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四日目
薄曇の朝。
オレリアスは、ゴドウィンと兵士二人を伴って、再び外界に出かけていた。
昨日見つけた魔獣の死体を、もう一度調べ直すつもりだったのだが、またそこで、オレリアスは愕然とした。昨日の魔獣の死体のその先に、また新たなに魔獣の死体が増えていたからだ。
「なんだ、これは。一体、何が起きようとしているんだ!」
やはり、夜のうちに魔獣が殺されている。
オレリアスは、得体の知れない恐怖を感じていた。
まっすぐ東に点々とのびる、魔獣の死体。魔獣の種類に統一性はない。死体との距離もまばらで、そこに規則性はない。だが、ウテリア領の障壁と平行に続くこの異変は、何かのまじないのように見えなくもなかった。
「呪詛か、何かだろうか?」
オレリアスは唸った。
もし、そうだとしたら、ウテリア領の最東端まで、あと少し。たぶん、今夜でこの呪詛は完成する。
オレリアスは、深いため息をついて心を決めた。
「やはり、今日中に生け捕りにしよう。」
ゴドウィンと兵二人も、黙ってそれに頷く。
「罠の準備をしてくれ。」
オレリアスは、細かい指示をしながら、同行するメンバーを思い描いた。外界で夜を明かすとなると、できる兵は多くない。
「人手が足りないな。」
オレリアスは、顔をしかめた。
ウテリア領軍は、すでにクイの護衛にかなりの人員を割いている。不審人物の侵入を警戒するために、街道の入り口にも兵を配してあるし、ウテリア領の守りも手薄にするわけにはいかない。その上、今回の件で、細身の男を捕まえるための兵を回さなければならなくなった。
オレリアスは、頭をかくと、
「俺は、引退した兵たちをかき集めてみるよ。」
と言った。前戦から遠ざかった老兵を招集するのは心苦しいが、それでも、結婚式まであと四日。何とか、この難局を乗り切らねばならない。ウテリア領の総力が問われていた。