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みんなで夏祭り

 一同は揃って神社の中の特設ステージに向かった。ミルキーバニラのショーは、そこで開催する。そのショーは、毎年開催されていて、夏祭りの中でも大人気の出し物だった。

 ステージの最前列には、大勢の子供達が集まっていた。どの子も、久美やちえりよりも幼く見える。

 青葉達は、ステージから一番離れた目立たない場所で待つことにした。ステージ開始まで後五分くらいある。

 すると、見知った声がすぐ近くから聞こえてきた。

「あれ?センパイ達、揃いも揃って何してるんですか?」

 その声の主は、りんかだった。りんかは鞠と鈴が描かれた水色の浴衣を着ている。

「ミルキーバニラのショーをみんなで見るんだって」

「へぇ…そうなんですか、私も小さい頃見てましたよ」

「みんな、ミルキーバニラちゃんが好きだったンスね」

 すると、ショーの開催を知らせるアナウンスが鳴って、舞台袖から、ミルキーバニラに扮した女性が現れた。テレビめ見ているミルキーバニラがそのまま目の前に現れたようで、子供達は興奮する。

「みんなー、こんにちは〜!」

最前列の子供達は、大きく手を振る。

「あのお姉さんは誰なの?」

「古市佳奈、ミルキーバニラこと白羽真帆の声優さんっスよ!地元がここで、毎年やって来るっス!」

「へぇ…、詳しいなぁ」

 佳奈は、じゃんけん大会やクイズ大会で、子供達を盛り上げる。一番後ろに居る青葉達や大人達は、それに参加はしなかったが、楽しそうな子供達や佳奈を嬉しそうに見ていた。


 そして、ショーの時間はあっという間に終わり、集まっていた子供達も、散らばって行った。だが、青葉達はそこに留まったまま、固まって話している。

「意外と…、面白かったかも」

千歳が、意外だという顔をした。

「佳奈さんって、私達の時もミルキーバニラやってたんだよね?今も声変わってないんだ!」

「そうっスよ!」

 健が興奮が冷めない様子でそう言った。すると、カーディガンを着た女性が、中学生達の前に近づいて来た。

「君達、ショーを見に来てくれたんだよね?」

「あなたは…、佳奈さん?!」

佳奈は、ショーに居る時とは違い、落ち着いた女性のように見えた。子供達も、今の状態ではミルキーバニラとは気づかないのか、近づいて来ない。

「君、だよね?いつもショー見に来てくれてありがとう。私の事応援してくれてるんだよね?」

「は、はい!」

普段は遠くで応援している佳奈が、すぐ近くに居る事に驚き、興奮を隠せなかった。

「これ、私からのプレゼント、これからも応援してくれる?」

佳奈は、そう言って健に紙袋を渡した。中には、佳奈のサインとミルキーバニラのキーホルダーが入っている。

「あ、ありがとうございます!家宝にしますね!」

健は、佳奈に向かって深々とお辞儀をして握手を交わすと、紙袋を抱えて目を輝かせた。

「良かったね、お兄ちゃん」

「応援はね、された方も励みになるし、した方も頑張ろうって気持ちになるの。君達の事も応援してるからね!」

 佳奈はそう言って去っていく。健達は、佳奈に向かって大きく手を振った。



 そして、一同は閑散とした特設ステージの前で、何をするか考えていた。

「花火大会まで間があるっスね…、これ家に置いてから、誠とりょうへーも呼びに行かないっスか?」

「おっ、それいいね!」

男子達は浴衣姿で神社の階段を降りていった。残された女子達は、久美とちえりの方を見る。

「健君達に付いて行かなくて良かったの?」

「すぐに帰ってくると思ったから…、それと」

久美はちえりの方を見た。

「ちえりちゃんが心配だから…」

