第85話 境界領域
境界観測室の空気は、まだ緊張で固まっていた。
意味崩壊領域は拡大を続けている。
外縁側の流れも荒れている。
このままでは、境界膜そのものが耐えられない。
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「境界を世界にする」
レオニスが、ゆっくりと繰り返す。
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「具体的には?」
カイナが問う。
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レインは境界構造の図を拡大した。
人類世界。
外縁世界。
その間にある、薄い膜。
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「問題はここだ」
レインは境界膜を指す。
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「今の境界膜は、ただの緩衝材だ」
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「衝突を遅らせるだけ」
アリエスが理解する。
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「そうだ」
レインが頷く。
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「だから壊れる」
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スクリーンの図が変わる。
境界膜が、厚い領域へと広がる。
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「膜ではなく」
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「領域にする」
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リオナが小さく言う。
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「場所…」
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Λが即座に計算を始める。
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「境界領域構築」
「理論上可能」
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レオニスが腕を組む。
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「意味の混合空間か」
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「そう」
レインが言う。
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「人類の意味」
「外縁の流れ」
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「両方が存在できる場所」
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アリエスが息を呑む。
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「意味中間層…」
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サエルが言う。
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「文明緩衝地帯」
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カイナはまだ納得していない。
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「それで崩壊は止まるのか」
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Λが答える。
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「衝突は減少」
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「だが」
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「安定条件あり」
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全員がΛを見る。
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「条件?」
レオニスが問う。
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「両文明の存在」
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沈黙。
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「つまり」
アリエスが言う。
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「人類と外縁存在が」
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「同時に存在する必要がある」
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リオナがエイドを見る。
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エイドは静かに揺れている。
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「境界」
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小さく言う。
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「通る」
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カイナが低く言う。
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「外縁存在をこちらに定着させるのか」
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「違う」
レインが首を振る。
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「境界に定着させる」
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レオニスが理解する。
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「中立地帯」
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「第四の場所」
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外縁と人類、
どちらでもない領域。
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Λが報告する。
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「境界膜負荷、上昇」
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「時間がない」
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意味崩壊領域がさらに広がる。
床が揺れ、壁の概念が歪む。
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レインはエイドを見る。
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「協力してほしい」
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エイドはしばらく沈黙する。
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外縁の流れが、ゆっくり揺れる。
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「境界」
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そして言う。
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「残る」
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その言葉に、全員が反応する。
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リオナが小さく微笑む。
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「ここに?」
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エイドは頷くように揺れる。
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「友」
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戦えない参謀は理解する。
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文明は、戦争で広がるのではない。
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領土でもない。
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**場所で広がる。**
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そして今、
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世界の歴史で初めて
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**境界という場所が生まれようとしていた。**
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