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4-5

 一方、クイは、外界の森を夢中で走っていた。

(やばかったよ~。)

 乗っていたムンガリは、森の手前で乗り捨てた。

 森に入る前にはもう、軍将たちがってきていない事は分かっていたが、それでも、クイは、不安を振り切れずに、全力で走り続けた。

(なんで、あんなところに軍将がいるんだよぅ~。)

 それは他ならならぬ自分のせいだったが、それに気づく余裕はない。

 息が切れるまで走り続けて、ようやくクイは、気持ちが落ち着いてきた。

 呼吸を整えながら周りを見渡すと、瘴気を吸った外界の森が輝いている。耳を澄ますと、藍色の木々が、魔風に吹かれて囁いていた。

(ああ、やっぱり、外界はいいな~。)

 クイは、外界の森にみとれて足を止めた。

 この森は、瘴気さえ平気なら、とても刺激的で美しい。

 例えば、外界の植物は、瘴気を取り込んで光合成を行っているらしく、葉の裏は、大抵、鮮やかな藍色をしていた。その藍色は、空気中の瘴気の濃度によって濃くなっていき、逆に、これを人の世界に持っていくと、次第に色が薄まって半日もしないうちに枯れてしまう。

 こうした外界の植物は、一くくりに魔草と呼ばれていた。

 魔草は、食用には適さなかったが、反面、さまざまな効能が確認されていて、薬や毒の原料になった。

(わ~、見たことのない魔草もあるや~。)

 実は、クイは、魔草に詳しかった。

 クイは以前から、父親から逃げるためによく外界に入り浸っていたのだが、それを聞きつけた医師や薬商人が、「ついでに。」と魔草の採取を頼むようになったからだ。最初、クイは何も分からず、手当たりしだい摘んでいた。だが、だんだん魔草の見分け方を覚えてくると、それなりの稼ぎになるという事が分かってきた。このころには結界士として先がないことも自覚していた頃で、こうした経緯から、クイは、真剣に魔草の勉強をするようになっていたのだ。今ではクイは、薬商人並の知識を身につけている。そのため、どこの領地に放り出されても、食べていけるだけの自信はあった。

(ああ、これ、本で見たな~。何ていう魔草だっけ?)

 手折たおろうとして、ふいに、

(そうか! 外界に出られない時は、魔草の本を読んでいればいいんだ!)

と、名案が浮かんだ。

 本に没頭していれば、大人しい女性に見えるし、あの軍将のことも考えなくてすむ。それに、魔草を持ち帰って薬を作れば、ウテリア領民に恩を売る事もできる。

(よし! まずは、この辺りの魔草を調べよう!)

 クイは、思わぬ名案に嬉しくなった。

 魔草の勉強なら苦にならないし、これで日中も忙しくしていられる。


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