「そっか…」

千歳は、ちえりの方を見た。

「ちえりちゃんは、今日は久美ちゃんと来たの?」

ちえりは頷くだけで、千歳とは一言も口を合わさなかった。


 しばらく経って、青葉達が、涼平を連れて帰ってきた。涼平は、縞柄の浴衣を着ている。だが、普段着けている赤ふちの眼鏡は外していた。

「みんな、まだ居たんだ」

「あれ?誠は?」

「なんか、二人で行きたいって言って俺達の誘いを断ったっス」

「二人…?」

兄弟も居なく、親の帰りも遅い誠に、一緒に祭りに行く人が居るのかと、結菜は首を傾げた。

「俺達の誘いをわざわざ断るって、一体誰と行ってるんだ?」

「もしかして…、小百合ちゃんじゃないっスか?」

健が、自分のクラスに居る九条小百合を思い出してそう言った。

「マジか?!あいつら仲いいのか?」

「少なくとも和人と出会う前からっスよ?」

「あいつ、ただの野球バカだと思ったのに…、あのクラスのマドンナと仲良いのかよ?!」

 九条小百合は、どの男子も認めるクラスのマドンナ的存在だ。通称、『高嶺の百合さん』と呼ばれ、一年生の時から男子から憧れの目で見られていた。

「俺は、誠と小百合ちゃんが幼馴染で仲良しだって前から知ってたっスよ?」

「そ、そうなんだ…、なんか意外」

 小百合の話をまるで遠くの出来事のように、涼平はアイスを齧りながら聞いている。 

「でも、まさかりょうへーが俺達と一緒にお祭りに行くなんて、驚いたっスよ!前までは、そんな馬鹿騒ぎに付いていけるかって、冷たい目で言ってたのに…」

「港平の事思い出してね、久し振りに行こうと思ったんだよ」

涼平は、健と青葉の方を見た。

「ごめんな、変に八つ当たりして、悪かったとは思ってるんだ」

突然涼平に謝られて健は驚き、あたふたとした。

「そ、そんな!りょうへーは謝らなくていいっスよ!俺の方こそ…、りょうへーの気持ちも知らずに変に同情して…、ごめんっス」

健がそう言って謝ると、涼平はクスリと笑った。

「変わらないね、健は」

「へっ…?」

涼平は、健に微笑みかけると、青葉の方を見た。


 そして、辺りはすっかり日が暮れてしまった。縁日は更に人が多くなり、だんだん暗くなる度に賑わっている。

「花火見る前に焼きそばとかとうもろこしとか買いたいっス!」

「花火は、みんなで見に行くの?」

すると、青葉の袖をりんかが引っ張ってきた。

「青葉センパイ!一緒に見に行きましょう?」

「えっ、りんか?!」

抵抗する間もなく、青葉はりんかに引かれて何処かに行ってしまった。

 それを見ていた千歳は、涼平に声を掛けられたのに気づいて振り向いた。

「僕は…、千歳と一緒に見たいな」

「へっ?!」

千歳は驚き、慌てて首を振る。

「な、何で私となのさ?!」

「僕は千歳と二人きりで話がしたいんだ」

涼平は、まるで自分の子供のように千歳の腕を掴み、向こう側に行ってしまった。

 それを他人事のように見ていた健だったが、花恋の方を見てこう言った。

「じゃあ、二人ずつで行くっスか?」

「そうだね」

健と花恋は、違和感なく一緒に行こうとする。健は、手を引いていた久美を見て、こう言った。

「あの、久美とちえりちゃんも一緒で良いっスか?」

「うん、良いよ」

それぞれ花火大会に向かった。

 そして、取り残された和人と結菜は、お互いを見て見ぬフリをして、こう言った。

「じ、じゃあ俺達も…」

「行こっか…」

二人は、気不味い雰囲気のまま、展望台に向かった。



 青葉とりんかは、神社の裏山にある展望台に向かって歩いて行った。りんかが青葉に対して好意を抱いている事は前々から知っていたが、りんかがこれ程大胆な行為に走るとは予想出来なかった。

