第20話 選ばれる側、選ばれなかった側
最終決定は、静かに下された。
中央評議院の議場で、
国家監査官アーデル・クロウゼンが結論を読み上げる。
「国家戦略案件の設計および判断権は、
今後すべて、辺境伯管轄下に集約します」
ざわめきが起こる。
「王国直属部隊は?」
「補助運用枠とします」
言葉は淡々としていた。
だが、その意味は明確だ。
**主導権は、完全に移った。**
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「理由は?」
形式的な問い。
「最適だからです」
アーデルは、即答する。
「感情論ではありません」
「忠誠心でもありません」
「成果です」
それだけで、十分だった。
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同日。
辺境領には正式文書が届いていた。
「国家戦略補佐官、レイン・アルヴェルト」
ヴァルドは、紙を読み上げる。
「権限範囲は?」
「作戦設計、撤退判断、配置調整」
「……ほぼ、全部だな」
レインは、静かに頷く。
「責任は?」
「当然、こちらに」
それも、迷いなく。
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一方、王国直属部隊。
「次の任務は、補助だそうだ」
報告が落ちる。
「……補助?」
「主導は、辺境」
言葉が、理解されるまでに時間がかかった。
誰も怒鳴らない。
誰も抗議しない。
それが、現実だった。
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「俺たちは、選ばれなかった」
誰かが、ぽつりと呟く。
否定は、なかった。
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夜。
王都の一角で、グレインは一人、書類を見ていた。
そこには、自分たちの評価が記されている。
「安定性:中」
「柔軟性:低」
「代替性:高」
最後の一行で、手が止まる。
「……代替できる、か」
それは、
必要とされないことと、ほぼ同義だった。
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同じ夜。
辺境領の執務室。
「おめでとう、とは言わん」
ヴァルドが言う。
「重くなっただけだ」
「ええ」
レインは、書類を閉じる。
「ですが、
判断基準が一本化されました」
「それが、望みだったか」
「はい」
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翌朝。
国境付近で、新たな作戦が始動する。
主導するのは、辺境側。
補助として配置されるのが、王国直属部隊。
同じ国の兵士。
同じ目的。
だが、立場は違う。
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国家監査官アーデルは、
最後に一文を記録に残した。
> 選定は完了した。
> 以後、変更の必要は認められない。
それは、
誰かを罰する文章ではない。
ただ――
**現実を確定させる文章**だった。
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その日を境に、
王国では誰もが理解した。
戦場では、
声の大きさでも、過去の栄光でもない。
**選ばれるかどうか**だけが、
すべてを決めるのだと。
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