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プロローグ

新作を製作中だったが公開前にエタりそうだがどうしよう!

こういう時は勢いに任せただけの適当な新作を作るしかない!

そんな感じで作ってます。

ありふれた内容っぽいからこそ、自分なりに物語を作るのが面白い。


注意:更新は毎日16時を予定していますがストックがありません。

 ロストテクノロジー。

 それは平和な世界でも容易に起こるテクノロジーの崩壊。

 有象無象様々な要因によって起こりうる。


 40cmを超える口径の大砲は、精密誘導弾が現れたことによって製造技術が失われ、石炭から石油を作ろうと試みるという装置も、

 石炭以外から高効率に石油成分を取り出すことが可能になったことで廃れた。


 平和な世界においては常にコストによって発生し、戦火渦巻く世界では、他国にその技術を渡さぬようにと消滅させることで発生する。


 この《アースフィア》と呼ばれる世界において消えたのは、航空機を含めたエンジンであった。


 消えたのはエンジンそのものではなく製造技術であり、この未だ戦火渦巻く混沌とした世界ではオーバーホールやニコイチ修理などを用いて何とか航空戦力などを整えている。


 航空戦力はこの世界において必要不可欠であり、国力そのものを示す指標の1つである。


 一般市民が移動手段などに用いる原動力はもっぱら「電気モーター」であった。


 光暦こうれき1984年。

 南北に北の果てから南の果てまで地が続く大陸、「リコン大陸」の南側、俗に「南リコン大陸」と呼ばれる地にあるとある国は、今まさに列強によって吹き飛ばされようとしていた。


 この「レシフェ」と呼ばれる国は王政国家であるが、

 アースフィアのほぼ全ての国々においては、長らく戦火が続いた影響から強い主導者を求めるようになり、民主主義から再び王政復古へと至ったのだと言われている。


 実際に、それが事実であるのかどうかについて民も当の国王も把握できていない。


 把握できない程に……「この世界は一度、滅びかけてしまったのである」


 レシフェの国王《トーラス2世》はレシフェ王国軍の元帥より現実をつきつけられる。


「陛下。真に申し訳ございません。してやられました……北部へ派遣した航空部隊は現地で拘束。これによって我が軍は航空戦力を殆どを喪失。現時点で我々は丸腰になったのです――」


 元帥はトーラス2世に向かい、現地よりもたらされた事実をありのままぶつける。


 北リコン大陸への派遣は同盟国エスパーニャからの要請であった。

 エスパーニャはNRC《北リコン大陸連合王国》と呼ばれる合衆制の列強国との戦争が続き、援軍を求めたのだ。


 だが、レシフェが出兵を行った時にはすでに遅かった。

 NRCは既に首都付近まで進軍をすませ、首都に派遣された航空部隊は包囲される形で拘束。


 その上で、レシフェへ要求を叩きつけてきたのである。


「NRCの要求は……」


 声を詰まらせる元帥を前に、トーラス2世は平静を装っている。


「要求は?」


「無条件による全面降伏とNRC統治下へ入ること……です」


「レシフェは貴様も知るとおり、そこまで発展している国家ではない。主要産業といえば、もっぱら一次産業である農耕だ。資源に恵まれているわけでもないこの国の……一体何が欲しいというのだ」


「領地です。陛下」


 元帥の即答に一瞬声をつまらせたトーラス2世であったが、すぐさまNRCの狙いが南リコン大陸の制圧であるということを理解した。


 そのための第一歩として、南リコン大陸の北部に大きく領地を持つレシフェを襲おうというのだ。


「元帥。NRCの目的は、北リコン大陸の制圧のみだと聞いていたのだが……そもそもが、その話をしたのは、他ならぬ貴様であろう?」


 このまだ若さ溢れるトーラス2世は、人を全面的になんら根拠無く信用するような男ではなかったものの、

 レシフェ王国軍を総括する元帥は、実戦経験も豊富な、平民叩き上げ将軍の中の将軍であり、大変信頼していた。


 その元帥は、NRCが戦略的価値をレシフェ含め、「辺境の弱小国家」と彼らが呼ぶ南リコン大陸の国々に対して見出していないというからこそ、出兵の件について了承したのである。


 元帥の見立てではNRCは西のユーロ大陸の諸国との戦争があり、エスパーニャの軍勢はNRCと十分な戦いを行えるとの予想であった。


  事実、出兵前に最後に送った偵察部隊や、以前から現地入りしていた内偵の者たちは、皆一様に

 「エスパーニャは有利に戦えている」という情報を送ってきていたし、首都に辿り着くまでの道のりで航空部隊が異変を感じ取って引き返すといったことも無かった。


 だからこその異常事態であり、トーラス2世は元帥の近場の者から「元帥は今にも自刃しかねない状況である」と聞いている。


「陛下。私にすら予想出来ない何かが起こってしまったのです! 現地からの情報は全くありません。NRCがどういった動きをしているのかこちらは全く把握できません」


「元帥。国家が滅びかねない状況で白旗を揚げることは出来ん。この意味がわかるか? これは単なる敗戦ではないのだ」

 

