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異世界アジノ乇卜  作者:
君のための新食感

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33/40

【SIDE テレコ】誤算

 テレコが諜報院に仕事を依頼した翌日は前回召喚を行ってから三十日目だった。

 つまり、この日から再び召喚魔法を使えることを意味する。


 そのとき召喚した男は勇者と呼ぶには線が細すぎる上に、使える魔法も手のひらから白い粉を出すという本当にどうしようもないスキルだった。その割に自分が魔王を倒すのだと燃える姿には白けたし、その軽薄さも含めてなぜ魔法が彼を選んだのかテレコには理解できない。


 だからこそ、その男はロードウルフの住まう森に連れていった。ロードウルフはSランク冒険者でも手を焼くダンジョンのボスであり、仮に彼が有能だったとしてもこの世界にやってきてすぐにロードウルフを倒すことは不可能だ。


 つまりテレコの処置は、処分である。


 召喚魔法には準備が重要だ。

 魔力を溜めに溜め、尚且つ気力を最大限高める必要があり、一度行うとひと月ほど空けなければならないのもそのため。


 城の空き部屋の床いっぱいに魔法陣を描き、窓は閉め切って使用人もこないように伝える。


 テレコが戦士を選ぶことはできない。

 なぜなら戦士は魔法に選ばれるものだから。


 それでもテレコは少しでも強く、魔王討伐の戦力になり得る戦士が召喚されることを願いつつ、長く複雑な詠唱を開始した。


 テレコの言葉は魔力と混じりあい、時空を歪めるように世界へと干渉する。自分がもっと大きな何かになったような、大地になるかのような、大空になるかのような、あるいは神にさえになったかのような偉大なる快感とともに。


 その広大な拡張感覚を泳ぎ、テレコは別の世界に繋がる(ゲート)の気配を探す。

 下手をすれば意識を失いかねないほどのより強大な何かに干渉されながら、テレコは別の世界に繋がる(ゲート)の気配を探す。

 貴族でありカラーブラッドとして生まれた天命に対する責任感と世界に名を轟かせたいという純粋潔白な自意識に区別がつかなくなりながらも、テレコは別の世界に繋がる(ゲート)の気配を探す。

 

 テレコは別の世界に繋がる(ゲート)の気配を探す。

 別の世界に繋がる(ゲート)の気配を探す。

 繋がる(ゲート)の気配を探す。

 (ゲート)の気配を探す。

 気配を探す。

 探す。


 ——そして、テレコはその異変を受け入れることにした。


「……(ゲート)の気配が……ない」


 集積世界コンバレトに繋がる様々な異世界の気配。

 別の世界は通常認識できないが、認識し、尚且つ移動可能な(ゲート)を開くことこそが召喚魔法である。


 魔力もたっぷり充満しており、精神的にも充実している。

 そして、半日かけて部屋は魔法陣で埋め尽くした。


 完璧なはずだった。

 何が起こっているか理解ができなかった。


 頭が真っ白だった。


「あいつが生きてるんだぬ」


 だから、メビルリムザの言葉が理解できなかった。


「いき……てる?」

「そうだぬ。テレコが召喚したあの男が、まだどこかで生き残っているんだぬ」

 

 やっと頭が正常に働き始め、テレコの頭に浮かぶ腑抜けた表情。

 あの男が?


 ロードウルフの住まうあのダンジョンから脱出した?

 だとしたら彼のスキルは、それなりに有用なものだったということだろうか。再びパーティへのスカウトが必要かもしれない。


 しかし、そんなことはあり得るか?

 テレコの感覚からすれば、彼は戦士としての戦闘力もたかがしれており、しかもハズレスキルだった。

 

 ——手段を選んではいけないよ。君が世界を救うんだよ


 能力があるのであれば、それはそれでいいだろう。


 そうだろうか。

 そんなことがあり得るだろうか。


 もし、そうでないのであれば。


 テレコが世界を救う。

 その障害になるのであれば、それは取り除く必要がある。


 いまはサラサの問題もあるというのに面倒な話だ。しかし、本質は変わらない。もし邪魔するものがあるのであれば、どんな手段を使っても排除するのみなのだから。


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