 何故りんかは他の同級生でも、先輩でもなく、ずっと自分の事が好きなのか。青葉は不思議でならなかった。

「なぁ…、何でりんかは俺の事が好きなんだ?」

りんかは迷いなくこう答えた。

「何事にも一生懸命な所ですよ」

青葉は、意外だと思った。

「えっ…、俺が?」

「勉強も、部活も、運動会も、それから…」

青葉は、その後アクアマリンという言葉が出るかとビクビクしながら聞いていた。りんかは青葉に対してその言葉の続きを言おうとしたが、突然言葉を切ってこう答えた。

「私、陰ながら青葉先輩の事応援してますから!」

「りんか…」

青葉は、りんかから目を反らした。りんかの期待の眼差しに応えられるのか、分からなかったからだ。



 千歳と涼平は、神社の石段に座って、話していた。

「ありがとう、千歳のお陰で僕は目的を果たす事が出来たよ」

お礼を言われているのに、千歳は不服そうだった。

「あんたに感謝する筋は無いと思うけど…?私達、勝手に涼平に利用されてただけじゃん」

「そうかな…?」

涼平は、遠くに見える提灯の灯りを懐かしそうに眺めていた。

「それと…、港平と居た頃の自分を思い出す事が出来た。僕はずっと素直になれなかったからね。誰かに頼るもんかって強がっていた。」

 千歳は、顎に手を乗せながら聞いていた。青葉以外の男子とはあまり話した事のない千歳だ。青葉の友達とは時々話すが、自分の友達と言える程仲が良い訳ではない。涼平と付き合うのも、トパーズの時だけとばかりで思っていた。ところが、涼平は青葉を介してではなく、直接千歳に話し掛けてきた。

 この前のお姫様抱っこといい、涼平の千歳に対する扱いは、今までどの男性にもされた事のないものだった。涼平は素っ気無いと思っていた千歳は、涼平のギャップに驚き、頭が付いて行けなかった。