「……存じております」


 元帥は、喉から声を押し出すような形で何とかそれを口にするが、トーラス2世は尚も続ける。


「いいか、我が国の民は、あのような者らに蹂躙されるようなことであるならば死を選ぶ。 我が国は、か弱いからこそ……その心は強いのだ。弱いからこそ平和であり、平和でありたかったのだ。国力の強さだけが、決して平和に結びつくわけではないのだ……だからこそ――」


「――陛下……ッ…出兵は我がレシフェだけではありません……南リコン大陸の国々は、団結心をもってエスパーニャへ派遣していったのです。団結し、エスパーニャに加担すれば抑止力になる……と」


 トーラス2世は感情を押し殺し元帥の話を聞いていたものの、高ぶる感情を抑えきれなくなりつつあった。


 しかし出兵を認めたのは他ならぬ自分自身であり、元帥以上に責任を感じている。

 それに、元帥すら予想できぬ何かがあったのが事実であれば、もはや手のうちようがないのも事実である。


「――ええい。もう良い。下がれッ。いいか元帥! 私は打開策を求めている。そうでなければ本土における決戦だ。王国陸軍の大将は既に準備を整えつつあるそうだが、今はこの未曾有の危機について民に知らせないでおく。このままやつらの条件を飲むことはせぬぞ」


 トーラス2世のその言葉に元帥は力なく敬礼し、去っていった。



~~~~~~~~~~~



 その元帥とのやりとりの2日後、レシフェ王国政府と王国軍が手をこまねいている状況を見かね、謁見を申し出たいという青年が現れる。


 曰く「王に見せたいものと、事態の打開策がある」とのことであったが、謁見を申し出た青年は風貌が明らかにレシフェの国民のものではなく、とても怪しげな格好をした男であった。


 元来ならば、ただの詐欺師として門前払いするのが当たり前であったが、申し出を受けた受付の者は何を思ったか、トーラス2世へそのことを伝え、トーラス2世も「気分を紛らわせたい」と休憩をかねての謁見を許可した。


 トーラス2世の前に現れた男は、黒髪の青年で年齢は20歳程度であったが、

 なにやら布で包まれたものを謁見の場である御殿の玉座に持ち込んできていた。


 これも本来ならば許可されぬものであったが、トーラス2世は、あらかじめ武器以外の持ち込むは全て許すと部下の者達に申し付けていたために許されたものであった。

 

 トーラス2世がそれに目を向けると、布からは「トキトキトキトキ」と謎の音を発し、なにやら湯気のような煙のようなものが出ていた。


 非常に不気味な雰囲気を漂わす何かであったが、まずはその男の一言目を待つこととした。


 男はバッと布をはらうと、そこにはガタガタと揺れながらトコトコトコと音を発している金属の固まりが現れた。


 この世のものではないのではないか、と不気味がるトーラス2世を前にして、男はニヤリと笑いながら発した。


「まず貴様に問う。貴様は何故、殆どの者が知らない我が国におきた状況について認知している?」


 トーラス2世は、最初にその男がどうしてレシフェの内情を把握したのか尋ねた。


「ッフフフ。いえね、ここに来る前、拘束される現場を目撃してしまったものですから」


 男は嘘を言ったわけではなかったが、トーラス2世が信用できるだけの根拠は示さなかった。

 まだこの男がNRCの回し者である可能性は十分にある。


「陛下。NRCだかなんだか知りませんが、開戦まで1ヶ月半伸ばしてください。私が航空機を作り、NRCを撃退してご覧にいれましょう」


 青年はおもむろに、金属の塊の方向に手を向ける。


「こいつぁエンジンです。貴方方がご存知の航空機用とは、全く構造が違いますが、コレでも飛ばせます。幸いに、私の知る限り、NRCだかなんだかの航空機はただ飛ぶだけのハリボテだ。コイツで、とりあえずNRCを一旦退けるだけの戦力を作れましょう」


 トーラス2世は青年の眼を見て、彼が詐欺師でもペテン師でもないことを理解した。


 いや、それだけではない、トーラス2世は機械的知識に優れているわけではなかったが、彼が御殿の玉座にまで運んできたそれが、かつて世界に存在したといわれる「内燃機関」と呼ばれるものとソックリであったからこそ、このふざけた話を、いつものごとく冷静な面持ちで聞くことができたのだ。


 彼の眼は、己に宿る野心と、正義と、そして偽りのない清らかな色をしていた。

 

 しばらくするとトーラス2世は王宮全体に響かんばかりの高笑いした。

 なるほど。こういうことが都度おきれば、神様がいると信じたくなるなと思うと、笑いが止まらなかったのだ。


一呼吸おいたその後で――


「貴様! 名前は!」


 と、王は問う。


「ネオッ! それで十分。名前も過去も捨てました。それでもよろしければ、自分に資材と人員を」


 我が方に自信ありとみせつけるネオに対して、トーラス2世はレシフェ王国空軍の《グラント将軍》へ彼を紹介することとした一方、


「5日以内に、私に空を飛ぶ航空機を用意せよ」とネオに命じた。


 それに対しての返答は――


「飛ぶだけでよろしいか、それとも航空機として形もある程度整ったものがよろしいか――飛ぶだけなら2日以内で事足ります」とトーラス2世に希望を持たせる言葉を発した。



 その日こそ、南リコン大陸の新たな時代の幕開けであった。

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