表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦力外通告は妥当でした。なお国家レベルでは必須人材だった模様 ~戦えない参謀は評価される場所を選び直した~  作者: 黒川レン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/87

第27話 戦えない参謀の役割

 辺境領の執務室は、いつもより静かだった。


 地図が広げられ、

 各国の軍勢と交易路、難民の流れが、

 細い線で書き込まれている。


「どこも、防衛線を前に出していますね」


 ヴァルドの言葉に、レインは頷いた。


「ええ。

 最も被害が少なくなる位置です」


「……つまり、正解だ」

「国家単位では」


 レインは、線の交差点に視線を落とした。


---


「皆、正しい判断をしている」


 その声に、非難はない。


「危険があれば備える」

「補給が不安なら、確保する」

「守れる命を、確実に守る」


 どれも、否定しようがなかった。


「なのに」


 ヴァルドは、眉をひそめる。


「世界は、悪くなっている」

「はい」


 レインは、淡々と答える。


---


「問題は、人ではありません」


 彼は、地図の端に小さな円を描いた。


「判断基準です」

「基準?」


「各国が、

 “自国だけ”を評価単位にしている」


 円が増えていく。


「国家単位で最適化すれば、

 当然、衝突は起きます」


---


「では、どうすれば?」


 ヴァルドの問いは、

 切実だった。


 レインは、少しだけ考える。


「評価単位を、変える必要があります」

「……世界、か」


「いいえ」


 首を振る。


「いきなり世界単位では、

 誰も受け入れません」


---


 レインは、別の紙を取り出した。


 そこには、簡素な図が描かれている。


「戦争を止める設計が、

 そもそも存在していないのです」

「止める、設計?」


「はい」


 淡々と、続ける。


「今あるのは、

 “勝つための設計”と

 “守るための設計”だけです」


---


「止めるための設計は、ない」


 ヴァルドは、ゆっくりと理解する。


「だから、正しさが重なるほど、

 止まらなくなる」


「その通りです」


---


 沈黙が落ちる。


 やがて、ヴァルドが言った。


「……お前がやるのか」

「ええ」


 迷いはなかった。


「戦えない参謀の役割は、

 敵を倒すことではありません」


 レインは、静かに言う。


「戦わなくて済む判断を、

 先に用意することです」


---


「だが、それは」


 ヴァルドは、苦笑する。


「誰にも評価されない仕事だ」

「はい」


 即答だった。


「成功すれば、

 何も起きませんから」


---


 その夜。


 レインは、一人で書類を書いていた。


 軍縮案。

 補給共有案。

 先制行動の制限条件。


 どれも、派手さはない。


 だが、一つ間違えば――

 世界が傾く。


(評価されるかどうかは、問題ではない)


 彼は、ペンを走らせる。


(必要かどうかだ)


---


 窓の外では、

 遠くの国境で、火が揺れていた。


 まだ小さい。

 だが、確実に増えている。


 レインは、その光を見つめながら、

 静かに呟いた。


「……戦えない参謀の仕事は、

 いつも、遅すぎると思われる」


 そして、続きを書く。


 それでも、

 **誰かがやらなければならない仕事だった。**



本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