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まさかの、マンション訪問


 謎の女性に遭遇した夜は、いつあのクンクン女が襲ってくるかと気が気ではなく、俺は深夜までセアラを相手に雑談して過ごした。


 しかし、さすがに翌日も学校なので、いい加減で寝たけど。


 疲れたせいか朝までぐっすりだったけど、特にうちのボンビーアパートに襲撃してくる奴はいなかったな。

 俺が尾行されたと思っただけで、実は誤解なのか?


 あるいは、幻覚とか?


 いや……さすがにそれはないだろう。

 あの女性は確かに存在したし、ビルから飛んだのもこの目で見た。一晩寝ただけだし、気を抜かない方がいいな。


 ちなみに今朝は、出かける前に唐突にセアラが尋ねた。





「セイジさん、お昼はいつも学食ですよねー」

「……そうだけど、学食の件はともかく、いつもそうだって言ったっけ?」


 びっくりして鞄片手に固まると、セアラは笑顔で答えた。


「当然じゃないですか、あはは」


 話したのか? 今のは、激しく棒読み口調だったけど。


「まあ、いいよ……そう、俺はだいたい学食かな。生活費を切り詰める必要があるんで」

「こ、ここここっ」


 セアラが謎の呻き声を上げた。


「なんだ、鶏の真似か?」

「違いますよっ。ここは一つ、わたしに提案があるって言いかけたんです」

「なら、なめらかにそう言えって。AIだろ?」


 トチる時は、人間っぽく見せるためにわざとやってるのだろうと思っているので、俺はそう言ってやった。


「ぜ、善処します」


 そこで大きく息を吸い込むモーションをした後、セアラはとっておきの内緒話をするみたいに囁く。


「この際、だ、誰かにお弁当を作ってもらうといいのではないでしょうかー。お昼の食費も浮いて、いわゆる一石二鳥、一挙両得です」

「なにその、厚かましい提案」


 俺は膝の力が抜けた。


「そんな相手、いないんだけど……悲しいこと言うなよ」


 某シンジ君張りに、本気で落胆したやん。


「いえ、そうじゃなくて! セアラの推測によるとですね、多分、クラスメイトの……セイジさんの後ろの席の人? 月曜日に、その人に頼めばと」


 俺が反論する前に、立て続けに捲し立てる。


「昨晩の雑談の中で、そのクラスメイトさん、こっそりステーキランチを奢ってくれたみたいと言ってたじゃないか。それくらいしてくれるなら、お弁当だって大喜びで作ってくれますよ。ホントホントっ」

「なにがホントホントだか……」


 だいたいなぜ、金曜日の今日ではなく、月曜日に頼めと勧めるのか? ちらっとそう思ったけど、それ以前に提案が無謀すぎるので、考慮の余地もなかった。


 まだ、高層ビルからバンジージャンプする方がマシだ。


「おまえが言うのは、エレガントに奢ってくれた夕霧だろ? あの子は高嶺の花だし、そんなの頼めるかー。じゃー、行ってくる!」

「あああああ、でも案外――」


 後ろでセアラがなにか言ったけど、俺はもう相手にしなかった。

 もっと現実的な提案くれと。





 もちろん、別に意識したわけじゃないが、話に出たからさすがに気になり、俺は教室へ入ると、すぐに夕霧の席を見た。


「今日は休みじゃないか? 昨日も風邪で休みだったし」


 俺の視線に気付き、すかさず吉岡が言いやがる。


「そうか……まあ、この時間だしな」


 もうすぐHRだもんな。

 それにしても、セアラの予言じゃないだろうが、本当に今日は弁当頼む以前の話だったのな。もちろん、そんな気は元からないけど。



 しかし、運命とはどう転ぶかわからないものだ。

 実際に昨日に続いて、今日も夕霧は休みだったのだが、放課後になった途端、担任が俺に頼んできたのな。


「おまえ確か、夕霧のマンションから近かったよな?」


「はぁ? 俺、そもそも夕霧……さんのマンションの場所すら、知りませんが」

「住所なら教えてやるから、おまえは二日分の授業ノートを届けてやってくれ。まあ、あいつなら心配いらないだろうが、念のためだ」

「構いませんけど、俺は自分のノートしか取ってませんよ?」

「ちゃんとノート取ってるなら、それをコピーして持っていけばいい。おまえが一番近いようだから、この際は妥協する」


 マジか! そんな近所にいたとは思わなかったな。

 あと、俺が前に三日休んだ時はそんなサービスなかったのに、成績優良生徒には優しいじゃないか、先生よう。


「先生、なんなら僕がっ」


 横で聞いてた吉岡が割り込もうとしたが、「おまえは逆方向だろっ。いいから帰れ!」と先生に突っ込まれていた。

 もちろん俺も断る理由など特になく、いきなり心の準備がいりそうな訪問が決まった。


 ……なんか緊張してきたかも。


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