれを使って下さい!」

そう言って商人がセアに投げたのはただの模造剣だった。

「模造剣?どこまで俺様をなめたら気が済むんだ!」

男が右手ストレートをセアに打とうとした時男はようやく気付く。

「な!?」

セアが金色のオーラを纏っていることに。

「なんだそrガハ!?」

男が言い終わる前のにセアは模造剣で男を切り、吹き飛ばしていた。

「まぁこんなもんかな?」

セアはさも余裕と言わんばかりの表情で勝利宣言をした。その瞬間広場から歓声が上がる。

「あんたすげぇよ!なにもんだ?」

「【レイスフォルド】の幹部を一撃でだなんて…」

「本当にありがとうございました」

セアはその場にいたみんなから感謝された。

その表情は少し照れていて顔が少し赤くなっていた。


『みーつけた!』

そんなセアをはるか遠くからずっと見つからなかったパズルのピースを見つけたテンションで見ていた2人がいた。


これが後に【西方の麒麟児】をはじめとした数々を異名もち、時代を加速させたセアの伝説の始まりだった。

初投稿です。面白いと思ったらセアの行く末を見守ってあげて下さい。

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