⑫ 屋台のミルクせんべい
お祭りの時の、屋台での買い食い。
子供の頃の楽しみでした。
射的や金魚すくい、ヨーヨー釣りなどのゲーム系屋台も、もちろん屋台での楽しみの半分ですが、『屋台でないとなかなか売ってない食べ物』を買い食いするのが、食いしん坊の女児・後のかわかみれいの楽しみでもありました。
特に小学校の、3~4年生ごろ。
近所の友達と近くの小さな神社のお祭りへ行くのが、妙に楽しかったものです。
何がそんなに楽しかったのか……今となってはよくわかりません。
ワクワクしていた遠い思い出だけが残っていますが、寂しいことに、その時のリアルな感覚は思い出せません。
話を戻しましょう。
屋台の買い食い、定番はやはり、焼きそばやたこ焼き。
そして、何故か必ず神社の入り口近くに売り場を陣取る綿菓子。
ベビーカステラや回転焼き、天津甘栗。
夏場はかき氷。
最近はあまり見かけない気がしますが、水あめとかりんご飴、飴細工にべっ甲飴なども、地味ながら屋台の列にありましたね。
ただし飴などの甘いもの系は軒並み高価な上、『とにかく甘い(飴ですから)』ので一度のお祭りで全品制覇は到底無理でした。
水あめと飴細工を買った次の年はりんご飴のみ、など工夫をしましたっけ。
そう言えば、個人的に綿菓子には苦手意識がありましたネ。
まず、とにかく高い!
(私の記憶が正しければ、一袋300円くらいしていました。ヨーヨー釣りが一回100円の時代だったのに)
おまけに、早く食べないとしなびてしまい、綿菓子らしいふわっとした食感が消えましたし。
ふわっと食感が消えた綿菓子は、砂糖の甘さがひたすら強い、ナンだかよくわからないべたついたもの……に変わってしまう印象でしたネ。
今風に言うなら『コスパが悪い』お菓子、という感じが強かったです(笑)。
そして、これは大阪もしくは近畿周辺限定かもしれませんが。
たこせん(真ん中に蛸の絵柄を描いた楕円の、それなりに大きなせんべい。橙色をしています)も準定番といえましょうか?
せんべい単体で売るというより、『当てもん』と呼ばれているくじの参加賞(要するにハズレ)として提供される、あるいはたこ焼き屋さんでたこ焼きを1~2個はさんで提供される、イメージですね。
せんべいにたこ焼きソースが塗られ、カツオ粉や青のりやマヨネーズが振られ、場合によっては天かす(関東圏ではあげ玉と呼ばれることが多いかもしれません)も振られて提供されます。
せんべい版のたこ焼き、という味で、私は結構好きでした。
飴類と違い、しょっぱめのたこせんなら一回に二枚くらいならサクサクいけましたし。
くじを楽しんだ後にたこせんを楽しめる、なんとなく得した気分になったものです。子供って(いや、私がか?)単純ですよね(笑)。
そういう『当てもん』の一種の景品として、ミルクせんべいがあったことがあります。
『ミルクせんべい』とは、言うならばゴーフルの皮?みたいなせんべいです。
ゴーフルのようにカチッとした感じではなくもう少し柔らかめで、何故か淡いパステルカラーに染められていました。
(今でもあるのかググってみましたら、どうやら今でも売られているようですね)
私の住んでいた町にある神社では、何故か一度だけ、当てもんの景品として『ミルクせんべい』が屋台で提供されたことがあります。
くじを引くと数が書かれていて、その数だけせんべいがもらえるシステムでした。
参加賞(つまりハズレ)はせんべいが三枚、それぞれの間に練乳を塗られ提供されます。
くじ一回が50円、というリーズナブルさ(に相応の、セコイ内容ではあるでしょうが)。
二回、チャレンジしました。
一回目はハズレ。
でも二回目に大当たりが出ました!
「おお、すごい」
店番をしていた気の弱そうなおにいさんがつぶやきます。
八、だったかと思います。
せんべい八枚重ねをゲットしました!
八枚のせんべいの、それぞれの間に練乳が塗られています。
かなりボリューミーでしたが、美味しかったです。
元々柔らかいせんべいですが、練乳を吸ったせんべい八枚の重なりはギリギリかじれる硬さであり、ほの甘くて食べ応えもありました。
来年も食べたいなとぼんやり思っていましたが、その屋台は二度とあらわれませんでした。
理由は不明ですが、きっとあまり売り上げが上がらなかったのでしょうね。
せんべいの数の多寡では、『当てもん』として華もないですしね。
逆に、あの内容でショバ代を払って商売をしていた店主さん、全然もうけがなかったのではないかと、おばちゃんになった今、思います。
『ミルクせんべい』そのものは○mazonで買えるでしょうし、練乳などはどこでも売っています。
再現は簡単でしょうけど、再現することはないでしょう。
あれは、お祭りの雰囲気の中で食べるからこそ『美味しい!』と思えた、だろうからです。
一期一会の、追憶の味です。