second4‐グローブ‐
僕が住んでいるのは、情報という情報が交錯する街、東京だ。
しかし。
その東京が、記憶という記憶まで交錯していようとは…。
僕は半分意識を失いかけていたが、アシェルにきっちりと付き合わされている。
「あー忘れてた。お前、これ付けとけ」
と渡されたのは、何やら革生地のグローブだった。
「これがあれば、人間でも記憶が視えるようになるし、さらにそれに触ることも出来るっつう便利な代物だ。無くすんじゃねぇぞ、高ぇんだからよ」
そもそも僕は、命綱が化学繊維製の服だという恐ろしく奇跡的とも言える危機的状況を抜け出すため、先程からしっかりとアシェルの腕に掴まっていたので(もっともその状況を作り出したのは他でもないアシェルなのだが)、受け取るだけで一苦労だ。
「…で?これを付けて、僕はどうすれば良いんだよ」
「もち、それで自我のある記憶を掴まえるんだよ。少しは役に立つだろ」
…とことん自己中な奴だ…
僕は諦め半分苛々半分それを付ける事にした。
一見だぼだぼで、割と手の小さい僕にはサイズが合わないように見えたが、茶色いその生地に指を入れた時、何故かぴったりと張り付くように手と合わさったのだ。
いや、登場が浮遊シーンだった奴に常識なんて求めても無駄なことなのだろう。もちろんそいつにもらった物でも、だ。
しかし。
そんな生温いもので済む程、奴の現実離れは終わっていなかった。
「!!?」
そのグローブをはめた途端、僕は、
僕の目には。
ありえないコトが、
ありえていたのだ。
「くっ、うぁっ、ぉぉおっ!?」
縦横無尽に僕の周りを、何かが。
見えない何かが、
駆け巡っている。
「そいつが記憶だ」
アシェルは飛びながらも下にいる僕の方を向いて話し掛ける。
「一般にその辺に居る奴は割と善良な奴だかんな。削除の後に回収するぜ」
回収した善良な記憶を持ったまま邪悪な記憶を削除しに行くと、善良な記憶が取り込まれてしまうらしい。




