second6-手伝い-
「あほか!んなことしたらお前、精神が内部崩壊すっぞ!まずはくっ付いてる張りぼてを引っ剥がして、本体を叩き出す。手伝え!」
手伝え!?
どこをどうしろと!
少なくとも僕が手を出せるようなモンじゃないが…。
「そのグローブは基本的に粛正人の能力を一部コピーすることが出来るんだ。
…面倒くせぇから本当はしたくねぇんだが…
このさい仕方ねぇ!」
と。
そう言い終わるか否か、奴は。
高所恐怖症である僕を、あろうことか。
100mはある上空から。
「落としやがったあぁぁぁぁっ!?」
ちょっと待て!
それは!
それだけは!
こんな…こんな死に方だけは…!
「嫌だあぁぁぁっ!」
落ちる!墜ちる!
地面が近付いて、
僕の身体は血をぶちまけて四方に弾ける!
かと、
思いきや。
「…あ、あれ?」
僕は地面から数cmのところで停止していた。
それもその筈、僕は。
飛んでいたのだ。
「うわ!」
そう気付き足をガク、と振るうと、さらに身体は上へと昇った。
「…なんだ、これ…」
周りを見回したがしかし、アシェルのあの骨だけの細い腕はどこにもない。
…何故、飛べるんだ?
「おーい?死んでねぇかーっっ?」
と、僕を落としやがった癖に半端に心配している粛正人が上空から叫んだ。
この期に及んで…。
腹が立つので無視し、もう一度僕は周囲を見る。すると、異変に気付いた。
グローブが。
あの謎のグローブが、
光っている。
「…これは…」
なるほど、飛んでいるのは僕ではなくグローブだったのだ。どうりで手に違和感があった筈だ。これもアシェルの計らいなのだろう。
…それにしてもあいつ、一言位言って実行するとかしろよ…
「死んでねぇなら早く上がって来やがれー」
奴は丁寧な物の頼み方を知らないらしい。
「上がるったってやり方わかんないし…」
僕は、数m上の生意気な粛正人には聞こえていないことをわかっていながら呟いた。
これをどうしろと…
「今、足が地面に着いてると思って蹴ってみろー。お前みてぇな下手くそでも出来る筈だー」
…一言多いってのに。
僕は叫びたい気持ちを押さえ、言われた通りにした。
すると。
僕の身体は風に抵抗してすごい速さで浮上し、あっと言う間にアシェルがすぐそこに…
では無かった。
僕は、アシェルが目の前に来たかと思いきや通り過ぎてしまっていたのだ。




