第1話 揺れる電車と眠る美女
この世界で奇跡なんて起こらない。
直人はいつでも少し冷めていて、奇跡なんて信じていない。
とても根暗な訳ではないが、良い意味でも悪い意味
でもずっと目立たず19歳まで生きてきた。
日差しがカーテンの隙から入る。
「うぅ……はぁ…」
直人はなんとか手を顔まで持ってきて目を擦る。
こうして直人の朝は始まる。
直人は適当にコンビニで買っておいたパンを食べ
今日も電車に揺られながら出勤する。
(なんかいいことないかな、ふっあるわけないか)
そう思いながら最寄駅までトボトボ歩く。
直人は入社してまだ3ヶ月の新入社員だ。
仕事は可もなく不可もないが、単純作業で面白さは
全く無い。
そんな直人の毎朝の楽しみが、電車で同じ車両に乗っている見た目は24歳くらいの美女を見ることだ。
(うわぁ今日も綺麗だ綺麗すぎるっ)
思わず直人の頬が緩むのも仕方ない。
その女性は、スーツをビシッと着ており
髪はサラサラのロングヘアー
ウエストは引き締まっているが出るとこはちゃんと出ている。可愛いと言うよりは美人という言葉がぴったりだ。
そして女性としての魅力をこれでもかというくらいに
良い匂いと共に身にまとっている。
しかし、その女性は直人の斜め右前でいつもスマホを見ているか、寝ているかのどっちかだ。
そしていつも直人の降りる駅の2つ前の駅で降りる。
(寝顔も最高すぎる、ずっと見てられる……)
そう思いながら、電車に揺られていると、「次は〜駅〜駅です。」というアナウンスが聞こえる。
(あぁ、今日の美人拝みタイムはこれで終わりか)
そう思って見ていると、なんとその美女は眠ったままで、完全に乗り過ごしたのだ。
直人の頭に二つの選択肢が瞬時に舞い込んだ。
このまま自分の降りる駅まで黙って美女を見ておくか
美女を起こしてあげるかの二つだ。
(いや、しかしあんな仕事出来そうな人が電車で寝過 ごす訳がない。今日は違う駅に降りる日なのだろう。)
声をかける勇気がない直人は、そう自分に言い聞かせた。
そんな事を考えている内に、「〜駅〜駅」のアナウンスで次の駅に着いた。
彼女は起きない。
直人は決めた。
(よし声をかけよう。それで迷惑がられてもいいどーせ働いて稼いでもやる事ないし楽しくない。 それなら一か八か声をかけよう。 もし嫌な顔をされれば、明日から違う車両に乗れればいいや)
直人は立ち上がり、美女の元へ歩いて行き
吊革をぐっと握った。
(もし嫌な反応をされても次の駅で降りるので、気まずい雰囲気になる前に逃げれる……!)
そうだ、この考えが直人の勇気の元だ。
直人が声をかける。
「あ、急にすみません、いつも僕より前に電車を降りてらっしゃるので、もしかしてと思って声をかけました。」
美女の肩を全神経を使って優しくタッチし、直人がそう言った。
その美女は起きた。
読んで頂きありがとうございます。
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