第三話 カシアン様救出
「大丈夫ですか?」
侯爵令嬢が完全に去った後、広場の向こう側に駆け寄り、ベンチにうずくまるカシアン様に声をかける。リシーも遅れて着いてきた。
まだ混乱していて、「わたし」と「わたくし」が混ざり合うことは出来ていないけれど、まずは彼を救うことが大切。何故カシアン様は今頃アルノシアと婚約し、別邸で暮らしているはずなのに今ここにいるのか分からないし、わたくしが「わたし」を殺したシエル・アスターであることも理解しきれていない。とりあえず、彼を今救わないと、もう出会え無いかもしれない。彼は、亡くなってしまうかもしれない。そんなのは、嫌だわ。わたしはカシアン様を救うために生まれ変わったのだと、本能的に感じたから。今度こそ、彼を救ってみせる。今のわたくしは最強。もう弱かったアルノシアじゃないわ。
カシアン様はわたくしを睨むようにこちらを向いた。
「余計なお世話だ、立ち去れ」
カシアン様の、瞳だ……!カシアン様の、お声だ……!久しぶりに見る彼に、思わず感動してしまう。でも、彼の瞳からは輝きが無くなり、声は掠れている。そして、彼の放った冷たいセリフからは不信感が溢れ出ている。
「でも、体調が悪いのでしょう?」
「信用できない、立ち去れ」
やはり人間不信に陥っているようね。
「わたくしの家名を聞いても、貴方はわたくしが信用できないとおっしゃるでしょうか?」
「お前は誰だ、立ち去れ」
どうしてもわたくしに立ち去ってほしいようです。いきなり近づいたのは、やはり不審だったかしら。
「わたくしは、シエル・アスター。カーリズル公爵の長女です」
「カーリズル……?では、貴方は」
「ええ。セルカーク家の宿敵、アスター家の娘ですわ」
「なんのために僕に……うっ」
バタリ。突然発作が起きたようでカシアン様が崩れ落ちた。
「カシアン様!」
「リーナ様、どういたしますか!?」
もう聞いていた通行人に身分はバレているけれども、まだ彼女はリーナと呼んでくれた。
「とりあえずお屋敷に運びましょう!」
「どうやって?」
確か影がいたはず。
「ルカ、見ているのでしょう?出てきて!」
護衛のルカが出てくる。
「シエル殿下、わたくしが御令息をお運びいたします」
そうか、わたくしは皇子達の従兄弟だから、「殿下」なのね。
「ありがとう、任せたわ」
ルカはカシアンを抱えた。俗に言うお姫様抱っこ。
「リシー、ルカ、ちょっとそこの物陰に来て」
「お嬢様……?」「シエル殿下!」
わたしは二人を無理やり物陰へ引き連れ、転移魔法を発動した。
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