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2-9

ごめんなさい、金曜日投稿のつもりが操作間違って今日投稿してしまいました……!


すみませんが今週分はこれということでよろしくお願いしますorz

「ユースケ、いけないんだ。私を助けるって言ったのに、私以外の女に構ってばっかり。じゃ、そんなユースケにはお仕置きだね」

「なにを、結衣、うわあぁぁああああっ!?」


 ――――結論から言えば、それすらも俺の悪夢には効果をなしてはくれなかった。俺のイヤな予感は、図らずも当たってしまった。


 そのことを理解したのは、ミーシャと一日町の様々なところを回り、ゆっくりとした一日を過ごして満足に床についた後だった。


 夢の中に出てくる通学路が、桜並木が、結衣が、24時間置きに執拗に俺を責め立てる。自分を助けにこない俺を、その怠慢を責め立て、嘲い、最後は殺す。




 そしてその悪夢に、終わりなどなかった。


 ある日は叫び、ある日は脂汗に布団を濡らし、ある日は涙すら浮かべて、俺はただ毎日を過ごし続けた。


「毎日悪夢を見るんだったら、寝ないでみるっていうのはどう……かな?」


 ためらいがちにそう提案してくれたミーシャの言うとおりに試しに徹夜をしてみて、一日を無事に終えられた瞬間は確かに安堵した。


 だが、それも二日目以降のうたた寝をしている時間帯に脳裏にあの日の悪夢がちらつき始めた時点で恐怖を覚え、徹夜を諦めた。


「ねぇ」

「ユースケ」

「まだ?」

「早くしないと」

「私、」

「もう、」

「待てないよ――――」


 焼死。溺死。圧死。絞首。惨殺。毎晩毎晩繰り返される悪夢に、逆にこっちがあきれ果てるほどの死のバリエーション。


 夜な夜な繰り返される惨劇に俺の精神はむしばまれ、腐食され、日毎にその理性を溶かしていった。


 そして、その地獄が続くこと一ヶ月。


 精神の負担を減らそうとでも言うのか、無意識のうちに浅く短くなった眠りの中、もはや何度目かわからない死の直後、おぼろげな思考の中で俺がふとたどり着いた、一つの結論。



 ――――結衣を助ければ、この悪夢は終わる。


 ――――ならば、一刻の時間も惜しい。その方法を、なんとしても見つけだす。



 俺の思考回路がその答えをはじき出した瞬間から、俺は人体蘇生の魔法の入手――――すなわち、魔族からの魔法の強奪のため、動き出した。


 その目的は何だったのか。この世界にきた目的を達成し、結衣を救うためだったのか、はたまたこの地獄の終焉を、終演を望む俺の心の悲鳴を止めるためか。


 正直、今になってみれば思い出すのも難しい。


 覚えていることと言えば、その時俺が悪鬼羅刹か何かのごとく魔物をなぎ倒し、クエストをクリアしていく姿から『クエストキラー』なんて安直な二つ名を頂戴したことぐらいか。


 悪夢のせいで壊れかけの心を救うため、皮肉にも俺は人間としての心を捨てざるを得なかった。娯楽を捨て、感情を捨て、悲しみを捨てた。


 代償みたいに全身にのしかかる倦怠感や定期的に襲われる激しい頭痛

すらもねじ伏せて戦う俺の姿は、きっと人の目にとても醜く映ったに違いない。


 死にものぐるいでクエストをクリアし、防具を、武器を、魔法を強化する。それでも一向に届かない身体蘇生の手がかりに、俺は壊れた心のどこかに捨てたはずの絶望の感情が根ざすのを感じていた。





 …………でも。それでも。


 朝のこない夜がないように、俺はとあることが原因で救われることになった。周りからは不真面目になったと揶揄され、面倒を嫌う、人間味溢れる今の自分を取り戻すきっかけになった、その事件。


 それを今一度、振り返ってみよう。






「ユースケ、ほんとに大丈夫なの? 最近、ご飯もほとんど食べてないでしょ?」

「大丈夫。俺は、大丈夫だからさ」


 その時の俺は、果たして笑えていたか。


「ユースケお前、新入りの割にゃ最近よくがんばってるみたいじゃねぇか。〈勇者〉入りもあるんじゃねぇか?」

「あったらいいですね」

「人事みたいにいいやがって、お前なら十分ねらえるっつうの! なぁお前ら!」

「ほんとだぜ! ちったぁおこぼれに預かりたいもんだなっ! うわははっ!」

「…………人の心も知らねぇクセに」

「ん? ユースケ、今なんか言わなかったか?」

「いや、気のせいですよ。それよりこの間、新しいクエストがまた入ったって話を聞いたんですけれど……」


 その時の俺は、もしかしたら目的のためなら人を殺すことすら躊躇しなかったのではないか。


「おいユースケ、お前さん、まだあの悪夢見てんだろ?」

「……まぁ、そうだけど」

「普通、絶叫して目が覚めるような次元の悪夢を一ヶ月も見続けてあげく平気なはずがねぇだろ。周りの奴らがなんつってっかは知らねぇけどなぁ、お前、そのうちぶっ倒れっぞ?」

