表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

second2‐粛正人‐


僕は。

僕はその光景に、尻餅を着いた。気圧されて、重力への抵抗が困難になったのだ。

死神は僕に気が付いたのだろう、こちらを向いた。

よく見ると顔は人間とそう変わりはない。その顔にはおかしな刺青をしていて、右頬にシャープ、左頬にフラットの記号が彫ってある。髪はとても奇妙で、左側がぼさぼさで黒く長髪、右側は整った、金色の短い髪だ。骨だけの部分も左の腕と脚だったことに気付いた。そう、そいつは真ん中で分けて、右側と左側が全く別なのだ。

死神は浮いたままでこちらに向かって来て、僕の前に着地する。


…殺される…


恐怖は無くても痛みはあるだろうと悟り、身体は自然に強張っていた。目がしっかりと閉じられ、歯を食いしばる。僕には走馬灯を作れる程の思い出は無いので、このまま楽に逝けるだろうと思った。


が。


「…お前…」

死神はその手に持つ鎌で僕の身体を八つ裂きにするかと思いきや、語りかけてきた。

「…もしかして、もしかしなくても、俺様が見えたりする訳?」


…?

何を言っているのか理解出来なかった。

お迎えじゃないのか?

僕は瞑っていた目をそっと開き、そいつを見た。


すると、状況を確認する暇も無く僕は言葉を失った。

鎌が。

死神の巨大な鎌が、僕の首にぴたりとくっつけられている。

「……!」

「ウンとかスンとか言えよ。見えてんだろ?」

…、

スン。

…いや、それはさすがにやめておこう。本気で首の危機だ。

「……誰、だ…」

緊張も最高潮に達し、うわずった声をやっとの事で絞り出した。

「…あ?

なんで俺様が先に自己紹介なんざしなきゃいかねーんだよ。自分からしろ自分から」

「…」

こいつ…。

「…僕は、僕だ」

「は?」

「だから、名前」

反応は人間と同じようなもんだった。こいつ馬鹿にしてるのか?とでも言いたげだ。

「…なんだかわからんが」

死神は続ける。

「そんなに構えなくても俺様は別にお前を殺しに来たわけじゃねぇ」

…。

少なくとも鎌を僕の首に当てている奴の言い草じゃないな…

「俺様はアシェルという。どうせお前は俺様の事を死神とでも思ってるんだろうが」

ぎく。

「違うぜ。俺様はな、

粛正人ってんだ」

…粛正人…?

いや、聞き覚えはないな…。

僕は黙って、尻餅をついたままの体制で死神…

もとい、粛正人アシェルを見上げた。

それ以前に、僕は何故こんな理解不能な物体と対話できているのだろう。


「粛正人ってのは、人間の時や記憶を刈る仕事だ。つっても、もちろんその記憶の所持者が居なくなったもの…つまり、死んだ人間の記憶だけだがな」

「死んだ人間の…記憶」

もしかすると僕は一度、死んだことがあるのかもしれない…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