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第12話 死相のような


 ネヴァンが語る大叔父様との話。


 本当は心根の優しい人なのだという。だから、わたしは泣いてしまったと語るのだが、それは泣き女と呼ばれる赤い目となにか関係があるのだろうか。ネヴァンが、ためらいがちに言う。


「信じられないかもしれませんが、わたしは本当に泣き女なのです。近々、亡くなる方がわかる。もしかしたら、赤い目が死を招いているのかもしれません。

 両親の時も、大叔父様の時も、ただ、わかったのです。風がどちらから吹いているかわかるのと同じように、自然と。……疑問を持たれないのですね。これほどすんなり聞いてもらえるとは意外です」


「まあな。それ以上の不思議のことに巻き込まれているのでね。それより、あの爺さんの死期がわかって、思わず泣いてしまったってことか」


「そうです。大叔父様に問われるまま、わたしが感じたことを伝えました。否定しすることもなく、それは、いつのことかわかるかと尋ねられたのです」


「いつなんだ?」


「はっきりとまでは……。しかし、そう遠い日のことではありません」


「それは避けられないのか。死相のようなものなのだろう? 病院で治療を受けたり、節制したり、外出を控えたり、そんなことでは防げないのか」


「わかりません。親しい方の死期がわかる。誰にでもある感覚が少し鋭いだけなのかもしれません」


「ふむ。自分の死期が近いと、爺さん自身もそう感じたのか信じたのか、死ぬ前に思い出の地を訪ねようと思ったわけか。目的は果たしたわけだし、病院へ戻るのは当然といえば当然のことだが、親族の連中は、爺さんが心配でという感じじゃなかったな。なにを企んでいるんだ?」


「企むというか、親族の方としては仕方のないことなのです。大叔父様の財産を気にしているのでしょう。もしかしたら、わたしに相続させるのではないか、そんな遺言を作っていたりしないかと。

 去りぎわ、病院へは来るな、呪わしい泣き女めと言われてしまいました。湖水地方を訪ねたいという大叔父様の願いは叶えられましたし、もうわたしは必要ないようにも思います」


「必要ないって、そんなことはないだろう。爺さんは、なんのかんの言いながらも、ネヴァンのことを気にかけていたじゃないか。身寄りもないのだろう? これからどうするつもりなんだ?」


「わかりません。故郷へ戻って、父や母の知り合いに頼るしか……」


「それでいいの?」


 と、ロッテが割って入ってきた。


「ねえ、本当にいいの? ネヴァン、あなたが本当にしたいことは何?」


「……わたしは大叔父様の最期をみとりたい。亡くなる前にお礼を言いたい。抱きしめたい!」


「そう、なら行きましょう」


「行きましょうって、おまえ……」


「もちろん、病院へ行くのよ」


 いつものロッテ節だ。ゲイルの奴は、お嬢様、さっそく参りましょうと焚きつけてやがる。


「ああ、もう! 変なやつらに追われてるってのに、バカ! 本当にバカだよ」


「とかなんとか言っちゃって。一緒に来てくれるんでしょ? あんたのそういうところ、わりと好きよ」


「そりゃどうも。こうなったら、とことんやってやろうじゃないか」


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