【SIDE テレコ】心の声
——君が勇者となって世界を救うんだよ
テレコの頭の中に不思議な声が響き渡る。
声は昔から頭を満たし、それは彼女の迷いを吹き飛ばして行動の推進力へと変わる。物心つく頃からその声は聞こえ、もはや自分の思考の一部となるほど同化している。
テレコは自分が特別だと知っていた。
だからこそ自分はミーチュリアの第一王女として生まれ、それには相応の責任が付き纏うことも理解できた。
テレコは勉学にも武道にも、あるいは魔法にも優れ、そして十五歳のとき騎士学園の教師に「あなたは召喚士になります」と予言された。
召喚士とは、召喚魔法を使う魔法使いだ。その魔法はとても希少で、同時期に三人までしか召喚能力を授からない。また、決まって召喚士になるのは女だった。召喚士の召喚する戦士は特殊なスキルを覚えていることがあり、その力は魔王をも凌駕する。だからこそ、魔王期の召喚士は『聖女』と呼ばれる。
事実、テレコは十九歳になり天啓を受けた。
テレコは自分が魔王を倒し勇者となり得る戦士を召喚できると理解した。
しかし、そうではない。
——君が勇者となって世界を救うんだよ
勇者になるのは自分だ。
自分が召喚するのはあくまで勇者パーティの主力メンバー足り得る存在だ。
そして、初めて召喚したのは指先から白い粉を発するさえない男だった。
ステータスも低く、レベルアップしても魔王と戦えるようになるとは思えない。さらにいえば表情もどこかニヤついており、戦士としての修練に耐えうるようにも見えなかった。
テレコは落胆した。
彼が生きている間は、テレコの召喚できる戦士は彼一人。もし彼が機能しないとなればテレコの受けた天啓が無用の長物になってしまう。
彼が自身のスキルの有用性を示してくれればそれが一番だ。だからこそテレコは彼と一緒にダンジョンへ潜り、ボスの近くで彼を一人放置した。
もし彼がボスを倒し、あるいは逃れダンジョンから出てきたとすれば、テレコの見込みは外れ有用な冒険者ということだ。
だがそんなことは、万が一。億が一。
彼は命はダンジョンで命を落とし、そしてテレコは再び召喚の能力が復活するだろう。
しかしそれは。
自分が、無辜の転移者を殺すことではないだろうか。そんなものが自分が目指す勇者の姿なのだろうか。だんだんと動悸が強く、速くなっていく。それでも。
——手段を選んではいけないよ。君が世界を救うんだよ
不思議な声が使命を呟けば、テレコはすぐに落ち着くのだった。




