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三年前の誘拐事件

 それからしばらく経ったある日、青葉の携帯電話に電話が掛かって来た。掛けてきたのは涼平で、どうやら青葉に大事な話があるそうだ。

「どうしたんだ、涼平」

「厄神警部がアクアマリンを呼んでるんだってよ。厄神警部もりんかもアクアマリンの連絡先を知らないからね。僕が代わりに電話したって所だよ」

「ピンクジュエルの事じゃないのに俺を呼び出すなんて、どういう事?」

「とりあえず行ってみたらどうだ?」

青葉は、アクアマリンの衣装を着て、厄神警部が居る泉ヶ丘警察署まで行った。



 泉ヶ丘警察署に着くと、厄神警部がそれを待ち構えていたかのようにやって来た。

「厄神警部に呼び出されるなんて思いもしませんでした」

「アクアマリン君にどうしても相談したい事があってね…」

アクアマリンと厄神警部が話している横を、臼井刑事は慌ただしく動き回っている。その手には書類の山があった。

「あれ?臼井刑事…?」

「寿明と俺はずっと特殊事件の捜査をしてるんだ」

寿明とは、臼井刑事の下の名前だった。

「りんかが昔仕事場を見たいって言っててね、アクアマリン君も見たいのかなって思ったよ」

「はぁ…、そうですか…」

普段の厄神警部の事が気になっていたのは、アクアマリンもそうだった。

 アクアマリンはピンクジュエルが現れた時以外は、姿を現さないようにしている。厄神警部も、臼井刑事も、ピンクジュエルが現れた時のアクアマリンしか知らない。それと同時にアクアマリンも、普段の厄神警部と臼井刑事の事は知らない。

「それで、私に相談したい事ってなんですか?」

「ああ…、実はな…」

厄神警部は自分の机から小さなポスターを取り出した。


 それは、昔何処かに張り出されていたものなのか、紙の縁はボロボロになっていて、テープの切れ端が残っている。ポスターの内容は、少女の誘拐と、その犯人の情報だった。

「これは、三年前に隣のN県で起きた事件じゃないですか…」

「ああ…、犯人が逮捕されたが、肝心の少女は保護されていない、な…」

 青葉もその事件について覚えがあった。隣の県で起きた事件だったが大々的に報道され、犯人が逮捕された事も覚えている。


 だが、犯人が逮捕された時、誘拐されたはずの少女の姿ははなかった。犯人の話によると、今は別の男の所に居るらしい。だが、その男の情報は、犯人の供述でも明かされず、その後の捜査でも見つからなかった。

 また、少女の両親も行方不明で、捜索願が遅れた事で、事件は迷宮入りした。その後の情報は報道されていない。


 アクアマリンはそこまで思い出した後、もう一度ポスターを見つめた。ポスターの内容は、逮捕された犯人の情報が主で、誘拐された少女の情報は、名前も顔写真も無い状態だ。

「それで、どうしたのですか?」

「実は…、少女の情報があきらかになったのだ」

厄神警部はそう言って、一枚の写真を取り出した。そこに写っていたのは見覚えのある人物だった。今より幼く見えるが、間違いない。

「太市ちえり…、あの子が?!」

「情報が回ってくるのが遅すぎた。もっと早くに知っていれば…、こんな事にはならなかったのに…。」

厄神警部は、力量不足と言わんばかりに自分を責めた。

「厄神警部…」

 勇吾とちえりが家族じゃない事はアクアマリンも気づいていた。だが、まさか勇吾が誘拐犯だったとはアクアマリンも思いはしなかった。

確かに、ちえりは勇吾の前では顔が強張っていて、笑顔もあまり見せなかった。勇吾の方も、ちえりを育てようと言う気はなく、自分の荷物のように扱っていた。

「私、ちえりちゃんの友達を知っています。その人に話してきましょうか?」

「ああ…、宜しく頼む…」

アクアマリンは外に出て調査しに行こうとした時、厄神警部が一言質問した。

「アクアマリン君って何者なんだ?」 

「ピンクジュエルを一番良く知る存在、とでも言っておきましょう」

そして、アクアマリンは警察署から出て、調査に行った。




 アクアマリン、もとい青葉が話を聞こうとしたのは、親友の健と、その妹の久美だった。久美とちえりは同じクラスで仲が良い。青葉が知らない事もきっと知っているだろう。

 だが、アクアマリンの格好で行けば、健はきっとよそよそしくなって、伝えたい事が上手く伝えられないかもしれない。そこで、青葉はアクアマリンの格好から、青葉の姿に戻って、健の所に向かった。

 