「ご忠告どうも。…………俺はまだ、倒れるわけにゃいかないんだよ」


 その時の俺は、他人の心配の言葉をないがしろにしていなかったか。



 今考えるだけで、そういう類の懸念はあげてみればキリがない。そう思えてしまうほど、当時の俺はせっぱ詰まっていたと思う。


 感情を押し殺し、親しかったはずの人間に、狂気の笑みでもって夜な夜な殺されるということが、俺の精神を完璧に狂わせていた。


「ユーくん、大丈夫なのですかぁ? なんだか、顔色が悪いですよぉ」

「大丈夫ですよ。あぁ、そういえば新しいクエストがきたって話を聞いたんですが」

「…………」


 魔法も数が増えた。装備も充実した。日本ではみじんもなかった戦闘技術だって、相当身に付いたはずだ。


 でも、かけがえのないものを失った。人としていきる心、感情を失った。擦り切れた心は悲鳴を上げる気力をなくし、傍目に見れば俺は落ち着いたように見えていただろう。


 実際の状況は、起きる度に叫んでいたよりもひどいことになっていたののだけれども。


「…………確かに、新しいクエストがいくつか掲示されていますぅ。ですが、ユースケさんには一つ、受けていただきたい依頼があるのですが

ぁ」

「……緊急の依頼、ですか」


その心を取り戻すきっかけは、思い出せばこのエミィとの会話にあったのかもしれない。


「そうですぅ。実はこの間ぁ、この町付近にある村で盗賊の被害が確認されたのですよぉ」

「となると内容は盗賊の殱滅ってとこですかね」

「そうですねぇ。ですが、規模が盗賊団と言うにはあまりに大きいですぅ。なにをネタにしているかは知りませんがぁ、何か秘密兵器みたいなものがあると見ていいですぅ」

「……なるほど。で、日時はいつですか?」

「はい。表立っては二週間後ということで告知していますぅ」

「…………表だって?」


 その言葉に疑問を覚えた俺がそういぶかしむ様子を見せると、エミィはジェスチャーで『内密に』と前置きしてから、小声で話しだした。


「ここだけの話ぃ、盗賊団に動きを察知されているような嫌いがありますぅ。なのでぇ、信用のできるメンバーのみで討伐対を組み、予定より前に奇襲をかけて潰しますぅ」

「…………そもそも、依頼という形で出さなければよかったんじゃ」

「最近流れで腕の立つ冒険者が何人もきているという話があったのでぇ、やや戦力不足の否めない私たちの戦力増強につながればと思いこうしたのですがぁ……ちょっと裏目に出ましたねぇ」


 そう言ってため息をつくエミィ。内部から情報を漏らされたとあれば、その心労は外部からの襲撃があるよりも溜まるものがあるのだろう。


「内通者の特定は?」

「実はできているのですがぁ、この一件のせいで今ギルド内は少し疑心暗鬼になりかけていますぅ。連携が大事な時だというのに、敵さんの作戦はある意味大成功ですねぇ」

「誉めてる場合じゃないっすよ。で、その日取りは?」

「明後日、なのですぅ。ご予定とかはありますか?」

「ないですよ。どっちにしてもクエストを受けてるだけですし」

「わかりましたぁ。では、明後日の明朝5時、出立します。『クエストマシーン』の二つ名、ちゃんと見せつけてくださいね」


 俺はそのとき、盗賊を討伐するというこのクエストにどのような心持ちで挑んでいたのだろう。


 未だかつて犯したことのない人殺しの禁忌に対する恐怖は――――なかった、と思う。それを感じるための心が、すでに擦り切れてしまっていたのだから。


 そして――――俺の運命の転換点、その当日。


 いつも通りに自分が結衣に殺される悪夢を見て無感動に目を覚まし、朝早くから町を出た俺たち討伐隊が向かった、その先にいたもの。


 俺は、そこで自分の心と向き合うことになる。






ちょっとテンポアップ&文章凝縮。このまま続くと予定通りにこの話が終われないのだぜ。

……プロット作らないからこうなるんだな、うん。


自分にとっては習作という扱いで書いているつもりですので、すみませんがテンポアップについてはご了承いただければと思います。


次作はちゃんとプロット作ってるし今のとこそんなに問題ないし……大丈夫……だと思いますよ? たぶん。

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