第9話 噂になる成果
辺境領での成果は、静かに、しかし確実に広がっていった。
「最近、あの部隊……やけに被害が少ないらしい」
「死人が出てないって話だぞ」
「嘘だろ? あそこ、問題児ばっかりだったはずだ」
酒場の隅で、そんな声が囁かれる。
最初は半信半疑。
だが、噂は数字に裏打ちされていた。
討伐成功率、上昇。
補給消耗、減少。
撤退判断、的確。
派手な武勲はない。
だが、失敗がない。
「……地味すぎて、逆に不気味だな」
誰かがそう評した。
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当の本人――レインは、いつも通りだった。
「次の任務は、ここまでで撤退します」
「もう少し行けそうだけど……」
「行けます。ですが、行かない方がいい」
理由は、説明される。
地形。
時間。
魔力残量。
感情ではなく、根拠。
「……了解」
誰も反論しなくなっていた。
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一方、王国直属部隊。
「報告書の修正、ここだ」
「え? また?」
作戦室には、疲労の色が濃くなっていた。
小さなミス。
補給のズレ。
判断の遅れ。
どれも単体では問題にならない。
だが、積み重なる。
「最近、失点が多いな」
「大事にはなってないだろ」
そう言い聞かせる声が、空回りしていた。
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ある日、ヴァルド辺境伯のもとに報告が上がる。
「王都方面から、視察の話が来ています」
「ほう」
ヴァルドは書類に目を通す。
「目的は?」
「……成功事例の確認、だそうです」
「名前は出ているか?」
「いえ。“現場判断が優秀”とだけ」
ヴァルドは、口元を歪めた。
「相変わらずだな」
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その夜。
簡易宿舎で、カイルがレインに声をかける。
「なあ……俺、強くなってますよね?」
「ええ。無理をしなくなりました」
「それだけ?」
「それだけです」
カイルは、しばらく考えてから笑った。
「……じゃあ、前は無理してたんだな」
「はい。死にかけていました」
「ひでえ」
だが、笑顔だった。
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噂は、やがて王都にも届く。
「辺境で、異様に安定した部隊がある」
「指揮官は誰だ?」
「名前は、表に出ていない」
誰かが、首をかしげる。
「……どこかで、聞いた話だな」
だが、その違和感は、すぐに流された。
まだ、結びつけるには早い。
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同じ頃。
レインは、机の上で新しい配置図を描いていた。
成果は出ている。
だが、まだ足りない。
(次は、もう一段上だ)
評価される場所では、
結果も、次の課題も、明確だ。
一方、王国直属部隊は――
**少しずつ、比較され始めていた。**
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