第15話 正しかった判断の代償
戦況報告会から数日後。
王都では、水面下で動きが加速していた。
「辺境の運用方式を、正式に参考事例として採用したい」
「部分的に、だがな」
「全面導入は、反発が大きい」
中央評議院では、そんな議論が交わされていた。
誰も、もはや成果そのものを否定しない。
否定できないほど、数字が揃っていたからだ。
「問題は……誰が、それを支えているかだ」
その問いに、沈黙が落ちる。
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「やはり、レイン・アルヴェルトか」
名前が出た瞬間、空気が一段重くなる。
「辺境伯の背後にいる参謀」
「直接戦えないが、戦争を減らす男」
評価は、すでに定まっていた。
だが――。
「公式に認めれば、我々の判断が誤りだったと認めることになる」
「だが、使わねば国が損をする」
板挟み。
結論は、先送りされた。
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一方、辺境領。
「正式に、国家案件の補助参謀を任せたいそうだ」
ヴァルドの報告に、レインは目を上げた。
「肩書は?」
「“辺境伯付き特別顧問”だと」
「……曖昧ですね」
「そういうことだ」
ヴァルドは苦笑する。
「王都なりの、妥協案だ」
「断ります」
迷いはなかった。
「条件が整っていません」
「だろうな」
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同じ頃。
王国直属部隊。
「次の大規模作戦、参加は見送りだそうだ」
その一言で、空気が凍った。
「……なぜだ」
「理由は、“安定性不足”」
グレインは、静かに拳を握る。
否定できない。
それが、何より重かった。
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夜。
辺境の執務室で、レインは一人、書類を整理していた。
評価は、もう十分だ。
だが、選択はまだ終わっていない。
(彼らは、まだ“戻せる”と思っている)
その認識こそが、最大の誤算だった。
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数日後。
王都から、再度の打診が入る。
「条件を再検討したい」
「直接会談を――」
レインは、静かに首を振った。
「必要ありません」
「理由を、伺っても?」
彼は、少し考えてから答えた。
「追放は、正しい判断でした」
「……」
「少なくとも、“あの時点”では」
そして、続ける。
「ただし――」
一拍置いて。
「その判断は、未来まで考慮していなかった」
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その報告を受けた評議院で、
誰かが、ぽつりと呟いた。
「……もう、選ばれないのか」
「違う」
別の声が返す。
「**最初から、選ばれる側ではなかっただけだ**」
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辺境の夜は、静かだった。
レインは、窓の外を眺めながら思う。
自分は、何も奪っていない。
何も壊していない。
ただ――
**評価される場所を、選び直しただけだ。**
それが、どれほどの代償を残したかを、
王都が本当に理解するのは――
まだ、少し先の話だった。
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