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二日目
今日も、朝から晴れ渡っていた。
領地の空気と外界の瘴気が入り混じるところでは、どちらの植物も育たなくなるため、外界の荒野は、見渡すかぎり何もない。
オレリアスは、それら外界の荒野を所在無く眺めながら、
(訳が分からない。)
と、ため息をついた。
本当なら、こんな櫓の上で見張りなどやるつもりはなかった。
クイがウテリア領にやってきた時点で、軍将の仕事は全部オフにするつもりだったし、今日は彼女がやってきて、初めての朝だ。旅の疲れも取れたろうから、今日一日、このウテリア領を案内してやるつもりでいた。
だが、今日の彼女は変だった。
オレリアスを見るなり、怯えたような目で半歩退いたのだ。
その上、オレリアスの誘いを「行きたくありません。」と突っぱねてきた。
彼女に何があったのか。
彼女の言い分を聞くと、まずは結界を整えさせてもらいたいらしい。その辺のところは、よく分かる。ウテリア領の結界は、たぶん、かなり危機的状況に違いない。だが、それを抜きにしても、やっぱり彼女は変だった。彼女の態度は、昨日と違って、とても冷たく、オレリアスが近づくと、顔をこわばらせて距離をとろうとした。
(俺が、何かしたんだろうか?)
昨日の彼女は、とても愛らしかった。
緊張に震え、魔獣に怯え、それでも懸命にウテリア領に尽くそうと、彼女はとても頑張っていた。そんな彼女に、こちらまで励まされていたというのに、それが、どうしてこうなってしまったのか。
いくら考えても、彼女の心境の変化は、理解できなかった。
まして、自分の言動を省みても、こちらに落ち度があるとも思えない。
(まったく……。)
オレリアスは、外界を見やりながら、ため息をついた。
(これだから、女というものは理解し難い。)