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地対空ミサイル試験

次回「ジェットエンジン完成」

 NRCによる第二次侵攻が判明した4日後、ネオは海軍と地対空ミサイルの試験を行うため、海上に出ていた。


 そこでリヒター大将によって面白いものを見せられる。


「どうだ! サルヴァドーレやベレン、そしてネオ殿の空力関係の基礎技術のデータを貰い、我々が独自にこさえた機体だ!」


 リヒター大将が自慢げに見せたものは、水上機であった。

 本当はヘリを作ろうと意気込んでいたものの、海軍工廠の人間がヘリの有用性を理解できず、結果的に水上機となったのだった。


 これらは巡洋艦などに搭載され、弾着確認や哨戒、偵察活動に用いられる予定である。

 海軍は元々、アースフィアにおける航空用の謎エンジンを提供してもらえずにいた。


 だが、リヒター大将はかねてより航空機と海軍戦力の併用の有用性に気づいており、サン・パウロの件のように海軍が持つ艦船で航空機が利用できるような状況を作ろうと努めていたのだった。


 水上機は海軍完全独自製作というわけではなく、空軍よりベレンやサルヴァドーレのエンジンを分けてもらっての製造であったが、エンジンや排気タービン以外は全て海軍が調達した存在であった。


 レシフェ王国海軍の底力を感じさせる存在である。

 また、実はすでに海軍は巡航ミサイルと地対空ミサイルの量産にも着手している。

 これらはNRCによる第二次侵攻作戦に対しての秘密兵器であり、大急ぎで量産体制を整えている最中であった。


 こういったことが可能なのも、コルドバの経済的支援によるものであり、リヒター大将はコルドバに対して強く恩義を感じていた。


「性能はどれほどなんです?」


 ネオは海軍独自の水上機が、その外観からかなり優秀な性能を誇っている事にすでに気づいている。


「水平飛行速度は550kmといったところだが、水上機としては十分ではないだろうか。フロート投棄が可能なので、いざとなったらもっと速度を上げられるが、機体が犠牲になるのでフロート投棄時の速度は計測しとらん」


「武装は250kg爆弾×2と……波動連弾×4……みたいですね」


 ネオは水上機の周囲をぐるぐる回って装備などを確かめていた。

 機体構造なども丁寧に仕上げられており、サルヴァドールと同じく頑丈なものであることが容易に推察できる。


「20mm波動連弾は、もはや基本武装であろうな。250kg爆弾は装備可能にしただけで普段は装備せん。これで550km出るのだぞ。……それと、魚雷なども装備可能だ。エンジンのおかげで積載には余裕がある」


 水上機は、様々な状況を想定されて武装が装備できるよう、汎用性と冗長性が確保されていた。

 ネオはこういう事が出来るのもリヒター大将あってこそだなと、彼の統率力を改めて賞賛した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


 地対空ミサイルは、発射だけでなく標的物も攻撃する方向性での試験となった。

 標的はなんと巡航ミサイルで、前回は未完成だった射出機のテストもかねて巡航ミサイルを射出し、これを地対空ミサイルによって迎撃する試験である。


 試験は本番の戦場を想定し、巡航ミサイルを敵航空機とし、ミナス・ジェライスの乗組員達が超高速で飛行する航空機を撃破するという形式でのものとなっている。


 戦艦ミナス・ジェライスとは別に巡洋艦も配置されており、巡洋艦が標的の位置や撃破などの状況を確認する。


「ミナス・ジェライス艦長の《カサーシャ・ヴァルドゥーガ》少将だ。ネオ殿。本日はよろしく頼む」


 それまで海軍将校の一人として各種試験などを傍観者の立場として見ていたミナス・ジェライス艦長のカサーシャ少将は、ここではじめてネオと名を交わすこととなった。


「では試験を開始する。第一試験。目標物があると想定。測距即的は割愛。風向きよし。風速。よしっ。4番、巡航ミサイル!よーい!」


「4番! 巡航ミサイルよーい!」


 カサーシャ少将の号令に、砲撃主が続く。

 4番というのは、王国海軍の戦艦は基本的に、艦首から1番手前の砲塔から、1番、2番、3番と呼称するが、巡航ミサイルは3番目の砲塔の真後ろに4番目の代わり新設された射出機から射出されるため、4番と呼んでいる。


