第22話 解体
王都に、通達が回った。
簡潔で、感情の入り込む余地のない文章だった。
> 王国直属部隊は、
> 組織再編の一環として解体する。
> 人員は各地に再配置し、
> 指揮系統は分散する。
それだけだ。
処罰も、糾弾もない。
だが――戻る場所も、もうない。
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「……解体、だそうだ」
詰所で、誰かが呟いた。
怒号は上がらない。
机を叩く音もない。
皆、薄々わかっていたからだ。
「遅かれ早かれ、こうなると」
「……ああ」
敗北の実感は、
怒りよりも先に、諦めを連れてきた。
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グレインは、最後の指示書を手に取っていた。
「部隊長職、解除」
「地方配属、予定」
肩書きが、消えていく。
代わりに残ったのは、
名前と階級だけだった。
「……俺たちは」
声が、かすれる。
「組織だったんだな」
「え?」
部下が顔を上げる。
「いや……個人の集合体に、戻っただけか」
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同日。
中央評議院。
「これで、整理は完了しました」
国家監査官アーデル・クロウゼンが報告する。
「責任者の処罰は?」
「不要です」
即答だった。
「不正はありません」
「誤りは、制度側にありました」
誰も、反論しなかった。
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「では、今後は?」
議長が問う。
「中核は、辺境伯管轄下」
「判断基準は、
レイン・アルヴェルトの設計を標準とします」
その名前に、
今や誰も異議を唱えない。
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一方、辺境領。
「終わったそうです」
ヴァルドの報告に、
レインは静かに頷いた。
「そうですか」
「……何も、感じないか?」
問いかけは、率直だった。
「感じています」
レインは、少し考えてから答える。
「ただ、
それが怒りでも、喜びでもないだけです」
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夜。
辺境の訓練場。
新たに再配置された兵たちが、
静かに準備をしている。
元王国直属部隊の者もいた。
肩書きは、同じ兵士。
立場の差は、もうない。
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レインは、その様子を見つめながら思う。
奪ったわけではない。
壊したわけでもない。
**選ばれなかった結果が、
形になっただけだ。**
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国家記録の最後の頁に、
一文が記された。
> 王国直属部隊は、
> 任務を終えた。
それは、
誰かを断罪する言葉ではない。
ただ――
**終わりを宣言する言葉**だった。
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