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戦力外通告は妥当でした。なお国家レベルでは必須人材だった模様 ~戦えない参謀は評価される場所を選び直した~  作者: 黒川レン


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第3話 追放会議

 王城内、関係者以外立ち入り禁止の会議室。

 重厚な扉が閉じられ、外界の音が遮断される。


 そこに集められたのは、王国直属部隊の指揮官と、数名の上層部。

 そして――レイン・アルヴェルト本人。


 場の空気は、最初から決まっていた。


「本日の議題は一つだ」


 中央に座る貴族が、淡々と告げる。


「レイン・アルヴェルトの処遇について」


 レインは黙って立っていた。

 感情を表に出すこともなく、視線も動かさない。


「結論から言おう」


 別の男が書類をめくる。


「次期作戦より、君を部隊から外す」

「……」


「理由は明確だ。戦力評価基準に合致しない」


 その言葉に、バルドが満足そうに頷いた。


「当然だな。現場じゃ、戦えない奴は足手まといだ」

「バルド、発言は許可されてからだ」


 グレインが制すが、視線は重い。


「だが、意見としては同じだ。今後の作戦は激化する。即戦力を削る余裕はない」


 レインは、静かに頷いた。


「妥当な判断だと思います」


 その一言に、室内がわずかにざわつく。


「……反論はないのか?」

「ありません」


 即答だった。


「俺は剣も魔法も平均以下です。個人戦闘力で評価されれば、最下位でしょう」


 事実を述べているだけの口調。

 弁明でも、皮肉でもない。


「しかし――」


 その時、声を上げたのはセシリアだった。


「彼の関与した作戦の成功率をご存じですか?」


 彼女は一歩前に出る。


「被害率、補給遅延、撤退判断。そのすべてが、平均値を大きく下回っています」

「数字の話は聞いた」


 上層部の一人が遮る。


「だが、それは“個人の戦闘力”ではない」

「ええ。だからこそ問題なのです」


 セシリアは引かなかった。


「彼は“今”の戦力ではありません。ですが、“未来”を作る人材です」

「将来性で戦争は勝てない」


 冷たい一言。


「必要なのは、今すぐ敵を倒せる者だ」


 沈黙が落ちる。

 誰も、セシリアの言葉を否定しきれない。

 だが同時に、誰も受け入れない。


「……以上だ」


 議長役の貴族が、結論を告げる。


「レイン・アルヴェルトは、本日をもって契約解除。異議は認めない」


 それで終わりだった。


---


 会議室を出た後、グレインが足を止める。


「……すまない」


 背中越しに、そう言った。


「君の働きが無駄だったとは思っていない」

「わかっています」


 レインは振り返らない。


「あなたの判断は、組織として正しい」


 その言葉が、逆に胸を刺した。


「レイン……」

「ただ」


 彼は一度だけ、グレインを見た。


「評価基準が違った。それだけです」


 それ以上、言葉はなかった。


---


 廊下の先で、セシリアが立っていた。


「……ごめんなさい」


 絞り出すような声。


「止められなかった」

「いえ」


 レインは穏やかに首を振る。


「あなたは、やるべきことをしました」

「でも……」


「十分です」


 短い言葉だったが、嘘はなかった。


 セシリアは、唇を噛みしめる。


「……必ず、証明します。あなたが間違っていなかったことを」

「その必要はありません」


 レインは微笑んだ。


「正しかったのは、彼らです。“今”においては」


 そして、静かに背を向ける。


 誰も引き止めなかった。


---


 その夜、王国直属部隊は祝杯を上げていた。


「余計なものが減って、動きやすくなったな」

「これで成果も上がるだろ」


 笑い声が響く。


 だが、その場にいない一人の存在を、

 誰も数えようとはしなかった。


 まだ――

 失われたものの重さを、知らないからだ。



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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