表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦力外通告は妥当でした。なお国家レベルでは必須人材だった模様 ~戦えない参謀は評価される場所を選び直した~  作者: 黒川レン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

第16話 選ばれない側

 国家監査官アーデル・クロウゼンが王都に到着したのは、

 雨の降る朝だった。


 出迎えは最小限。

 形式的な挨拶だけが交わされる。


「歓迎の用意は不要です」


 彼は淡々と言った。


「必要なのは、資料と事実だけですから」


 その言葉に、誰も反論しなかった。


---


 中央評議院。

 過去一年分の戦況資料が、机の上に積まれる。


「被害が減っています」

「だが、理由が説明できない」


 貴族の一人が言った。


 アーデルは、無言で書類をめくる。

 指先の動きは正確で、迷いがない。


「説明は可能です」


 そう言って、視線を上げた。


「ただし、感情を排除してください」

「……どういう意味だ?」


「誰が悪いか、ではありません」


 アーデルは淡々と続ける。


「**どこが利益を生み、どこが損失を生んだか**。

 それだけを見ます」


---


 最初に示されたのは、辺境部隊の記録だった。


「死亡率、ゼロ」

「補給消耗、平均より三割低下」

「撤退判断、全任務で適正」


 数字が並ぶ。


「次に、王国直属部隊」


 空気がわずかに張り詰めた。


「死亡率、上昇」

「補給消耗、想定超過」

「判断遅延、複数確認」


 誰かが言い訳をしようとして、口を閉じた。


 数字が、すでに語っている。


---


「重要なのは、タイミングです」


 アーデルは、資料の一部を指で叩いた。


「この差が生まれ始めたのは――

 **参謀交代の直後**」


 沈黙。


 誰も、名前を口にしない。


---


「当時の判断を再確認します」


 今度は、追放決定時の資料。


「レイン・アルヴェルト」

「個人戦闘力、低」

「即戦力評価、不可」


 アーデルは、静かに頷いた。


「判断自体は、基準上正しい」

「……では」


 安堵の息が、わずかに漏れる。


---


「しかし」


 一語で、空気が変わった。


「判断は、**修正される前提でのみ合理的**です」

「……」


「結果が出始めた時点で、

 評価基準を再検討しなかった」


 アーデルは、資料を閉じる。


「それにより、国家は損失を被りました」


---


「損失……?」


 誰かが、声を絞り出す。


「人的損耗」

「補給浪費」

「戦力運用効率の低下」


 一つ一つ、淡々と告げられる。


「これは失敗ではありません」

「**放置です**」


---


 その結論は、冷酷だった。


「よって、次期国家重要任務において、

 **王国直属部隊は選定対象外**とします」


 言葉が、理解されるまでに数秒かかった。


「……待て」


 誰かが立ち上がる。


「それは、どういう――」


「選ばれない、という意味です」


 アーデルは、淡々と答えた。


---


 同時刻。

 辺境領。


「国家案件への正式協力要請です」


 ヴァルドの言葉に、レインは目を上げた。


「主導ではなく、設計補助」

「十分です」


 彼は、そう答えた。


 必要とされる場所は、もう明確だった。


---


 王都では、まだ理解が追いついていなかった。


 自分たちが

 **叱責されたわけでも、罰せられたわけでもない**ことに。


 だがそれこそが、最も残酷な宣告だった。


 ――必要とされていない。


 それだけで、すべてが決まってしまう世界がある。


 そして今、

 **選ばれる側と、選ばれない側が、完全に分かれ始めていた。**



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