「ふーん…、まっ、捻くれてる奴は嫌いじゃないけどね」

「それは千歳が捻くれてるから?」

「ばっ、バカおっしゃい!」

千歳は、顔を赤らめて、大声で怒鳴った。それを可愛いと思ったのか、涼平はクスリと笑った。

「可愛いね、千歳」

「はぁっ?!」

「千歳だって、もっと素直になって良いのに…」

「むうっ…」

千歳は頬を膨らませて、涼平の事を睨みつけた。涼平は膨らんだ頬を突いて、微笑んだ。

「なっ、何触ってんのよこの女たらしが!」

千歳は、涼平の手を振り払って怒鳴った。

「千歳らしくて良いと思うよ?」

「私らしいって何よ!私の事全然知らないくせに!」

「僕が千歳の事を知らないとでも?」

「何よ!」

千歳は、涼平にそっぽを向いて、悪態をついた。そんな千歳の態度を涼平は可愛いと思っていた。



 健と花恋、それから久美とちえりは展望台の上で花火が上がるのを待っていた。

「すまないっスね、二人きりのつもりが妹達まで来て…」

謝る健に、花恋は首を振った。

「良いよ、その方が健君らしいし」

「そうっスか…?」

二人の間にすかさず久美が入って来る。

「お兄ちゃんと花恋お姉ちゃんは仲良しなの?」

「そ、そういう事にして良いっス」

笑顔で見つめ合う健と久美を見て、ちえりは悲しそうな顔をした。

「良いなぁ、私も優しいお兄さんが欲しかった」

「ちえりちゃん…?」

「ちえりちゃんって、兄弟は居るっスか?」

ちえりは首を振った。

「それじゃあ、お父さんとお母さんは?」

「分かんない」

ちえりは、久美達から離れ、地面を見つめていた。

「どういう事っスか…?」

「聞かないで!」

ちえりは、今まで出したことも無いような大きな声を出した。それに驚き、健はちえりに質問するのを止める。

「言いたくないっスね?分かったっス…」

そう言いながらも、健はちえりの事を心配していた。


 結菜と和人も、展望台で花火が家上がるのを待っていた。真っ暗で他のみんなが何処に居るかは分からない。唯一、遠くから見える提灯の灯りが、周辺を仄かに照らしていた。

「何で私と行こうとしたの?一人で行っても良かったのに」

「別に…話し相手が欲しかっただけだよ」

 和人は中々結菜と顔を合わせる事が出来ない。結菜とは素っぽを向いたまま、今の胸の内を結菜に明かした。

「俺、昔から女子っていう生き物が苦手なんだよな…。でも、結菜とは不思議と女子と喋っている気がしないんだよ」

「それは、私が男っぽいって言いたいの?」

「結菜は思った事をハッキリ言ってくれるから良いよ。花恋がクラスのお母さんなら、結菜はクラスの姉さんだ」

結菜は、和人の言葉に不満を抱いていた。

「それって褒めてるの?それとも貶してるの?」

和人はその問いには答えずに、自分の話を続ける。

「みんなと居るのも楽しいけどな、ずっと居ると息苦しい。ノリが悪いって言われる事もあるし、不器用な自分が嫌になる。でも、それは結菜もそうなんだろ?はみ出し物同士、仲良くしようぜ?」

「やだ」

結菜は、思惑が見えない和人の話にうんざりしていた。

「おまけに、私は和人程不器用じゃないし」

「手先は器用だけど、人間関係は結菜もそうだろ?」

「友達は居るもん、和人だってそうでしょ?」

「友達と言うけどそこまで言う程の友達じゃないだろ?」

 結菜は自身を振り返ってみた。確かに、千歳と花恋とは仲良しだが、ノリが一緒かと言うとそうではない。自分と波長が違う二人と楽しく話しながら、いつも心の何処かで支えたものを感じていた。

「結菜って愛想悪いよな?でも、それが結菜らしいと思うぜ?」

「私らしい…?らしさって、何だろ?」

「それは俺も聞きたいよ」

二人は、鏡のようにお互いを見合い、空を見上げた。

 すると、風の笛のような音がして、大輪の花火が打ち上がった。その光は平等にみんなを照らしている。

 和人はその光で、見知った人を一人見つけた。その人は、二人で花火を見上げている。

「あっ、誠だ。あいつも見てたんだな…」  

横に居るのは小百合だと、和人はすぐに分かった。

 和人はあえて今誠と近づいて話そうとはしなかった。二人の時間を邪魔したくないのと、今話し掛けてしまったら、結菜と一緒に花火が見れないからだった。



 そして、花火大会は終わり、人々は次々と帰って行った。櫓や屋台も片付けられていく。全ては無かった事のように、元の静かな神社に戻っていった。だが、一つだけ暗闇の中に光を見つけた。三島ベーカリーのキッチンカーが、美味しそうな匂いを漂わせていたのだ。

 三島ベーカリーは、泉ヶ丘にある有名なパン屋で、住宅街に小さな店がある。それだけでなく、キッチンカーで移動販売をやっていた。三島ベーカリーの定番商品は揚げたてカレーパンで、揚げ上がる時間帯はいつも人が大勢集まる程だ。

 

 青葉達はその前で合流した。先に着いていた健は、温かいカレーパンを二つ持ってニコニコしている。

「このカレーパン、美味しいンスよ!」

「そ、そうなんだ…」

「どうして二つ買ったのさ」

「お土産っスよ!」

すると、健は何かを思い出して大声を上げた。

「ちょっと…トイレ行くの忘れたっス!花恋ちゃん、悪いけど先帰ってくれないっスか?」

「そう…?分かったよ」

「じゃあ私達と一緒に帰ろっか」

花恋は、千歳と結菜と一緒に帰って行った。涼平とりんかもそれを見て帰って行く。

「俺も先帰るぜ、青葉は?」

「俺は…、久美とちえりを見とくよ」

「ありがとうっス!」

健は、神社の石段を大急ぎで駆け上がって行った。



 健は、神社の裏にある仮設トイレに行き、すぐに用を足して来た。そして、すぐに青葉達の所へ帰ろうとしたその時、神社の隅で蹲っている人を見つけた。

 その人物は、夜闇に紛れて見えない程、黒いローブに身を包んでいる。健はその人の事が気になり、話し掛けてみた。

「あの〜…どうしたンスか?」

 その人物は健に気づいて面を上げた。その顔は真っ白で、左側だけが影のようを黒く、目が赤くなっている。どうやらお面のようだが、そんなお面は縁日には売っていなかった。 

 それが暗闇の中に、顔だけが浮かび上がったように見えた。健は恐怖のあまり顔が引きつる。だが、不思議とそこから逃げようとする気にはならず、怯えながらもその人の顔を見続けた。

