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第五話 お父様との対話

「お父様」

 わたくしは語りかけた。お父様がわたくしの瞳をまっすぐ見つめる。菫色の瞳に青緑色の瞳が映るのってこんなに美しいのね。少し今世の自分の美貌に参ってしまった。前世のシエルは毎日顔を歪め続けていたせいでかなり醜い顔へ変貌していた。ああはなりたくはないわ。わたくしと「わたし」は一つになったのだもの。もうそちらの方向へ曲がっていくことはないわ。

「わたくしに、シエル・アスターとして生を授かる前の記憶があると言ったら、信じてくださいますか」

 お父様は首を傾げた。

「胎内記憶のことか?」

「いいえ。わたくしの魂が別の体に宿っていた時のことですわ。わたくしはそのことを「前世」と呼んでいます」

「前、世……?」

 

 お父様はガタッと立ち上がった。

「母上なのですか!?」

 いきなり立ち上がられて、わたくしは戸惑ってしまった。わたくしの祖母、ミルベラ・アスターはわたくしの生まれる丁度二年と一日前に亡くなったそう。わたくしの誕生日の前日、屋敷は静寂な雰囲気に包まれる。

 それにしても、わたくしはお祖母様ではないわ。

「いいえ、お父様。残念ながら」

 お父様は肩を落として、言った。


「私の母は、「転生者」だった。今度また話そう。エルは誰だったのだ?この世界の人間か?」

 お父様、理解があるのですわね。よかった。

「ええ。この国の貴族令嬢ですわ」

「この国の貴族令嬢!?」

 お父様はまたしてもガタッと立ち上がった。

「ええ。しかもお父様の部下であるはずです」

「誰だ!?シドニー伯爵か?ベルノール侯爵か?」

 どちらも有力な家ですわね。

「いいえ。わたくしの前世の名は、アルノシア」

「聞いたことが無い。どの家門の娘だ?」

 お父様は座り直す。わたくしは息を吸う。

 

「ベルナルド子爵家の三女、アルノシア・ノクターン。それが、わたくしでした」


「ベルナルドの三女?どんな人生を送ったのか、是非とも聞かせて欲しい」

「わたくしはー」


「ーこの前カシアン様が公園に捨てられていくところを見て、前世を思い出しました」

 「わたし」の人生、そして記憶を思い出したところまでを話した。


「そうか。理解した」

 わたくしの想い人が宿敵の息子だったことと、自分がわたくしを駄目な令嬢に育てたことに苦笑いしつつも、お父様はわたくしの話を聞いてくださった。

「今のアルノシアは「誰」なのでしょうか」

 お父様は顎に手を当てて考えた。

「アルノシア・ノクターンについて調べさせる」

 よかったわ。もし不憫な生活を送っているのなら、助けたい。


「その前に、エルをスタンホープの息子のところへ連れて行こう」

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