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ワールド・レコード  作者: 藍澤 建
追憶の時計塔
147/162

145.援軍

新作、描き始めました。

日間ランキングと、週間ランキングに乗ってます!

ローファンタジーです、ぜひ見てね!

 拳を振るう。

 それだけで全てが木っ端微塵に吹き飛んでゆく。

 聖獣級は余波だけで消えてゆく。

 神獣級は多少耐えても、数秒かからず命を散らす。

 そういう強さが、巌人にはあった。


「紗奈さん!」

「わかってるよん!」


 剣を振るう。

 それだけで全てが木っ端微塵に切り刻まれる。

 目の前に在る悪は、片っ端から殺されてゆく。

 逃げることは適わない。距離も強さも関係ない。

 ただ、目に入ったモノ全てを殺す殺戮機、英傑の王。


 世界最強と、世界第2位。

 その2人が今、肩を並べて戦っている。

 共に闘級は、軽く300を超えている。

 正しく理外の化け物だ。

 いかに神獣級といえど、今の二人には適わない。


『クソォ……コウナリャ一般人ヲ人質二……!』


 知恵ある神獣級の一体が、近くの民間人へと手を伸ばす。

 だが、その動きは途中で完膚なきまでに止められた。


『ゴ、ガ……! ウ、ウゴケネェ……!?』


 赤い光が、アンノウンの体を包んでいた。

 空を見上げれば、同色の光に包まれた彩姫が空に浮いており、彼女が手を捻ると、いとも簡単にアンノウンは捻り潰された。


「今の私は、世界の頂点お二人から、信頼を得てこの場に居ます。……先に謝ります。ここから逃がすことは絶対に有り得ません」


 彼女は、両手を広げる。

 凄まじい重力場が周辺へと発生し、それを察知した巌人と紗奈は後方へと飛び退いた。

 その光景にアンノウン達も焦り出すが……既に遅すぎる。


「『潰れなさい』」


 その言葉は、現実となって敵を襲った。

 その場の重力が何倍にも膨れ上がり、周辺全てが押し潰される。

 一般人は、グレイと入境が既に避難を進めている。

 だからこそ、三人はアンノウンを倒すことに専念できる。


「にしても、数が多い……!」


 殴っても殴っても、後から後からアンノウンは現れる。

 どれだけ倒しても、キリがない。

 いくら最強のふたりに加えて、覚醒した彩姫がいたとしても、この量を倒しきるのは骨が折れる。


「くそ……ッ」


 巌人は歯噛みすると、同時に遠くの方から爆発音が響き渡った。

 そちらへと視線を向ける。

 この国の特務も向かっているだろうが……神獣級がこれだけの数出てきている以上、正直、足止めにすらならないと思う。

 そこまで考え至って、巌人は拳をにぎりしめる。

 しかし、彼が決断を下すよりも先に、紗奈が声を上げた。



「巌人くん! ちょっと別れて殲滅しよう!」



「……! さ、紗菜さん……」

「ちょっとねー! この数もキツイけどさ。あっちはもっときついわけじゃん? まぁ、ボクは死んでも死んでも生き返るわけだし大丈夫っ! 巌人くんは、安心してあっちに行っておいで!」


 そう言って、紗奈はサムズアップを向けてくる。

 その眼前へとアンノウンが迫るが、空中から彩姫が叩き潰す。


「巌人さま! 今も昔も、1番強いのは貴方です! ここは私たちに任せて……好きなように動いてください! 安心してください……これしきで倒れるような鍛え方はしておりませんので!」

