第19話 代替不能という結論
再編成後の王国直属部隊は、必死だった。
人数は揃っている。
装備も悪くない。
失敗を繰り返したわけでもない。
「配置を見直せ」
「判断を早めろ」
「無駄な戦闘は避けるんだ」
グレインは、以前よりも慎重だった。
感情で動かない。
命令も、理屈を通す。
――努力は、確かにしていた。
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だが、結果は変わらない。
「……また、消耗が多い」
「被害は軽微だが、想定より上だ」
「撤退判断が、どうしても一拍遅れる」
致命的ではない。
それが、かえって残酷だった。
“悪くない”という評価は、
“最適ではない”という意味だからだ。
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国家監査官アーデルは、
その様子を黙って見ていた。
「再編後の数値が出揃いました」
中央評議院に、
新たな資料が提出される。
「改善は、確認できます」
「……ならば」
期待を含んだ声。
「代替は、成功したと?」
アーデルは、首を横に振った。
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「改善した、という事実と」
「代替できた、という結論は」
「一致しません」
淡々と、続ける。
「同条件での比較を行いました」
「参謀設計ありの場合」
「参謀設計なしの場合」
結果は、はっきりしていた。
「前者は、被害抑制と抑止が成立」
「後者は、戦闘を減らせていない」
言葉を選ばない。
「**代替は、失敗しています**」
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「だが……」
誰かが、なおも食い下がる。
「時間をかければ」
「慣れれば」
「いずれは」
アーデルは、その可能性を否定しなかった。
「ええ。
“いずれ”は」
そして、静かに続ける。
「しかし国家が求めているのは、
“いずれ”ではありません」
沈黙。
「**今、最適であること**です」
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結論は、もはや形式的だった。
「レイン・アルヴェルトの能力は、
特定個人に依存するものではありません」
「……?」
「運用思想そのものです」
「だからこそ」
アーデルは、断じる。
「**他者では再現できない**」
代替不能。
その四文字が、
重く落ちた。
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王都の一室で、
グレインは報告書を読み終えた。
努力した。
学んだ。
慎重になった。
それでも、届かなかった。
「……俺たちは」
声が、かすれる。
「正しくなろうとして、
正しい場所を失ったのか」
答えは、返らない。
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一方、辺境領。
「国家側の最終評価です」
ヴァルドの言葉に、
レインは目を上げる。
「“代替不能”だそうだ」
「そうですか」
淡々とした反応。
「驕らないのか?」
「基準が明確になっただけです」
彼は、静かに言った。
「必要とされる仕事を、
必要とされる場所で
続ける。それだけです」
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その夜、
国家記録に、新たな注記が加えられた。
> レイン・アルヴェルトの運用設計は、
> 現時点で代替不能である。
短い一文だった。
だがそれは、
元組織にとって――
**取り返しのつかない結論**だった。
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