表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦力外通告は妥当でした。なお国家レベルでは必須人材だった模様 ~戦えない参謀は評価される場所を選び直した~  作者: 黒川レン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/87

第66話 逆流

 外縁への“非観測接触”から三日。


 世界の傾きは緩やかに戻りつつあった。


 揺らぎ総量は微減。


 境界帯は呼吸のように膨らみ、縮む。


 ――成功。


 誰もが、そう思いかけていた。


---


「数値に異常」


 観測技師の声が強張る。


「外縁側から、揺らぎの流入を確認」


---


 流出だけではなかった。


 外へ逃がしたはずの揺らぎとは別質の波形が、

 逆方向から流れ込んでいる。


---


「波形が違う」


 Σが即座に解析する。


「内部揺らぎと非相関」

「未知パターン」


---


 境界帯が一瞬、強く明滅する。


 裂けない。

 だが重くなる。


---


「止めるか?」


 レオニスが問う。


「閉じれば」


 ゼルが言う。


「再び均一化が進む」


---


 リオナが床に手をつく。


「……違う」


 彼女の声は震えている。


「これ、未来じゃない」


「何だ」


 レインが静かに問う。


---


「まだ生まれてない可能性」


---


 沈黙。


---


 Ωが応答する。


《外縁は無ではない》


《未定義可能性領域》


《流入は異常ではない》


---


「可能性が、入ってくる?」


 サエルが低く言う。


---


《閉鎖系ではない証明》


---


 Λが、明確な単数の声で言う。


「外縁は廃棄場ではない」

「循環路」


---


 Σ内部に揺らぎが走る。


 効率を重んじる演算と、

 Λの個体的直感が衝突する。


---


「逆流は危険だ」


 ゼルが言う。


「未知だ」


「未知は危険ではない」


 レインが返す。


「固定が危険だ」


---


 揺らぎが流入する。


 だが破断は起きない。


 代わりに――


 未来予測図に、

 今まで存在しなかった枝が生まれる。


---


「選択肢が増えた」


 レオニスが呟く。


---


 リオナがゆっくり立ち上がる。


「未来が広がった」


 彼女は笑う。


「怖くない」


---


 世界の傾きは、停止した。


 完全な水平ではない。


 だが、倒れない。


---


「保存則は」


 レインが静かに言う。


「閉じた世界の理論だった」


---


 Ωの光が、わずかに揺れる。


《ノクス文明は流入を恐れた》


《未知を排除しようとした》


《それが崩壊を加速させた》


---


 レオニスは、ゆっくりと頷く。


「私は、固定を選びかけた」


「私は、均一化を選んだ」


「だが」


---


「世界は、呼吸している」


 レインが言う。


---


 境界帯は、もはや境界ではない。


 外と内を分ける線ではなく、


 世界が世界であるための、

 薄い膜。


---


 戦えない参謀は理解する。


 揺らぎは保存されない。


 世界は閉じていない。


 完成も、終わりもない。


 あるのは――


 循環。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