「彩姫……!」


 彩姫は、控えめにも運動が得意ではない。

 強力な異能とは引き換えに、壊滅的な運動センス。

 それは、もう1人の居候、駒内カレンとは正反対のものだろう。

 最弱の異能と、神に愛されたとしか思えぬ天才的な運動能力。

 加えてたゆまぬ努力を、カレンは行っていた。


 だからこそ。

 彩姫は常に、その2倍の量をこなしてきた。


 決して負けぬように。

 もう二度と、期待を裏切らないように。

 もしも愛する人が、過去の二の舞になったのならば。

 その時は、自分が側にいて支えてあげられるように。

 彼の道を、自分が切り開いてあげられるように。


 だからこそ、オーバーワークで倒れもした。

 何度も心配をかけた。心労をかけた。

 でも今は、この瞬間だけは。

 もう、心配はかけさせたくない。


 いいや、否が応でも掛けさせない。



「巌人さま。私は、大丈夫です!」



 彼の目を見て、彩姫は言った。

 その目を見た巌人は、大きく目を見開いて。

 ふっと笑って、遠方を見た。


「死んだら殴るぞ、彩姫」


 それは、巌人が初めて『彩姫を戦力として』信頼した言葉だった。

 それが、彩姫は一人の女性として扱われるより、ずっと嬉しかった。

 幼少期に見た、彼の後ろ姿。

 アンノウンに襲われた。

 それを助けられた。

 それだけの、ありふれた記憶。

 それが、彼女を動かす原動力だった。


 今度は、守られる側じゃない。

 次はもっと、彼の近くで。

 彼に肩を並べて、戦いたい!


「はいッ!」


 彩姫は涙を流して、返事をした。

 巌人はもう、彼女へと見向きもしない。

 一直線に遠方へとかけてゆき、それを見送った紗奈は、彩姫に言った。


「彩姫ちゃん。言っとくけど、この街はもう手遅れだよ? 残念だけど、圧倒的に手が足りない。正直なところ、絶対者(ワールドレコーダー)が、あと……そうだねぇ。4人くらいは欲しいところだよ」


 自分を含めて、絶対者は4人だけ。

 彼女の願望は叶わない。

 仮に、紡と弟子屈の2人が合流したとしても、きっとまだ足りない。

 それほどまで、絶望的な戦力差。

 しかし、それを前に彩姫は笑った。



「ご安心を。私は、絶対者級の『味方』を、あと二人知っております」



 といっても、両方とも元はと言えば敵なのだけれど。

 彩姫はそう笑うと、紗奈はキョトンと首を傾げる。


「んんぅ? まぁ、私達並に強いヤツなんて限られてるけど……」


 と、そこまで言って、紗奈は目を見開いた。

 彩姫の手には、スマートフォンが握られていた。

 それは、れっきとした電子機器。

 日本には、それを媒体に地球の裏側まで探る【怪物】が、存在していた。



『そうですね。たった今、もう一人も牢屋から解放したところです』



 スマホから、紗奈にとっては懐かしい声がした。

 声を聞きとったグレイが、興奮したように目を見開いて。

 紗奈は、呆れ返ったように、彩姫へ言った。


「……まさか。特級犯罪者に、牢屋に閉じ込められてた謎の怪物? なにそれ、そんなの頼るとか、彩姫ちゃんてばほんとに特務?」

「はい。手段を厭わず、人を救う。それが、私が追い求めた背中でもあり、この先も決して曲がらない信念です」


 その姿に、彩姫は笑った。

 あぁ、なるほど。

 やっぱりこの子は、あの子の弟子なんだな、って。


「……そうかい。なら、ボクはその信念を守ってあげよう」

「お気遣いどうもありがとうございます。ですが、無用ですよ。私は負けません」


 彩姫はそう返し、2人は笑った。

 前を見る。

 無数のアンノウンが2人へと牙を向いていた。

 それを見て、紗奈は剣を、彩姫は右手を突きつける。



「さぁ、行きましょうか!」

「うん。ぶっ殺しショータイムの幕開けだ!」



 ここに、2人の亜人による殺戮ショーが幕を開けた。




 ☆☆☆




 その頃、巌人。

 彼は道行く最中、襲われていた人々をアンノウンから守りつつ、被害の大きな場所を目指して突き進んでいた。


「後方のアンノウンは殲滅しました! アンノウンの死骸が転がっている道を通って! 後方の特務基地は無事なはずです!」

「あ、ありがとう……! 助かったよ!」


 人々は感謝を告げながら走り去ってゆく。

 その姿を見送りながら、巌人は決断できずにいた。


(くそっ……、この人達を確実に救うために、一緒に特務基地まで送っていくべきか。……でも、そうしたら他の人たちが確実に助からない……!)


