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襲撃、継続中

「いや……自慢じゃないけど、俺は通販で買っているからさ……ユニ○ロで。処分といっても、古くなりゃ捨てるだけ」


 本当に自慢にならん。

 言わなきゃよかった。でもなんか真剣に訊かれたからな。

 俺が知らない、深淵な理由が今の質問にあるのかと……たとえば、アフリカの子供達の援助のため、古着集めて送ってるとか。


「……ユ○クロね……ユニク○……たまにCMやっているところね」


 すげー真剣に呟いてて、びびる。

 もしかして、冗談抜きでアフリカの子供達への援助か? 俺、もう高校生だし、サイズ的合わない気もするけど。


「なにか、真剣な理由?」


 俺が訊き返すと、「わたし今、いいこと思いつきましたっ」的な笑顔を広げていた夕霧は、びっくりしたように目を瞬いた。


「あ……ごめんなさい、妙なこと尋ねて。わたし、まだ子供だし、たまに突拍子もないこと言う癖があって」


 いや、さほど子供には見えない。

 今日になって確信したけど、おっぱい大きいし。


「それより……よかったら、お昼ご飯とお夕飯を食べていきませんか?」


 握ったままの、手にきゅっと力を入れ、夕霧が微笑する。

 もうこれ以上は無理なのに、またにじり寄られ、俺はほとんど仰け反りそうになっていた。

 マジで顔が近いです。




       



 食費は浮くわ、夕霧は薄着だわで、俺は本当はお食事提案を受けたかった。


 お愛想で言ったんじゃない証拠に、夕霧は最後まで熱心に勧めてくれたし、「ここで食べるのが嫌なら、外でご馳走します」とまで提案してくれたのだ。

 でも……さすがにクラスメイトの女の子に、メシを奢られるのはな。


 かといって、あんまり持ち合わせがなかったから、「いや、俺が奢るよ」とも言えないし。情けない話だが。


 それに、中坊妹と待ち合わせしているらしいのを、先に妹から聞いてしまっているわけで。俺に遠慮していつまでも家を出ない夕霧のため、俺は自分から辞することにした。

 嘘みたいな勢いで引き留められたけど、後で妹に恨まれてもつまらんし……あいつ、うるさそうだしな。


 思わず顔をしかめてポケットに手を入れ、俺はそこで気付いた。

 なにか、中に入ってる? 紙切れ?


 取り出すと……新聞記事を切り抜いたものだった。

 日付は、六月入ってすぐか?

 その場で広げて読むと、かなり不気味な事件記事だった。




【バラバラ死体を発見】

池袋南口に近い公園のゴミ捨て場で、清掃員が早朝に人体の一部を発見した。

男性のものと見られる切断された左腕と、同じく切断された右足の二つで、発見者の清掃員によると、日が暮れる前に見た時は、なかったとのこと。

二つはポリ袋に入れられ、公園内の別々のゴミ箱に分けて捨てられていたが、頭部を含め、まだ他の部位は見つかっていない。

現在、警察で目撃者を探している。




 内容の割にはさほど大きな記事ではないが、不気味さは伝わる。

 まだ、他の人体パーツも全部見つかってないみたいだし。

 ていうか、池袋って……その場所も気になるな。


「なんで俺のポケットに……ていうか、あの女かっ」


 他に心当たりもないので即座にわかったが、心底度肝を抜かれたのは、その直後である。

 ふいに背後から声をかけられたのだ。



「ご名答。尾行中に、あたしがそっと入れたのよ」



 慌てて振り向くと、あの黄金色をした瞳の女が立っていた。

 本来なら、歩道で潰れていたはずの、あの侵入者である……腹立つことに、ぴんぴんしてたけど。


「おまえっ」

「あ、大声出したり騒いだりしたら、すぐさま消えるわよ。言っておきますけど、逃げ足速いですからね。もうわかってると思うけど」

「……わかってるさ、そりゃ」


 俺は落ち着こうと務めつつ、頷いた。

 関わりたくないけど、ここは夕霧のためにも、情報仕入れなきゃな。


「厚かましいぞと言いたいけど……俺になにか用でもあるのか?」

「別にバラバラ死体にする気はないけど、ちょっと話したいことが」

「い、いいさ、ちょっとくらい」


 いいけど、いきなりビビる例を出すなよ。

 まさか薄暗い路地に連れ込んで、俺を新たな犠牲者にする気じゃないだろうな。


「そう引かないでー。今のは冗談だし、君に危害を加える気はないから」


 ジーンズ姿の超人美女は、俺の引きつった顔を見て、苦笑した。


「信じられないかもしれないけど、あたしはこれでも正義の側だと思っているのよ」

「ああ、アニメとかに出てくる悪党はみんなそう言うんだよ」


 俺はすかさず言い返してやった。



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