「あ、あなたは…」

「俺か?」

 声の感じからして、その人は青年のようだった。青年は健をじっと見ると、仮面とローブを目の前で外した。そうして現れた青年の素顔は、黒髪黒目で凛々しい表情をしていた。

「驚かせて、済まなかったな」

 青年のローブの中の服装は、黒いパーカーに長ズボン、手には指が出た手袋を着けていた。

 青年は健に近づき、申し訳なさそうな顔をする。それを見た健は、戸惑い、慌てた様子で青年に謝った。そのせいで、普段の口調が抜け、丁寧な言葉になる。

「怖がってごめんなさい…」

「いや、羽を休めてただけだから…。君はお祭りに来ていたのか?」

「お兄さん、お祭りは終わりましたよ?」

「そうだな…」

すると、青年の腹の虫が鳴った。

「お腹空いたんですか?」

「ああ…、仕事が忙しくて何も食べてないから…」

健は、手に入れる持っているカレーパンをチラッと見て、青年にあげた。

「これ、食べて下さい」

「良いのか?」

青年は健からカレーパンを受け取った。

「まだ温かいですよ、冷めないうちにどうぞ」

「そうか…、ありがとう」

青年はカレーパンを一口齧った。

「美味しい…」

「三島ベーカリーのカレーパン、俺も好きですよ」

青年は、健の顔をじっと見つめた。

「お前とは、遊園地でチラッと顔を見た気がするな?ひょっとして、青葉の友達なのか?」

「友達というか…、親友ですよ。青葉とは付き合いが長いんです。お兄さんこそ、青葉の知り合いなんですか?」

「まぁな…」

青年はカレーパンをもう一口齧りながら頷いた。

「俺は立花健です、お兄さんは何者なんですか?」

「俺は剣崎智、そうだ、健にだったら俺の事を明かしてもいいかも知れない」

智はカレーパンを食べ終わると、健の両肩に手を乗せた。

「今から言う話、信じられないと思うかもしれないが、信じてくれないか?」

「はい…」

 そして、智は自らの身の内や青葉の事について語りだした。その話は、一般的な常識か全く通用しない、否定したらそれまでの内容だった。だが、智はふざけた様子ではなく、真剣に話している。それに健も必死に理解しようとした。

 全て話し終わった智は、神社の裏から出て石段を降りて行った。

「ありがとう、俺の話を聞いてくれて」

「青葉にこの話、伝えた方が良いですか?」

「いや、俺からちゃんと伝えるよ」

智は一度立ち止まって健の方を見る。

「そういえば…、今一人なのか?」

すると、健は青葉達を待たせている事を思い出して大声を上げた。

「あぁ!青葉!それに久美とちえりちゃんを待たせてたっス!」

「そうか…、ごめんな、すっかり話し込んでしまって」

「いえ…、こちらこそ…」

「またな、健」

石段を降りた智は健とは反対方向に走り去ってしまった。

 そして、健は青葉達の所に戻ってきた。

「遅いぞ、健」

「待たせてごめんっス!」

「お兄ちゃん、帰ろう?」

「そうっスね」

 街灯がぽつりぽつりと灯る中、四人は並んで帰って行った。祭りが終わり、辺りは夕闇に包まれ他に行き交う人は居ない。

 健はカレーパンを齧りながら青葉にこう言った。

「青葉、人って見かけによらないっスね」

「えっ?」

「まっ、こっちの話っスから気にしなくていいっス」

「はっ…?」

青葉は、健が何を伝えようとしているのか知りたかったが、これまでの経験からして、今の健に聞いてもまともな返答は無いと考えて、諦めた。

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