 健は河川敷で久美と遊んでいた。遠くから見てもすぐ分かる。青葉は健の近くに駆け寄って来た。

「あっ!青葉!どうしたっスか?」

「健!ここに居たんだ」

「どうしたの?」

青葉は久美と目線を合わせてこう質問した。

「ちえりちゃんについて知っている事を教えて欲しいんだ」

すると、健は目を丸くした。

「青葉がちえりちゃんの事を知りたい?どうしてっスか?」

「俺、アクアマリンの手伝いをしてるんだ。それで、ちえりちゃんについて調査してるんだけど…」 

「へぇ…、アクアマリンちゃんのお手伝いっスか!俺も手伝うっス!」

健と久美は青葉の質問に答えようと、自分達が知っている限りの事を思い出そうとした。



 健と久美はちえりの事を思い出していた。だが、それは楽しいばかりのものではないらしく、時々辛く悲しい顔を見せていた。そして、お互いの顔を見合わせた後、青葉に順番に伝えた。

「ちえりちゃんはね、二年前に転校してきたの。でも、転校前の学校は教えてくれなかった。」

「そうだったんだ…、両親については?」

「ちえりちゃん…、そういえば両親の顔を見た事無いっス。」

「お父さんとお母さんの事は忘れたって言ってた。でも、一緒に居る男の人とはもう居たくないって!でも…、それなら自分の居場所は何処にあるのって…」

 二人の知っている事は断片的だったが、具体的な年を知る事が出来ただけでも大きかった。ちえりは、犯人が逮捕される直前に、別の誘拐犯である膳所勇吾の所に居たのだ。


 しかし、何故犯人は勇吾の所にちえりを連れて行ったのか、二人の間に関係はあるのか、さっぱり分からない。

 青葉は直接ちえりと勇吾に話をしにいきたいと思った。

「健、ちえりちゃんの家は何処にあるか知らない?」

健は首を振ったが、久美は向こうの方を指差した。

 

 そこは、老朽化したアパートだった。取り壊しの噂もあるが、まだ人が住んでいるのだろうか、洗濯物が干されている部屋もある。青葉も健も、昔からこの町に住んでいるが、行った事も無ければ近づいた事も無かった。

 花恋が暮らすアパートも似たような感じだったが、それ以上に、このアパートは人が住んでいる気配が無かった。

「ちえりちゃんの家庭訪問に行った先生が、そこだって言ってたよ」

「久美、ちえりちゃんの家に来た事はあるっスか?」 

久美は首を振った。

「ちょっと強引なやり方だけど…、直接本人に聞いてみない?」   

「そうっスね…」

青葉と健、それから久美はそのアパートに向かった。




 アパートの目の前に立つと、久美は三階の左端の部屋を指差した。

「あそこだよ!あそこにちえりちゃんが住んでるんだって!」

「そうなの?」

三人は会談で三階に上がり、その部屋の前に立った。

 その部屋の表札には『膳所』、勇吾の名字が書かれてあった。青葉はその部屋のインターホンを押す。ところが、何度も押しても勇吾もちえりも出てこなかった。

「留守なんっスかね…?」

「どうしよう…、でも、重要な手掛かりが見つかったからいっか」

「青葉、どうしてアクアマリンはちえりちゃんについて知りたがってるンスか?」

青葉は大急ぎで階段を駆け下りて行く。

「また今度アクアマリンに聞いてくる!」

 そして、人目がつきにくいアパートの裏で着替えた後、警察署に戻って行った。



 警察署に戻ったアクアマリンは、健と久美から聞いた事を厄神警部に報告した。早速重要な手掛かりを掴んだアクアマリン、厄神警部はただただ驚くばかりだった。

「そうか…調査に協力して頂き、感謝するぞ、アクアマリン君」

「はい、ありがとうございます…」

「調査の進捗状況によっては呼び出すかもしれないからな、また宜しく頼むぞ。今日はゆっくり休め」

「はい…、お疲れ様です」

アクアマリンがそう言って帰ろうとした時、一人の警官が慌てた様子で厄神警部に駆け寄って来た。

「大変です!泉ヶ丘ショッピングセンターに強盗が現れたようです!」

 泉ヶ丘ショッピングセンターには連日大勢の人で賑わっている。そこに、強盗が現れたという事から大混乱に陥っているだろう。

「それは大変ですね!」

「そうだ…、あそこにはりんかが!アクアマリン君、済まないが協力してくれないか?」

厄神警部は父親としてりんかの事を心配している。アクアマリンは、それを放っておけなかった。

「承知しました!」

 りんかの事を大切に思うのはアクアマリンも同じ気持ちだった。アクアマリンは、警官と厄神警部と共に、泉ヶ丘ショッピングセンターに向かう。

「(そうだ…、父さんもきっと、俺の事を心配してる…)」

 りんかと厄神警部のやり取りを見る度に、アクアマリンは、行方不明になった父親の事を思い出して、胸が痛くなった。 



 ひょっとして、ちえりの両親も、ちえりの帰りをずっと待っているのだろうか。アクアマリンは、警官として、また、同じように大切な存在を失ったものとして、ちえりを何としてでも、両親の所に帰そうと強く決意した。

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