第34話 戦争は終わらない
世界は、静かになった。
だが――
平和になったわけではない。
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国境地帯では、今日も小競り合いが起きている。
「衝突、発生」
「規模は?」
「軽微です。すでに沈静化しています」
報告は、淡々としていた。
かつてなら、
その一件だけで軍が動き、
緊張が連鎖していた。
今は、違う。
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「拡大の兆候は?」
「ありません」
「なら、様子見で」
判断は、早い。
だが、前に出ない。
それは臆病ではなく、
**選ばれた慎重さ**だった。
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それでも、犠牲はゼロではない。
斥候が負傷し、
補給兵が命を落とす。
小さな死は、
確実に積み重なる。
戦争が終わったと、
誰も言えない理由だ。
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ヴァルケイン連邦では、
再編が進んでいた。
「先制行動の頻度を下げる」
「……だが、完全にはやめない」
イリオスは、冷静に判断する。
世界基準を理解しながらも、
国家基準を捨てない。
それもまた、正しい。
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「結局、何も解決していないのでは?」
誰かが、そう呟いた。
その問いは、
多くの者の胸に浮かんでいた。
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辺境領。
セシリアが、静かに言う。
「完全な解決を期待すると、
失望しますね」
「はい」
レインは、頷いた。
「戦争は、
人が選択をする限り、消えません」
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「それでも、やった意味は?」
ヴァルドが、率直に問う。
レインは、少し考えてから答えた。
「大戦が、起きていません」
「……確かに」
「それだけで、十分です」
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地図の上では、
緊張線が減っている。
完全に消えたわけではない。
だが、
重なり合って暴発することはなくなった。
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夜。
遠くで、火が灯る。
それは、戦火かもしれない。
焚き火かもしれない。
世界は、まだ不完全だ。
だが、
壊れやすい状態ではなくなっていた。
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レインは、窓の外を見つめて思う。
(戦争は終わらない)
だが、続けて考える。
(だからこそ、
終わらせないための設計が必要だ)
完全な平和はない。
それでも――
**破滅を避ける道は、確かに存在していた。**