『ぐげげ! 今度は黒髪の獲物……ぶげぇ!?』


 出会った神獣級アンノウンを一撃で粉砕しながら、巌人は駆ける。

 しかし、多くの人々と生死を賭けた現状、決断を前に、彼の動きは控えめにも精彩を欠いていた。

 無論、それでも並の神獣級相手には一切の引けをとるつもりは無い。

 が、ここは神獣級のバーゲンセール。

 異様に強いアンノウンなど、ザラに居る。


「――ッ!?」


 周囲の()()()()()に気がついたのは、直後のこと。

 巌人は大きく目を見開いた。

 瞬間、地面から、無数の氷が飛び出してくる。

 彼は地面を蹴ってそれらの氷を回避したが、上空へと舞い上がった先、建物の影から青い腕が彼の体を直撃した。


「……っ」


 凄まじい衝撃が彼を貫く。

 彼の体はビルを数棟貫通して、それでも止まらず、1キロ程は吹き飛ばされた。

 巌人は青い腕の見えた方向へと視線を向ける。


 そこに立っていたのは、青色の巨人だった。



 ───────────

 種族:青銅王タイタン

 闘級:210

 異能:巨人王[SSS]

 体術:SSS

 ───────────



『お、おお、オマエ……標的、確認。コロス』

「チッ、また硬そうな……!」


 闘級だけ見れば、変身前の酒呑童子すら上回る。

 巌人は拳を握りしめる。

 これで防御力に特化していると言うなら、厄介極まりない。

 巌人は獄王ディアブルに瀕死の重傷を負わされ、改めて自分の過去を振り返り、そして、いい意味でも悪い意味でも慎重になっていた。

 自分は決して最強では無いのだと。

 慢心すれば、死ぬ可能性だって十分にあるのだと、理解したから。

 特に、闘級が200を超えた相手には、もう一分も油断出来ない。


「こうなりゃ、本気で――!」


 巌人は全力で拳を握りしめる。

 青銅王タイタンは、高層ビル程もある巨大な体躯を揺らして巌人へ迫る。

 巌人は思わず喉を鳴らし、両の脚へと力を込めて――。






「おいてめぇ、死に晒せや」





 たった一言。

 聞き覚えのある少年の声が響いて。

 ドス黒い瘴気が、周囲へと突きぬけた。


 近くのビルが、灰になったように崩れ落ちる。

 まるで、寿命が尽く奪われてしまったような光景だった。

 まるで、地獄。

 巌人は呆然と立ち尽くし、彼の目の前で、青銅王は地に沈む。


「い、今のは……」

「オイオイ、第1位! 情けねぇ姿見せてくれんなよなァ!」


 どこからか声がした。

 巌人は声の方向へと視線を向ける。

 そこには、青銅王の背中を足蹴に、巌人を見下ろす一人の少年が居た。


 ――4人いる絶対者の、内一人。

 四人の中でも凶悪無比な能力を保有し、敵対した者を言葉一つで殺してしまう恐ろしき男。

 かつては、地竜王に手も足も出ずに敗北した。

 だが、彼は変わった。

 上を知り、頂点の背中を見て、理解した。

 自分の弱さを、さらなる伸び代を。


 故に鍛えて鍛えて、ここに、至った。



「お前は……序列の、第三位!」



 巌人は目を見開いて、彼を見上げた。

 その反応に、少年はとても楽しげに笑うのだった。



 名前:弟子屈 雄武

 年齢:十三

 性別:男

 職業:貴族・特務最高幹部

 闘級:190

 異能:即死宣言[SSS]

 体術:SSS




「さぁ、助けに来てやったぜ、最強野郎」




弟子屈くん、再臨!

覚えておいででしょうか?

絶対者序列第3位、死の帝王。

能力は即死宣言。死ねと言ったら相手は死にます。

ある程度の格上までなら通用するクソチートです。

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