第13話 再評価という名の躊躇
王都、中央評議院。
長机を囲む貴族たちの表情は、いつになく重かった。
「被害が減っている」
「例年より、明らかにだ」
机の上には、最新の戦況報告書が並んでいる。
数字は、正直だった。
「主力部隊の戦果では説明がつかない」
「だが、辺境部隊だけでこの結果は……」
誰かが、言い淀む。
「……いや。思い当たる節はある」
そう切り出したのは、年配の貴族だった。
「レイン・アルヴェルトだ」
「……追放した参謀か」
「彼がいた頃、被害は少なかった」
空気が、わずかに揺れた。
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「だが、彼は戦えない」
すぐに反論が出る。
「個人戦闘力は最低評価」
「今さら呼び戻せば、判断ミスを認めることになる」
沈黙。
誰も、“間違っていた”とは言わない。
言えない。
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「一度、再評価という形で……」
控えめな提案が出る。
「正式復帰ではなく、助言役として」
「……それなら、体裁は保てる」
だが、別の声が被さった。
「しかし、それで彼は戻るのか?」
「……」
答えは、誰の胸にもあった。
戻らない。
評価基準が変わらない限り。
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「では、代替案は?」
議長が問いかける。
「新しい参謀を立てる」
「育成枠を増やす」
「分析官を増員する」
どれも、時間がかかる。
そして、どれも――
**すでに“失ったもの”の代わりにはならない。**
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その頃、王国直属部隊。
「……また、任務が軽いな」
グレインは、違和感を覚えていた。
以前なら、真っ先に投入されていた作戦に、
今回は呼ばれていない。
「評価が下がっている、ということか」
「……否定できないな」
部下たちも、気づき始めていた。
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数日後。
王都から、辺境伯に打診が入る。
「辺境の安定運用について、意見を伺いたい」
「視察か?」
「非公式で」
ヴァルドは、短く笑った。
「……来たな」
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同時刻。
レインは、報告書に目を通していた。
王都からの、間接的な問い合わせ。
「再評価、ですか」
ヴァルドの視線が向く。
「どうする?」
「応じません」
即答だった。
「条件が曖昧すぎます」
「だろうな」
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王都では、まだ気づいていない。
彼らが議論しているのは、
**“取り戻せるかどうか”**ではなく、
**“認められるかどうか”**だということに。
その差が、
すでに致命的であることにも。




