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second0‐プロローグ‐
「例えば、例えばの話だ」
奴はおもむろにそう言うと、何の躊躇もなく何のためらいもなく何の前触れもなく何の恐れもなく、僕に向かい口を開いた。「仮に、俺様がお前を殺したとしよう。その時―
お前の、俺様との記憶は自我を持つか?俺様を…殺すか?」
答えられる訳がない質問をするのが、奴の悪い癖だ。
でも。
あるいは。
僕はこの問題に、
いともたやすく簡単に迷う事無く答えられた、
…かもしれない。
「…………」
違うな。全く違う。
僕はきっと、選ぶのが怖いんだ。
選んでその上で、奴が僕をどうするか―
恐れている。
「…………」
奴は、何も言わない。
何も言わず、じっと僕を、その澄んだ金の瞳で見つめていた。
まるで。
そう、僕を地獄の底に、はたまた深い闇の奥に、
―墜とす様に。