「撃てー!《てーーーっ》」


 完成した射出機によって巡航ミサイルが発射される。

 ロケットモーターで一時加速をしたあと、シュゴゴゴゴというジェットエンジン独特の音を奏でながら、巡航ミサイルは飛翔していった。


「リヒター大将。具合はよろしいようです」


 カサーシャ少将は無事に巡航ミサイルが発射できたことに安堵した。


「うむ、ネオが入力した座標位置に到達するまでしばし待とう。迎撃位置になってから巡洋艦とあわせて目標物の確認だ」


「はっ」


 カサーシャ少将はリヒター大将に敬礼し、再び指揮をとった。


 第二試験は巡航ミサイルが目標の位置に辿り着いてから、とり行われることとなっている。

 このままなら問題なく第二試験も可能である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「巡洋艦より通信。 敵目標確認。 巡航ミサイルの方です。 繰り返します。 敵目標確認」


 通信担当が巡洋艦からの通信を中継した。

 特に不具合がなければ、巡航ミサイルは30km先の目標位置に到着しており、これから旋廻をしながらミナス・ジェイラスの方へ高速で回避行動を繰り返しながら飛行してくる予定である。


「方角確認」


 カサーシャ少将は飛来する目標物がどこから飛んでくるのか確認をとった。


「飛翔物体は西北西よりこちらに向けて突撃を慣行しております」


「目標物の測距、即的を開始。周囲に展開する巡洋艦にも求めろ」


 カサーシャ少将は試験のプラン通り、まずは巡洋艦などと連携しての索敵を開始した。


「目標物。ミナス・ジェライスより距離27km! 旋廻しながらこちらへ直進! まだこちらの光学センサーでは捉えられません! 射程外!」


 観測員が状況をカサーシャ少将に伝え続ける。


「距離20になったら光学センサーを展開。……地対空ミサイル発射準備!」


「地対空ミサイル。発射準備します」


 ミナス・ジェライスは、新たに搭載されたロックオン用の光学センサーを展開した後で地対空ミサイルを発射する。

 

 本来ならこれは巡航ミサイルでも行わなければならないが、今回は巡航ミサイルを迎撃するのが目的のため、巡航ミサイル発射時にはそれらの工程は省かれている。


「距離20! センサー反応アリ!」


 観測員が有視界外にある巡航ミサイルを捕捉することに成功した。

 熱などを探知して可動する光学センサーは、見事に旋廻しながら回避行動をとりつつミナス・ジェライスに進む巡航ミサイルを捉えている。


 巡航ミサイルは900km以上の亜音速で飛行していた。


「地対空ミサイル。2番。照準よーい!」


「2番。発射準備完了!」


「即距、距離17、方角西北西、目標、敵高速飛翔物体! てーーーーっ」


 ボゴオオオオオオオオといいう音と共に、発射台の付近が白い煙で満たされる。

 ロケットモーターによるものである。

 すぐさまオレンジ色の閃光がミナス・ジェライスより高速で飛行していった。


「着弾確認開始します。目標まで距離16、カウントします」


 弾着観測員は、光学センサーなどのデータから、着弾までのカウントダウンを行った。

 通常の砲撃とやることは変わらないが、それまでの砲撃戦と比較すると非常に未来的な戦闘スタイルに様変わりしている。

 

 リヒター大将含めた見学者の立場の海軍将校達は、王国海軍が輝きに満ち始めている実感に震えていた。


「距離5!カウント継続! 3! 2! 1!」


 やや遠方で赤い閃光が1つ発生した。

 巡航ミサイルは迎撃できたかどうかは、ミナス・ジェライスからはまだ確認できていない。


「巡洋艦より通信! 我視認セリ! 目標沈黙! 繰り返します! 目標沈黙!」


 巡航ミサイルのすぐ近くにいた巡洋艦は、ミナス・ジェライスに迎撃に成功したことを報告してきた。


「こちらのセンサーでも確認。目標完全に沈黙。周囲に敵影ナシ」


 うおおおおおおおっと様々な者達が吼えたために、艦内はお祭り騒ぎとなった。

 王国海軍は、それまで不可能とされていた航空機の迎撃に成功したのだ。


 海の上で敵が飛んでいくのを、唇を噛み締めながら見つめるしかなかった時代は終わり、海上を通るというのも簡単にはいかない時代が再び始まったのである。


「………後はNRCの新型機次第だけど、アレはこちらの新型でやる……」


 艦内の歓声にまぎれて、ネオが独り言を呟いていた。

 ネオはミサイル防衛の有用性は理解していたが、空に拘っていた。

 彼が作りたいのは最高の航空機であって、最強の兵器ではない。

 

 艦内の状況を共に喜びつつも、改めて己の意思を自分で確認したのだった。


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