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第2話 善意の?


 あれはそう、この僕、ロード・パンケーキ、愛称パンが一仕事終えて家路についていた時のこと。結局、その日から家へは帰れなくなったわけだが、その理由を話そう。


 寒い冬の夜のことだ。


 しんしんと冷え、人影もないロンドンの通りを、ほくほくとした気持ちで歩いていた。わずか十ポンドで買った贋作が千ポンドで売れたのだから、うはうはだ。骨董商冥利に尽きるというやつだ。

 なに? 詐欺じゃないのかだと? 馬鹿をいえ、贋作だろうが何だろうが、それに、それだけの価値があると決めたのは買い手側だ。


 だから、僕は悪くない。


 そもそも、滞留している金を世に放出するのだから、人助けのようなもの。そうだ、むしろ良いことをしたのではないか。そんな気持ちになって、浮ついていたのだろう。


 路地裏から飛び出してきた少女に突き飛ばされ、その場にひっくり返った。それが、ロッテとの出会いだった。


 ごめん! と言いおいて走り去っていく。


 冷たい夜気が染み込むような銀髪と、街灯の光を弾いて輝く狼のような瞳。一瞬、見入ってしまったのは認めよう。貴族的な美しさだった。


 続けて、御嬢様、お待ちを! と叫びながら後を追う男、ゲイルにも突き飛ばされた。その後を、さらに、影のような男たちが追う。


 ここで放っておけば良かったものを、善意あふれる僕は、ついつい追いかけてしまった。だって、そうだろう? 悪者らしき男どもが美少女を追いかけているときたら、助けに行かない手はない。御嬢様と呼ばれていた以上、どこぞの金持ちか貴族の娘に違いない。


 金ヅルだ!


 儲け話、少なくとも有力者とのコネに繋がるのではなかろうか。そう直観したわけで。それは間違ってはいなかったものの、選択としては失敗だった。ロッテに、天才だけど頭が悪いと評されて言い返さなかったのは、この辺のところだ。


 もうひとつ、僕にしか分からない理由がなくはないのだが、とにかく、ロッテとゲイル、さらにその後を追う男たちを追って走り出した。この時から、ロッテの冒険に巻き込まれてしまったわけ。


 では、美少女を助けに向かった先で何が起こったか。それは、次の機会に語ろう。


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