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second5‐タワー‐


それにしても、ざっと見て何十個は居る。グローブをはめるまでもちろん気付かなかったが、その動きは凄まじく息が止まりそうなくらいだ。

粛正人であるアシェルは、この光景をいつも見ている、そして視ているのか…。

正直全く羨ましくない。

視ていたいなどとは思わない。

が。

「記憶、か…」

僕とこいつの感性は違うようなので、同情は無用だ。

アシェルはひょっとするとこの光景が嫌いではないのかもしれないし、第一僕を命の危険にさらした奴を、何故心配する必要がある?

…確かに僕って、卑屈だな…

「それから」

僕は気持ちの切り替えとばかりにアシェルに話し掛けた。

「聞き忘れてたけど、今僕らが向かってるのって…どこ?」

「あん?」

奴はすぐ返事を返す。

「んなもん決まってんだろ。ここをどこだと思ってる?東京じゃねぇか。東京と言えば…」

アシェルの指は、先程より目前に迫っていた、その建造物を示した。

「東京タワーだろ」

なるほど…

つまり、タワーに邪悪な記憶が停滞しているということか。

…あれ?

「…待った」

僕は身の危険を感じ、恐る恐る聞く。

「もしかして…僕は、削除のときも飛んでなきゃいけないわけ?」

「ったりめぇだろ。居るのはタワーの最上階だかんな」

その通り!?

つーか嬉しくねぇ!

「ちょっ…なんでだよ!僕は高い所苦手だって…」

力いっぱいの僕の抵抗を無視しやがったアシェルは、平然とそのまま飛んでいる。

ムカつく。

「くだらねぇこと言ってっと、もう着くぜ?」

「くだらねぇって…

…!?」

心底驚いた。

だって。

僕の想像力は、

こんなモノを考えられるほど、

豊かじゃあない。


それに人間の姿を求めても無駄な事が、すぐ分かる。

スッポンは月になれない。

かといって太陽も月とは程遠い。


化け物だ。

そいつは。


「ぅ…ぐごぁぁぁっっ」

東京タワーに居ると言われたが、これは居る、というレベルじゃない、

憑いていると言うべきだろう。

大き過ぎる…

それの顔と思しき部分には、目と鼻の境界なんて皆無だ。どろどろに溶けて、冷やしても固まりそうにない。

手は…どちらかというと触手に近いか。

やはりどろどろだ。

呻き声こそ出ているが、口が見付からない。あるいは、始めから無いのかもしれなかった。

「こっ…これを、僕の中に入れる…のか?」

…想像しただけで鳥肌が立つ…

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