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第81話 友という概念

 境界観測室のスクリーンには、外縁の波形が映っていた。


 だがそれはもう、単なる揺らぎではない。


 点がある。


 いくつも。


 エイドと同じ位相構造。


---


「接触体、六」


 観測官が報告する。


「増加傾向」


---


 室内が静まり返る。


---


「……増殖しているのか」


 ゼルが低く言う。


---


「違う」


 Λが即座に否定する。


---


「新規生成」


---


 アリエスが前のめりになる。


「つまり」


---


「外縁側で概念個体が発生している」


---


 レオニスが小さく呟く。


「文明の萌芽だ」


---


 エイドがスクリーンを見る。


 揺れる輪郭が、少しだけ整う。


---


「友」


---


 その言葉に、誰もすぐには反応できなかった。


---


「友?」


 リオナが優しく聞く。


---


 エイドは小さく揺れる。


---


「似る」


「学ぶ」


「見る」


---


 Λが翻訳補助を行う。


---


「相互観測による概念収束」


---


「つまり」


 アリエスが言う。


---


「こちらを観測した結果」


---


「こちらに似た存在が生まれた」


---


 カイナが冷たく言う。


「感染だ」


---


 エイドが揺れる。


---


「違う」


---


 声がわずかに強くなる。


---


「友」


---


 リオナが微笑む。


---


「怖くないの?」


---


 エイドは少し考えるように沈黙する。


---


「怖い」


---


 だが、続ける。


---


「でも」


---


「一人」


「怖い」


---


 その言葉に、誰もすぐに言葉を返せない。


---


 サエルが静かに言う。


「孤立は構造崩壊を招く」


---


 Λが補足する。


「外縁側意味体系」


「集合構造弱い」


---


 つまり。


---


 外縁は流れの世界。


 個体も境界も弱い。


---


 だから。


---


 “友”という概念が必要だった。


---


 レインがスクリーンを見る。


---


「接触体六体」


---


 その波形は不安定だ。


 だが少しずつ整っている。


---


「向こうは」


 レインが言う。


---


「我々を見て」


---


「文明を学び始めている」


---


 カイナが言う。


「危険だ」


---


「文明は力だ」


---


「それを外縁に与えることになる」


---


 レオニスが低く言う。


「だが」


---


「文明は止められない」


---


 そのとき。


---


 エイドが境界膜に触れる。


---


 波紋が広がる。


---


「通る」


---


 その言葉と同時に。


---


 外縁側の六つの点が、


 ゆっくりと境界膜へ近づく。


---


 観測室が一瞬で緊張する。


---


「接触体、接近」


---


 カイナが言う。


「防御準備」


---


 だがレインは手を上げる。


---


「待て」


---


 スクリーンの波形は、攻撃ではない。


---


 揺れている。


---


 迷っている。


---


 そして。


---


 六つの存在が、


 境界膜の前で止まった。


---


 その瞬間。


---


 エイドが静かに言う。


---


「友」


---


 戦えない参謀は理解する。


---


 文明は制度で生まれるのではない。


---


 **関係で生まれる。**


---


 そして今、


---


 世界は初めて


---


 “他文明との友情”という


---


 未知の領域へ踏み込もうとしていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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