表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/44

不気味な警告

 考え込みながら帰り道を歩いていると、なぜか日が陰った。


「……へっ?」


 まだ夕方にもなっていないのに、これはちょっとおかしい。

 おまけに、駅に近い場所でレストランや商店も多い歩道なのに、人影が根こそぎ消えていた。おまけに、いつもなら遠くから聞こえる電車の音もしない。


 なにかこう……時の狭間に迷い込んだような案配で、たちまち俺は緊張した。

 これが偶然であるはずはないからだ。


「し、しかし……町を暗くして根こそぎ人を消すなんて真似は、さすがに無理だろう」

「ここは仲間の結界の中なんだよ、水原誠司君」


 またもや後ろから声をかけ、俺はいよいよ緊張した。

 なにしろ、つい数秒前に周囲を確認した時は、間違いなく誰もいなかったのだ。




「だ、誰だ?」


 警戒心マックスで尋ねると、深みのある少年の声が答えた。

 多分、俺と同じくらいの年齢だと思うんだが、やたら印象的で……しかも大人びた声だった。


「僕はあの黄金色の目をした女性を追跡した者の、仲間でね。仲間内では僕のみが、君や君の友達の処遇について迷っているのさ。だから、ちょっと話してみようかなと――振り向かないように」


 いきなり釘を刺され、凝固した。

 実際、今振り向こうとしかけたところなのだ……どうしてバレたのか謎だが。

 それに、まだ俺の知らないヤバそうな連中が複数いるという事実に、ぞっとした。


「時に、君の気を軽くするために教えてあげるけど、夕霧碧という女性がレンタルしている倉庫の存在には、僕らはもうだいぶ前から気付いているよ。まあ、君が様子を見に来た理由がわからなかったから、ここ数日はちょっと注目度が増したけどね」

「あの子はっ。ていうか、夕霧と涼子は関係ないんだ」


 俺は思わず声を張り上げた。


「あんたらが何者か知らないけど、本当に夕霧達は一切関係ない。手出ししないでくれ」

「僕の仲間が、こっそり友達を尾行していたのは認めるが、なぜ僕らが彼女や鹿島さんに手を出すと思う?」


 ごく微量だったが、興味深そうな声音だった。

 迷った末、俺は自分の疑いをそのまま話した。


「――ただの推測だけど、あんたの仲間が複数いるなら、そのうちの誰かがバラバラ事件の犯人じゃないかと思ったのさ。どうせ、こっそり涼子との会話も聞いてたんだろ? 本当に犯人の関係者なら、殺人の意図がわからない以上、どんな理由で夕霧や涼子が巻き込まれるかわかったもんじゃない」

「ああ、なるほど……納得できる理由だね。そもそも君は、自分の心配じゃなくて、あの夕霧碧に重きを置いているように思える。次に鹿島氏かな? 自分は後回しなんだ」


 特に驚いた声じゃなかったが、少年は感心したように唸った。


「正解か不正解かは、ノーコメントだけど、見せられた新聞記事一つで、よくそこまで想像したね? 僕もちょっと前までただの人間だったことだし、さらに君には、立場上の共感もあるんだ、実は。だから、できることならなんとかしてあげたい」


 本当かよ、おい! と思ったが、いずれにせよ、これはこれで迷うセリフだった。

 なぜなら、もしこいつらが俺や夕霧を見逃してくれるとして、その時は、こいつらの別の殺人を黙認したことになるからだ。


 仮に、本当に犯人がこいつらだったとして。


「……そうだな、こうしよう」


 気が遠くなるほど長く感じた数秒が過ぎ、少年の声がまた言った。


「僕にも、守るべき女性がいてね。その子のためなら、なんでもする所存だし、実際、今もそうしている。ただ、そういう立場だからこそ、僕が君に同情する余地もあるのさ。……故に、しばらくは手出しせずに態度を保留する。君も、もし夕霧碧や鹿島涼子が余計な真似をする兆候を見せたら、ぜひとも説得してくれると有り難い」


 ――では、十秒だけじっとしててくれ。


 そう言われ、振り向きたい衝動と戦っていると、徐々に周囲に陽光と喧噪が戻り、少し前の黄昏時みたいな陰りが消えた。


 慌てて周囲を確認したけど、もはや陰る前と同じ、近所の街角だった。





 ただし――車道を挟んだ向こうに、美貌の少年がいた。この暑いに全身黒づくめだったが、外人風の女性と腕を組み、こちらを眺めている。


 軽く俺に微笑したことで、あいつが今の声の主だとわかった。

 声は後ろから聞こえたはずだけど、間違いなくあいつだ。


 ちなみに、終始無言で俺を睨み付ける女性は、なぜか夕霧と雰囲気が似ていた。やたらと色白で……なんだか別世界から来た麗人に見えたのだ。


 冷や汗をかいて見つめる中、二人は仲睦まじい恋人同士のように、腕組みしたまま歩きさった。もっとも、女性の方が少年の腕にすがりついているように見えたけど。


もったい付けるほどじゃないので書きますが、警告した少年と美女というのは、↓の拙作に出てくる守と月夜です。


https://ncode.syosetu.com/n6872eh/


ただ、メインキャラほど今後登場するわけじゃないですし、詳しく知らなくて問題ありません。

基本は夕霧と誠司の絡みですし。

興味ある方だけどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