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悲しい誕生日

作者: 神月斗華

今日は私の誕生日。

でも、嬉しくない。

知り合いに祝われても、プレゼントを渡されても、、、。

一応笑顔は浮かべておく。

さも誕生日が嬉しいと思っているように。

でも、内心は、「笑いたくない。」「早く「今日」という日が過ぎてほしい。」と。

、、、そう、思っている。


私は自分の誕生日が嫌い。

何故なら私の誕生日は、、、、。

、、、私の大切な人の「命日」だから。



数年前、私は独りぼっちだった。

家族は死んで、友達もいなかった。

でも、その時の私は、「それが私の運命だから」と思っていた。

生まれたときから今の今まで、幸せなことなんて、1つもなかった。

家族がいない。

友達もいない。

お金もない。

同じ人間からは暴力、暴言を。

挙げ句の果てには、殺されかけた。

もう、どうでもよかった。

自分の人生も、運命も。


、、、でも、そんな時、私の前に「彼」が現れた。

しかし、彼自身も私を殺そうとする人間(暗殺者)だった。

私は、何もかもを諦めていた。

だから、私は彼に「私の死」を求めた。

自分の命を捧げた。


でも、彼は私を殺さなかった。

そして、私と過ごすようになった。

私は、意味が分からなかった。

だから、私は彼に聞いた。


「どうして、私を殺さないの?」


、、、と。

そしたら彼は、、、。


「お前はオレと同じだから。」


と言った。

ますます意味が分からなくなった私。

でも、何をすればいいのかも分からない。


そんなこんなで、1ヶ月が経った。

そしたら、だんだんと彼の事がわかってきた。

彼も、私と同じように家族や友達がいなかった。

そして、今までとても苦しい思いをしてきたことも。


それからというもの、私は彼に対して1つの感情が芽生えた。

私は、その感情をどう説明したらいいのか分からなかったけれど、彼に対してどんな行動をすればいいのかは分かった。

だから、私はなるべく彼のそばに存在し、彼と言葉を交わし、過ごした。


そしたら、だんだんと彼に変化が出てきた。

よく、彼は私に笑顔を見せてくれるようになった。

そして、抱き締めてくれるようになった。

私は、その彼の行動に「喜び」や「愛しさ」などの感情が生まれた。

私はそれらを感じて、これは彼への「愛」だと感じた。

その時、初めて「幸せ」というものを知った。

彼といる、そのすべての時間が「幸せ」だった。


それからは、一緒に寝たり、ご飯を作ったり、お出掛けをしたりした。

時には、私が彼に甘えてみたり、逆に彼が甘えてきたりした。

思いっきり抱き締めたりした。

彼は温かくて、とても心地よかった。

彼も、よく私の温もりを求めて、触れてきたりした。


そうしている内に、一年が過ぎた。

その一年で仲をもっと深めた私たちは、キスをするようになった。

といっても、最初のキスは、私が転んで、イスに座っていた彼が振り返って口と口が当たってしまったという事故だったのだけど、、、。

それからは私も彼も吹っ切れたのか、よくするようになった。

寝る前にも、起きた時にも、、、。

彼とキスをするとき、あの時の幸せとはまた違う幸せを感じるようになった。


ずっとこの幸せが続けばいいのに。

そう思っていた。


、、、でも、そんな幸せは突然幕を閉じた。

私の誕生日の日。

私は、いつも通り過ごしていた。

彼は、買い物に行っていた。


「はやく帰ってこないかな、、、。」


私はそう思って、彼を待っていた。

でも、、、。

そんな私を待っていたのは、、、。

「彼の死」

だった、、、。


彼は、買い物の帰りに、何者かに射殺されたのだという。

弾は彼の心臓を貫き、死に至らしめた。

私は、彼のところへ向かった。

彼を囲むように集まっていた野次馬を私はかき分けて、やっとの思いで彼にたどり着いた。


彼は、、、冷たくなっていた。

たくさんの血を流し、死んでいた。

私は、ゆっくりと彼を抱き締めた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


泣き叫ぶ。

彼はもういない。

死んでしまった。

その事実が受け入れられなくて、、、。

ただ、ただ、泣き叫ぶ。

、、、最悪な誕生日だった、、、。



それからは、あまり覚えていない。

彼の死体は暗殺者仲間達によって丁重に埋葬されたらしい。

私は、酷い高熱を出して、1週間ほど眠っていたそう。


目が覚めても、私は彼をなくしてしまったショックから立ち直ることはすぐには出来なかった。

しかし、そんな私を彼の仲間達は、何度も励ましてくれた。

そのおかげで、私は立ち直ることが出来た。完全にとは言えないけど、、、。





そして、今日。

私の最悪の誕生日。

彼の何回めかの命日。

もう彼はいないけれど、それでもいい。

だって彼は私に「あるもの」を遺してくれたから。

「あの頃の幸せ」はもう終わってしまったけれど、「今の幸せ」がある。


「さて、、、今日も仕事頑張らないと。」


私は、ゆっくり立ち上がる。


「私も、、、もうすぐそっちへ行くからね。だから、、、待ってて、、、。」


そう言って、自分の指にキスをする。

正確には指にはめてある「指輪」に。

彼が遺してくれた、私への最後のプレゼント。

私は、その指輪のおかげで、今まで生きてこれた。

彼が私を愛してくれたから生きてこれた。

向こうで会えたら、今度は私が彼を愛してあげよう。

今まで会えなかった分、いっぱい愛してあげよう。

それが、今の私の幸せ。


そして、私は歩き出す。

今日は最悪の誕生日だけど、もう次はこない。



「さぁ、、、今日も頑張るぞー!」


もうすぐ来る、「幸せ」。

キラリと指輪が輝く。

その指輪の後ろには、見えないけどきちんと書いてある。

「I love you」


「私も、、、愛してます。」















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