第78話 教えるという危険
外縁接触室には、重い沈黙が落ちていた。
エイドの言葉は短い。
だが意味は重かった。
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「境界」
「教えて」
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それは要求ではない。
懇願でもない。
必要条件の提示。
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カイナ・ロスフェルドが口を開く。
「却下だ」
迷いがない。
「文明干渉は最も危険な行為だ」
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「なぜ?」
アリエスが即座に反論する。
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「理由は三つ」
カイナは指を立てる。
「一つ。向こうの構造を壊す可能性」
「二つ。こちらの意味体系が崩壊する可能性」
「三つ。制御できない進化を生む」
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レオニスが小さく言う。
「三つ目が本命だな」
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「当然だ」
カイナは冷静に答える。
「文明の進化は制御できない」
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リオナが小さく言う。
「でも」
「もう壊れかけてる」
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エイドの輪郭が少し揺れる。
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「流れ」
「弱い」
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Λが補足する。
「外縁側意味構造の崩壊率、上昇」
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「どれくらいだ」
レオニスが問う。
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「長期予測不可」
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サエルが静かに言う。
「だが崩壊確率は高い」
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レインは何も言わない。
外縁波形を見ている。
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向こうは流れの世界。
境界が弱い。
意味が定着しない。
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こちらは逆だ。
境界が強すぎる。
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だから接触が起きた。
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「教えるのは危険だ」
レインが言う。
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全員が彼を見る。
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「だが」
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「教えなければ」
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「向こうは壊れる」
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カイナが言う。
「それは向こうの問題だ」
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沈黙。
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エイドが小さく言う。
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「こちら」
「境界」
「強い」
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「向こう」
「流れ」
「壊れる」
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リオナが呟く。
「ちょうど真ん中がないんだ」
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レオニスが言う。
「だから境界膜が機能している」
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Λが計算する。
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「仮説」
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「意味中間構造を構築すれば」
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「衝突は減少」
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アリエスが言う。
「つまり翻訳文明」
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カイナが冷たく言う。
「それは第四文明だ」
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誰も否定しない。
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三文明でも外縁でもない。
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境界文明。
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レインがゆっくり言う。
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「教えるのではない」
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全員が顔を上げる。
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「作る」
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エイドの輪郭が少し安定する。
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「境界」
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「共に」
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戦えない参謀は理解していた。
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文明は衝突しているのではない。
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まだ出会っていないだけだ。
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そして今、
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**第四の文明が生まれようとしていた。**
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